一筋の何かが空へと打ち上げ花火のように上昇していく。
「きよったか…。あの焼き鳥めが…」
それを浮島の西、霧から覗く白猫が煩わしそうに、忌々しそうに呟いた。
白猫は霧を吸い取るように吸収しその全てをきれいさっぱり消し去る。
「予定に変更はあらへん。あの焼き鳥と街をやる。このトリカゴを破壊したれ!」
「ニャーー!」
そう雄叫び?をあげた猫の軍勢。これまでとは数も質も上回る戦力とそのボスたる白猫はそのまま浮島の方へ飛んでいく。
白猫は含み笑いをしながら、空に登るその一筋の光を睨みつけた。
*
「何とか抜けたコッコ。それにしてもあの猫。少し調子に乗りすぎコッコ…」
「ングッ!ぷはっ!!」
「めが…まわ…」
「ほらいい加減出るコッコ」
「「うがッ!?」」
パピューン!とでも効果音がなりそうな勢いでニワトリの羽毛の中から飛び出したヒカリとアキアカネ。
浮島のはるか上空。空高くから放り出され急いで〔飛行〕をつかい体制を整える。
「なっ!空!?一体何が起こったのです?」
洞窟が崩落し生き埋めになるかと思いきや…、いきなりニワトリに押し込まれ何か凄まじい爆破音の後気づけば空にいたのだ。驚くのも無理は無い。
「少し天井ぶち抜いただけコッコ」
「て、天井って…」
ヒカリもアキアカネもかなり洞窟を下った先にあの結晶の空洞にであったはずだが、ニワトリは何事も無かったかのように羽ばたいている。
下を見れば確かに天変地異でも起きたのかと言うほどジャングルが跡形もなく…、川の形も歪な凸凹によって変形していた。
ちなみにヒカリは船酔いならぬ鳥酔いみたいで無表情なのに少し顔色が悪い。沈黙したままだ。
「それで私達をさらってどうするつもりですか?」
「別にさらってないコケ、助けたのだから感謝するコッコ」
「ん。あり…がと。出来れば、もう少し普通に、して欲しかった」
ヒカリは唐突な三半規管へのダメージのせいか、ニワトリに毒づきながら眼下の光景に目を移す。
荒れたジャングルはひとまず見なかったことにして、街と戦闘中のプレイヤーの弾幕が遠目から確認できる。
さらにその向こうには…。
「ん、大軍勢」
「なんかあそこだけやけに集まってますよね…」
「猫が本格的に進行し始めたコッコ…。はあ、めんどうコッコ」
明らかに集結し、こちらに進軍して来ているように見えるなにか。たぶん猫なのだろうそれを3人は見つつため息をつく。
「しょうがないコッコ。ひとまずプレイヤーの肩を持つコッコ。名前借りるコッコ〜」
「え?」
『聞くコケ。我ら鳥、アキアカネ、ヒカリと共に猫をうつ。プレイヤーを援護せよ。全員であのドブ猫を地べたに叩き帰してやるコッコッ!!』
脳に直接響くようなニワトリの声。浮島にいる全プレイヤーに響いたその声はその少しあとにあちこちから鳴く鳥たちの鳴き声により理解させられる。
街に集まるように展開した鳥たちが種類や属性によって編隊しながら上空を回る。
「こ、これは!?」
「鳥…モンスター」
「眷属コッコ。プレイヤーには攻撃しないように命令したコケ。狙うは猫。あヤツらは侵略者コッコ。大人しく地面に帰ってもらうコッコ」
ニワトリはそう言いながら高度を一気に下げて行く。それを追う形でアキアカネとヒカリも降下を開始した。
*
街では突如現れた猫の軍勢。地震、そして街に集まるように現れた鳥、響く声に軽いパニック状態だった。それもそのはず、プレイヤーは誰も状況がわかっていないのだ。
あのセリエルでさえも、何が敵で、何が味方なのか混乱のさなかにある。
「ビュアさんは僕と一緒に。他のメンバーは掲示板にビュアさんの生配信を見るように言いつけてください。これからはリアルタイムで状況が変化するでしょう。指示漏れの無いようにお願いします!」
「生配信は継続で行きます。確か…、アキアカネ?とヒカリというプレイヤーでしたね?」
「あの声、予想通りならはるか上空のあの鳥の声だと思われます。まだ確信はありませんが、〔遠見〕スキルで確認した時にプレイヤーの影が2つ見えました。おそらくそれがアキアカネとヒカリでしょう、2人に話を聞くのが一番早そうです」
「了解です」
2人も上昇し、あの遠目に見える鳥の方へ向かう。
さらに…
猫の軍勢が浮島に侵入し、最前線は戦闘が開始されようとしていた。
こうして、スカイスクランブル。最後の戦いが幕を開けた。
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エクストラクエスト:トリプルスクランブルウォー
クリア条件:?
特殊クリア条件:?
クリア状況:壊滅的
参加者:プレイヤー・鳥・猫
報酬:?
特殊報酬:?
MVP報酬:?
浮島巡る戦いが幕を開ける。空を取るのはたして誰なのか?ここに始まりを告げる最後の戦いが幕を開ける!
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