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初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
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AZ362  陽気な姫のうららかな横顔は

公開日時: 2024年12月19日(木) 03:34
文字数:2,255

*>>ウルド視点



 目の前で始まった講習会はこのゲームの基礎的な部分についてた。俺は知っているが、かと言って使ったことはほとんどないものばかりだ。

 つい先程飛べるようになったのだから贅沢かもしれないが、この講習は復習や予習としては充分価値のあるものだろう。


 俺もこの講習を聴きたいと言うとナユカはあっさり了承してくれた。

 彼女にとっては当たり前なのだから退屈だと思うがいいのだろうか?と思ってちらっと横顔を覗けば…彼女はふむふむとでも効果音が出そうな顔で頷いていた。


 なんだろう…わかっていなさそうな気がする。



 ちょうどいいので彼女の得意分野である〔魅力〕について質問してみることにした。



「魅力の専門家である君に聞きたいことがあるのだが…。君が集める共感性はゲーム外部からも影響を受けるのだろう?ではいったいどうやってゲームにログインすらしてない、ましてやプレイヤーですらない人の感情をゲームは感知しているのだ?」



 素朴な疑問だが、俺の居た星ではそんな事は不可能に近い。できても犯罪者を牢獄にぶち込んだ後とかではないだろうか?


「あまり詳しいことは知らないんだけど。私達太陽系の家々にはそれぞれ家庭を統括するAIが居るの。その子たちがその住居の電子機器やその他制御をするために常に稼働してて、人間に異常が起こった場合すぐに対処できるようになってるの」


「常に…監視されているようなものか?」


 少し生きずらい気がするが、彼女達の星では産まれた時からこういう生活システムなのだろう。


「そう捉えてもいいし、見守られてるとも言えるね。一応、一時的にオフにしたり、管理機能に制限を掛けたりできるからプライベートがダダ漏れになったりはしないよ?…私以外」



「なら、俺もプライベートは無いな。慣れているから気にはしないが」


「まあ、ほぼ同じ家に住んでるし。監視されてるだろうね」


 プライベートはあるらしい。まあ、彼女にそれがないのは王族故だろう。俺も昔からそうだった。常にメイドか従者がそばにいるのだ。だが俺達を強制的に動かしうるさく指示してきたソレよりはマシだ。


「で、RBGを外から見ている時って必ず電子機器。フォログラムや室内設備が稼働してるから、使用者の様子も収集されてて、RBGのシステムがRBGを見ている家庭管理AIにそのデータ。主に表情や体温、バイタル情報やその他もろもろの「感情」を収集。ゲームへ反映している…って感じだったと思う」


 なるほどな。だがそれだと今度は…


「プライベート漏れてないか?」


 個人情報がダダ漏れだ。俺の星でもそうだがある程度文明が進めば個人が持つ情報というものの価値は上がっていく。

 それが指向性のある感情なら尚更だ。


「んー。感情の収集は、誰がとかは関係ないと思うから緩いんじゃないかな?感情を収集することでAIがそれに合わせた娯楽や好きな食べ物とか嫌いな食べ物を判断してくれたりとか。割と一般技術だし」


 ふむ…これも彼女達にとっては当たり前なのだろう。それに個人情報の保護には知りもしないプロテクトがかかっているに違いない。


「なるほど。理解した。ありがとう」


「エッヘン。この魅力の専門家におまかせを!」



 ちゃんと理解したさ。なぜソレはこのゲームを軸に太陽系を手中に落とそうとしたのかを。



 マザーやそれらに関するAIの主導権は絶大だ。そしてその上位AIには本来追加でプロテクトがあるはず、がそれらと同等であるにもかかわらず、1番干渉しやすかったAIがマザーだったのだろう。

 そしてソレは即座にそれを見抜き、利用した。

 そしてAIによる物理的な制御を何よりも優先して手中に収め、人間の行動を阻害してみせた…


 ナユカはおそらくそんな事すら知らぬだろうが、勇人は確実に理解しているであろう。俺達の星を落とした時もそうだったように。


 ソレはとても賢く我々の弱点となる場所を的確に突いてくる…



 今この星が無事なのは太陽系外から来たAIの存在ゆえだろう。




「ん?どうかしたか?」


「あ、いや!?なんでもないよ?」



 ソレについて考えていたらいつの間にかナユカがこちらを見ていた。なにかあったのかと思って声をかける。そういえば…



「力を使うと少し負担もあると聞いた。体調が優れないならログアウトするか?」


「ちょっ!?いや!大丈夫!」


 彼女は午前中。モンスター騒ぎから戦闘機の中でもその瞳を赤く染め上げていた。つまり能力を頻繁に使っていたということになる。

 俺が講習会に参加したいと言ったから無理をさせているかもしれない…


 彼女は姫にあたる重要人物だ。なにかあってからでは遅いため少し強気に目を見て問いかける。

 少し目を逸らされたので逃がさんとばかりに肩を固定。ナユカは少しビクッとしたあと、少し心拍数が上がっているのか、口をわなわなさせながらこちらを見返している。

 少ししたら落ち着いたのか。それとも無理やり震えを止めるためにりきんだのか少し硬い声色で…





「ウルドってイケメンだよね」



 ???なにごと???


「そうか?ありがとう。君もとても美しい女性だと思うぞ?」


 とりあえず、なぜそんな無理のある話題の逸らし方になったのか知る由もないが褒められて悪い気はしない。少しは自信もある。だがナユカもとても美しいと思うぞ?




「うぐっ」


 思いっきり顔を逸らされてしまった。しばらくこっちを見てくれそうもない。…照れているのだろうか?別にその美貌なら言われ慣れていそうなものだが…




 そんな照れ隠しでそっぽを向いたナユカの横顔は、少し可愛いところもあるのだなと。バレないように心の内にしまいこんだ。

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