ここには、博物館にある研究所。そこはかつて宇宙に飛び出した勇人が様々な実験、研究を行ってきた場所であり、花恋と結婚してからは、花恋や、娘の那由花の体調や、太陽系人との違いなどを把握するための施設として役割を8割変えてしまっている。
その施設の一室。会議室のようなところ…。に。
「そんなイライラしても何も起きないよー」
「そうなんだがな…」
『今、の姫はすごく安定しています。もう時期目を覚ますでしょう。それよりも姫の今後のことを考えるべきです』
「まずは那由花のことをどうするか。ね?」
この場にいるのは、勇人。花恋。ナビィ。ゆき。因幡。そしてもう1人。那由花が映し出され、花恋と総司令の後ろでツッコミの権化と化していた秘書。美鶴。
「思いっきり世間から遠ざけるか…。それとも今までどうり外出を控えるか…」
そうつぶやき勇人は暗い表情をする。
「どっちにしろ。あまり目立つのは得策とは言えませんね」
そう発言したのは、秘書の美鶴。米嶋家の事情を知りかつ、太陽系代表としての意見を言えるということで花恋と一緒に月からやってきた。
那由花が気を失って2日目。世間はあまり情報を吐かない防衛省を責めるように怒鳴り散らかす者が度々出現し、その際に様々な問題も引き起こしていた。
その後始末におわれる管理AI達と防衛省。だがしかし、こちらが情報発信していないことも事実だ。
与えた情報とは、ほとんど放送でっ言ってたことを少しわかりやすく説明しただけだ。
さすがにそれでは納得しないのも理解はできる。
が、おいそれホイホイと話せることでもない。これは言ってしまえば戦争なのだ。
ありとあらゆるものが手に入る時代ではあるがために誤解している人間が多いが。こんな時代でも、得られないものなど五万とある。それこそ星の数ほど。だ。
そしてその矛先は花恋と那由花へと行きがちだ。
お前たちが来なければ。と。
人間というものは時に優しく。そして残酷に人を陥れる。
相手が何を思おうと自分には関係ないと。
周りの人達がそうしてるからと。
塗り固められた「常識」という言葉を使って善と悪を作り。悪を潰す。
それを皆。理解しているのかいないのか。ここにいる人間は、那由花と花恋がそのような目に会わないように配慮していた。
「せっかくゆきが整えてくれた場所だったんだがな…」
「私は…。いいですよ〜。ナユカがそっちの方が安全に暮らせるなら…」
ユキも元気がない。あれから立ち直りはしたものの、これからナユカと同じようにRBGで遊べるかと言われたら答えはNOだ。
誰もいい案が浮かばない。それもそのはずだ。それ以外の案がそもそも無いに等しいのだから。
『ひとつ。よろしいですか?』
そこで声をあげたのは珍しくナビィ。これには花恋もビックリする。
「い、いいわよー」
『一つだけ方法があります。それは…。見世物にするようですが…。そのままアイドルとして逆に姿を晒すことです』
「…」
「…」
「あえて晒すにはリスクが…」
「いける…」
勇人の反論を遮るように呟いたのはゆきだった。
「いける?」
「私とナユカなら、それ。できる」
「ゲームはもうサービス終了だからアイドルとしての活動はもうできないぞ?」
「買って〜?」
「無理だ。それに防衛省がRBGの処理を…」
「いえ…。防衛省はRBGをどうするか決めあぐねいています」
「あら?良かったわねー?」
「もし管理諸々して頂けるなら…。5億ドルでどうでしょう?こう言ってはなんですが…。扱いに困っているのも事実なので…。人気ゲームでサービス終了の反対運動が起こってるという…。私は少しでも胃痛の原因が減るなら値下げ交渉も応じますよ…」
お腹を擦りながらそう言う美鶴さんはとても辛そうな表情である。
「そ、そうか…。五分で効くお薬をあげよう。それで良くなるはずだ」
「そして5分も経たぬうちに総司令がその胃痛を悪化させると…」
重症である。
「おぅ…」
彼女の胃痛については手の施しようがないことを悟った勇人。とりあえず一旦話を戻す。
「それで、もし買うならRBGのどこまでの権利が貰えるんだい?」
「全部です」
…
「済まないもう一度いいかな?」
「全部です」
「あれ?確か戦闘防衛システムとか言ってなかったっけ?」
「それも含めて全部です」
「これ…」
「全部です」
「それは…、大丈夫なのか?いざという時の戦力を僕たちに渡すことになるのだぞ?」
困惑を隠しきれない勇人。それもそのはず、もしRBGが上手く行っていたら将来の…。
「いえ、もちろん反対意見もありましたが、いちばんはAI側が強くそれを推奨しました」
「AIが?」
「正確にはそのトップが…。と言った所でしょうか」
AIのトップ。それはすなわちAIの意思とも言い換えていい。
「5億ドルか…。よし!買おう!」
「ワオ〜。即決か〜」
「さすがあなたー。那由花のためだものねー?」
「だが条件がある」
勇人は美鶴に条件を突きつける。それは…。
「マザーをこちらに欲しい」
というものだった。
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