「おまたせ」
「いや、待ってないぞ」
玄関に私が向かうと、もう既にパパとママが私を待っていた。準備に時間がかかっちゃったみたい。
「車が来てないからまだ大丈夫よー」
確かに車は来ていない。ナビィが遅刻なんて珍しいね?
とか言ってたらその車がやってきた。ちなみに、車と言ってももう車輪すらない浮遊型のやつなんだけどね。
なんだっけ?今車輪付きの車はコレクション用としてすごくレアなんだっけ?走れないのに持ってても邪魔だと思うんだけど…。まあ、趣味は人それぞれだからね。たまに展覧会とかやってるし、好きな人は多いみたい。
『すいません。遅くなりました。しばらく使ってなかったので準備に手間取りました』
「構わないよ」
「いいのよー」
こうして私たちはその車に乗り込んだ。
『目的地は朝霧宅邸経由、衛星軌道ポータルでよろしいでしょうか?』
「それで頼む」
パパがナビィの確認に頷くと、車は独りでに浮遊し出しまずは低空かつ低速で進んでいく。浮いてるのでもちろん振動はなく、ほんの少しのGも感じない。
ちなみにやっぱり、車の運転席何てものは無く。座席も快適でふかふか?である。運転はナビィがやってくれているので、そんじょそこらの一般AIなんかより信頼できるし、文句無しである。
トビィはお家の留守番をしてくれています。
『低速階層から中速階層へ上昇。加速します』
今度はナビィがそう言った直後から、どんどん加速しながら上昇していく。
現代の交通網は高度ごとに階層があり、それにより一般的な速度が決まっている。
低速階層。中速階層。高速階層と別れており。
低速階層では、人が往来するために車は低速で移動する。30kmぐらいかな?
中速階層では、人は生身では基本侵入してはならず、車のみの往来となる。80kmぐらいまでなら出せる。
高速階層ではさらにそのまま150kmまでなら出せるらしい。全ての車がAI運転だから事故なんて起きないんだけど、たまに故障だったり、人が高速階層に何かの拍子に来てしまったりとそう言った事故はたまにある。限りなく少ないけどね。
ちなみに落下事故は無い。もしも故障で浮遊、飛行が無理になったら、即座に周りのAIの車達が連携してその車を救出するためである。
ちなみに低速階層で落下なんかしてもたかがしれてるのでその場合は人と接触しそうな場合のみ助けに入るらしい。見たことないけど。
*
「お邪魔しま〜す!」
「おはよう」
「那由花おはよぉ〜」
ゆきの家に着いてたから、玄関先で待っていたゆきを乗せ、私たちは目的地である、衛星軌道ポータルへ向かう。
『低速階層から高速階層へ。順番に上昇し、加速していきます』
朝霧宅邸を発進し、今度はどんどん高度と速度をあげていくナビィ。
「今日は私がいて良かったの〜?」
「うん!ゆきがいた方が楽しそうだし」
しばらくして、ゆきが私に聞いてきたのだが、きっとゆきのことだから、「久しぶりの親子水入らずを邪魔したら悪い」とでも思っているのだろう。
パパもママもゆきのことを小さい時から知ってるから、ゆきがいようとも私たち家族に支障はない。
それにゆきは、私のママが「太陽系外生命体」。つまり宇宙人だということを知っている、数少ない人物の内の1人だ。今更バレて困ることは無いだろう。
そういえば、私がリアルで外に出るのはいつぶりだろう?いや、運動は大事だから敷地内はよく散歩に出るんだけど。
RBGとリアルの差は、上空から見ていても大差ない。違いと言えば、そこに人の営みがあるかないかということと、闘技場が無いくらいか。現在、私たちは南下しているので、はるか後方にある筈の闘技場の場所を見てみるが、そこには大きな商業地帯がある程度だった。
*
目的地に着いた私たちは、車を降りて衛星軌道ポータルまで飛んで行く。目の前には衛星軌道ポータルの建物。大きなビルの中に、このビルの直上に浮かんでいる人口衛星宇宙港に飛べるポータルが存在する。
入口を潜り受付のAIにパパが名前を伝えると、奥から1人の男性がやってきた。
「ようこそ。米嶋博士とその家族、ご友人方。本日はこの「因幡 和彦」がご案内致します」
そうして私たちの目の前に立つ、少しふくよかでパパがたまに来ている、白衣を纏っているメガネ(キラッ)の中年男性が挨拶をした。
「わざわざ本部長である因幡さんが出迎えに来て頂けるとは光栄だ」
「こちらこそ、再び会えたことを光栄に思います。皆様とは8年前でしたか?その時のパーティー以来ですね」
「8年前?」
8年前って何かあったっけ?
「那由花様の初めてのパーティーではなかったですかね?確か当時の米嶋博士が仰っていましたよ」
あ!私が初めてゆきとあった日のパーティーか!!
あの時はほんとに気が動転していたから覚えてなくても仕方がないよね!!全く覚えてない。
「立ち話もなんですし、落ち着いた場所にご案内致しますよ」
「あぁ、よろしく頼む」
こうして私たちはビルの上階に案内されたのだった。
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