激戦続く猫対鳥の戦闘は開始から数十分がたとうとしていた。猫も鳥もプレイヤー達でさえも疲労が見て取れる。
その中でも実質9対1を強要されている白猫の疲労はいかに猫と言おうども蓄積され、その回避能力の低下すら引き起こしあれからHPは残り二割というラインまで低下していた。
「全員…、あともう少しです。踏ん張りましょう」
リンがそんな状況を見て自身の鼓舞で全員にバフをかけていく。全員無事ではあるものの。猫の見えない攻撃や奇襲にHPを削られたアインズやアキアカネにより回復薬もなければ、継続的にバフをかけているリン、魔法主体のサナタリアの消費により魔力回復薬ももう残りは無い。
どちらももう一撃もダメージを受けられない状況。受ければ死あるのみだ。
「あの子猫はもう死にかけコケ。ラストスパートコケ!」
「うるさいなぁ?フライドチキン、あんたももう何回も死んどるやろ?」
お互いボロボロでも相手を罵倒するのは忘れない。
白猫は一人誰にも悟られるように考えていた。
(状況は最悪。眷属もほとんどやられたか逃げおおせた。チキンはプレイヤーにつき、この浮島どころか街も落とせそうにない。これはもう潮時やんなぁ…。ただ、何も爪痕残さずに負けるんも癪やし…。このプレイヤーがおらへんかったらわての計画は狂わんかった…。ほんになぜこのタイミングなんか…。十中八九こうなることを読んどった…。いや、そうしくんだやつがおるなぁ?)
「ほんに、ドブネズミが…」
漏れ出た愚痴は誰にも届かず。猫はそれならばと最後に負けどもいちばんされたら困ることをしてやろうと姿を消す。
「ん!?逃げた…」
「逃げた?猫が?」
「…いや、街に!進んでる!!」
「はー!?反則では!!」
ヒカリだけが見える状態になりヒカリだけがその姿を捉えていたが、そんな猫は今まで戦っていたメンツをガン無視しジャングルを疾走していく。その向かう先はプレイヤー達が作り上げてきた街の方角であった。
「シズカ。MPは残っていますか?」
「い、いや、もう空っぽです…【スタンスキープ】できないです…」
「く…、ならばシリウス単体で…」
「それも無理だね!僕も街までMPはもう残って無いよ。飛んでいくだけならまだしも猫の方が圧倒的にはやい。速度出すにはMPが足りないね。それに僕単騎だとカメラ越しに猫の姿が見れるらしいけど攻撃当てたりはできないよ」
手詰まり。この状況でいちばんされたくないことをされた。今この状況で速度、攻撃、そして何よりMPに余裕のある人間が居ない。
「ひ、広場で報告を!」
「もうした。でも、街、MP枯渇。〔カメラ〕持ちがそもそも少ない、監視網構築、できない。抜けられて、終わり」
いくら考えても打開策が浮かばない。こうしている間にも猫は高速で街に接近しているのに。
「あのゴミの考えそうなことコッコ。やっぱり子猫なんだコッコ。ヒカリ街にいるプレイヤーに空を見上げてもらうことはできるコッコ?」
「?たぶん、できる」
「なら充分コッコ」
唐突に空を見れるか?などと訳の分からないオーダーに首を傾げるヒカリ。そんなヒカリを置き去りに鳥、現在フクロウのような姿のニワトリは体を発光させその姿を別の姿に変える。
一気にスリムに、そして少し小さくなった鳥。それでもパッと見高さ3mくらいあるのでやはりでかいのだが、そんな鳥の変身に一同首を傾げる。
「ツバメ?」
「正確にはハリオアマツバメという鳥の姿コッコ。さあ、ヒカリ、アキアカネ。乗るコッコ。最速の空の旅にご招待コッコ!」
そういえばこいつ鳥だった。と思い出したヒカリと、アキアカネ。初手のイメージがニワトリなふたり。そもそもニワトリに空を飛ぶイメージがなかった2人だが、何故か空を飛んでいたような気がする。
「お2人とも、私たちがついて行くことは不可能でしょう。見たところふたりが乗るのが限界。私たちがみんなで作り上げてきた街。任せてもよろしいでしょうか?」
乗り込み、ちょともふもふなはねに捕まった2人にリンが願う。そんなに街づくりには貢献した覚えはなかったが、最後くらいいいかな?そんな2人は
「「勿論」!!」
「いくコケ!」
そう言葉を放ち、空に飛び上がって行った。
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