Reality barrage Gamers

初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
D,S(diamond) D
D,S(diamond)

"316"  ホかでもない君と ルいをみないその戦いは スみ渡る金剛石のように

公開日時: 2023年7月8日(土) 01:27
文字数:2,759




 1人単身で鳥に挑むヒカリ。両腕が使えないが、持ち前の分析力で鳥行動と光線の進行方向を読み切る。

 それは万華鏡のように移り変わる攻撃さえも。


 その間、ヒカリ単身で突っ込んでいる間に、アキアカネは高度を上げ天井付近まで登ってきていた。



「ソナタ1人コッコ?さすがに無謀コッコ」


「無謀かどうか。終わってから、決まること。私は私。信じてアキを待つ!」


「なるほど。それはソナタの戦いコッコ。アキとやらが何をしているのか。…気にはなるがソナタのその覚悟。瀕死にして攻撃手段を失ってなおも向かってくるソナタに敬意を表し。ソナタの相手をしようコッコ」



 繰り返し光線が放たれ、ヒカリは重い両腕を振り回しながらその光線が跋扈する地帯を抜けていく。反射を繰り返している光線はそれぞれ唐突に消えたり、現れたり、横凪に払われたり、速度も違う。

 その中をまるで何事も無いように抜けていくヒカリ。どこからどう見ても不可能なその密度の光線の中を抜けていく様は、どこかナユカに似ているが根本的な部分が違う。


 ナユカは花の約束の力による視界に写ったものを全てを見て躱す。弾幕ならその先にある軌道を見て当たらない場所へと回避する。

 対してヒカリは1回目の光線。2回目の光線の反射。3回目の周りにある結晶の動き。その全てを覚えて予測している。


 子供の頃から…、ヒカリは他の人とはかけ離れた記憶能力を持っていたとアキアカネだけは理解している。だからヒカリの持つ苦難も…。


 ヒカリだがらこそできる先読み。それがヒカリの強みだ。1度見たものはその類まれなる記憶力と分析力の前に解体され…、あまつさえ利用される。



「【五前年の拳(B.C.old punishment)】」



  ヒカリの拳がまたもや光だすが、その周りを覆う結晶のせいで拳は使えない。代わりにヒカリはその重い拳を上げ、シャドウボクシングでもするかのように、左拳を突き出す。すると、ヒカリの左後方から無数の弾幕が飛び出し、まるで拳が何重にも増えて迫るように鳥を襲う。咄嗟に躱すことが出来ない鳥はHPを削られた。

 それでもHPはそれほど減ることもない。



「うむ。いい攻撃コッコ[〔拳技〕に〔連動〕。〔殴る〕に〔直進〕。〔減速〕と〔停止〕]なんかも付いとるコッコ」


 ダメージを受けながらも、それでも余裕を崩さない鳥にヒカリはさらに連続で拳を振り上げる。鳥も流石に連続で食らうのは不味いと思ったのか。一旦空中に飛び上がり回避移動を開始する。



 一方の頃、ヒカリが時間を稼ぐ中、その広場の天井付近にいるアキアカネは至る所に〔魔法陣〕を設置していく。魔法陣自体の模様はシンプルなものばかりで、ほとんど同じ色。全て同じ魔法陣だと見てとれる。


 そして、あらかた天井全体に魔法陣を敷き詰め終わると、アキアカネ自身はそのまま槍を下に向け詠唱を開始した。


「地を照らす天の神。その光を願う。夜を照らす闇の神。その魔を願う。光なら闇を。闇なら光を持って、ここを照らして見せよ!」




 アキアカネの詠唱。ヒカリは途端に攻撃をやめて、鳥からいきなり距離をとる。アキアカネの魔力回復薬も全て使用した全力の攻撃。見上げればおびただしいほどたくさん設置された〔魔法陣〕が怪しく光だす。

 そのままヒカリは結晶が入り乱れた広場の端に身を隠し攻撃の余波を喰らわないために備える。



「ほう?」




 対して鳥は上空を見つめ、獰猛な笑みを浮かべる。あの〔魔法陣〕の量を前にして笑っていられるほどまだ余裕があるのか…。しかし、アキアカネのこれは予想以上にやばいことをヒカリだけは知っている。



「持つは槍1本のみ。向かうは強大な敵。その身を捧げ、その身を穿く」



「こい。小娘。いや、覚えたコッコ。アキアカネ。その攻撃。全力で受けてやる!」




 両者。目を見開き…。


「【天堕の槍(Haroeris)】」


「【金剛石(diamond)】」



 キラッ!と光る天井。次の瞬間、アキアカネの背後で待機していた魔法陣がとてつもない爆発を起こす。そこに仕込まれた仕掛けにより爆発は全て〔衝撃〕となり渦を巻き、その爆風と一緒に猛スピードで下へアキアカネを吹き飛ばす。

 対する鳥は羽が白から輝く透明な結晶のようになり、固くなった翼を自身の前でクロスに重ねて防御姿勢を取る。


 結果。2人はぶつかり、アキアカネはその槍を鳥に突き立て、鳥はその槍を翼で受け止める。



 時間にして一瞬。だがその長く感じる刹那。


 鳥の翼は弾かれ、そのままアキアカネは鳥の胸を槍で突き通す…。このまま鳥を射止めるかと思われたアキアカネの槍。だが、羽に受け止められた衝撃で威力はほとんど吸収され、そのままではほとんどの威力は逃がされてしまい、トドメをさせないアキアカネはMPも既につきているためその槍をほんの少しだけ鳥に突き刺す程度にしかならなかった。


 好機と鳥はアキアカネにトドメを刺すために吹き飛ばされた両翼に代わり、その鋭い鉤爪を振るう。








 勝利を確信した鳥。だが、その鳥の視界の端に動く何かを捉え、戦慄する。


「【打点撃(ポイントIパンチ)】!」


「コケッ!?」


 いつの間にか、近づいていたヒカリがその槍目掛けてパンチを放つ。結晶がまとわりついているためかなりの重量な腕を大振りに振り回し、その槍の柄の部分にぶち当てた。


バキッ!!



 腕についた結晶の重みすらも利用して振り抜かれた衝撃は鳥の体にヒビを入れ、なお深くくい込んでいく。


 鳥はかなりのHPを持っていかれ、その姿を元の鶏の姿に戻していった。そんなニワトリに追撃しようと近づくヒカリ。



パキッ




「はっ、やばい!ヒカリ!逃げるよ!崩落する!!」


 だが、アキアカネがヒカリを呼び止め、自身の爆発でダメージを負った結晶洞窟の天井を指し示す。

 少しづつ動く天井、パラパラと振るチリと嫌に耳に届くパキッという音…。

 咄嗟に洞窟の来た道を引き返そうとするも…


「…アキ。出口なくなってる」


「うそっ!!!?」



「…ほんと」



 確かに来た道はいつの間にか結晶に覆われ、逃げ道は無くなっていた。まさに絶対絶命。ここが崩れれば分かりきっていることだがHPは確実に全ロスだろう。

 焦る2人。そんな2人にニワトリは起き上がりながら言い放つ。



「いいコッコ。2人も試練合格コケ。つかまるコッコ!」


「え?あちょッ!?ぶっ!?」


「ん!?」


 返答も聞かず、いつの間にか回復したニワトリがヒカリとアキアカネをその羽毛の中に突撃しながら押し込める。



コケェェェェェエ!!!!




 響き渡る咆哮。


 ニワトリの周りの風がいきなり渦を巻き始め、ニワトリの羽ばたきとともに一気に真上に吹上る。

 上昇気流とともに飛び立ったニワトリは真上にそのまま突っ込んでいく。


「ブモ!?フガッ!!!???」



 羽毛に突っ込み何が起きているのか分からない2人をよそに。


「どけコッコッ」


 さらに天井の岩石を下から特大の爆撃で吹き飛ばして行った。







読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート