日付変わってイベント開始から4日目の夜。3日目の鳥の襲撃以来、各々プレイヤーが交代で街の警備をしたり、街並みを整え、見るも無惨だった光景はたった一日であたかも何事も無かったかのように復興した。
それどころか昨日の襲撃前よりもはるかに発展している。
これはハルトとアリアの水源提供や、資源が鼠の策略により無事だったことに加え、浮島群の中で遠くの方へ遠征していたプレイヤー達からの貴重な物資。さらにどこからか明らかに人工物であろうなにかのパーツなど。様々な幸運が重なった。
さらに4日目の朝。
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チェインクエスト:今一度羽ばたきを手に入れて
クリア条件:「スズネ」の撃破
参加者:
報酬:結界突破
集団報酬:結界解除
集団クリア条件:合計50回の「スズネ」の撃破
クリア状況
・個人:クリア()
・集団クリア 50/50
結界解除:大樹「宿木《ヤドリギ》」周辺に貼《は》られた飛行阻害結界が解除されました。全プレイヤーの飛行系スキルの使用が可能となります。
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大樹のスズメが50回倒されたことで飛行系スキルが使え、中央の浮島の反対側から直線でプレイヤーの行き来が可能になった。これにより、途中、大樹付近では鳥型モンスターに攻撃はされたりするものの圧倒的に資源運搬が楽になる。
アインズ含め、プレイヤー全員が少しづつ街作りの完成を早めていた。
🐱
一方その頃。
「ふふ。ねずっころの仕業とは言え、まさか結界個体まで倒し尽くしてくれはるとはねぇ。あの鳥落としやすくなると誰が予想出来たやろか」
薄暗い森の奥深く。日が落ち黄昏時のその最中。その太陽をバックに大きく聳え立つ大樹。その中にいるであろう本来の目的を幻視しながら黒猫がそのしっぽをゆらゆらと揺らす。
声の主はその黒猫。ハルト達と湖で1戦交えた元白猫が姿を変えてそこにいた。
「ただ。その街は後々邪魔になるさかい。そろそろ退場してもらわなあかへんね?鳥を落とすのはわてらのもの。部外者は要らへん」
そのしっぽをピタッと止めて、黒猫は目を細め遠目に見る、徐々に明かりの灯りはじめたその街を眺めた。
「この浮島に長いは無用。急がな兎が下で察知するかもあきまへん…。さて、あんさんたち?準備はええか?」
「「「ニャーーーー!!」」」
どこからが聞こえる大量の鳴き声に黒猫は満足したのか。そのまま歩みを進める。向かうは暗闇。
日がついに地平線に落ちたその時。同じようにその黒猫は解けるように闇へと姿を沈める。夜が始まり、世界は日を失った。日無き鳥に、不幸を呼ぶ黒猫が音もなく近づいていく。その道中の街も巻き込んで。
今宵、闇夜静まる。月無き月の空の中。今、再び街に災いが振りかかろうとしていた。
❆
「ん〜?やっぱりそんなクリスタルの情報なんて一向に聞かないし〜。それどころか大きな鶏が居るって情報も出回ってない。ついでにあの結晶洞窟みたいなのものあそこ以外見ていない〜…。ほんとにそんなものあるの〜?」
浮島群からかなり離れたその島の上に、白色のコートを靡かせて浮かぶユキ。あたりは雲海だらけで遠くに小さく大樹が見える程度。そして真下にはつい先程まで探索していた機械仕掛けの歪な形の島。
それ以外は落ちてきそうなほど近くにある満天の星空が続く。
あの大きな鶏のクエストに「封核クリスタル」を探して持ってくるように頼まれたものの…。一向に見つかる気配がしないそれはユキを持ってしても流石に速攻クリアとはいかない。
鶏いわく、機械仕掛けの島にある。そう言われていけども全く何も無い。
変なモニターが沢山あったり、自動で電気がついたり。ただそれだけで何も見つからないのだ。
「条件付き〜?時間とか〜?」
数時間探索しても何も成果がなかったからか、ユキは吐きこぼすように独り言を呟いていた。
上から見下ろすその島は、やはり歪な形をしている。地面はほとんど無く。その大半が機械に占領され、所狭しと何に使うかもよく分からないものが鎮座するだけだ。
「とりあえずもう1回調べてみようかな〜…」
こうしてユキはゲームからログアウトした。ちょうどその時、猫のモンスターが街に侵攻を開始し街は再び戦火に包まれることとなる。
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