「ナユカ〜そろそろ始まるよ〜」
「う、うん!」
さて翌日の今日から始まるのは闘技大会デュオの部。この大会に私は参加するのだ。そもそも1番初めに参加することを決めたデュオの部だが、その後ビュアさんに動画出演のお願いされたり、たまたま闘技場にいたハルトさんを巻き込んでいきなりドンパチしてみたり?でその流れでアリアさんまで噂を聞きつけてきたり、ユキがチーム組もうぜとか突拍子もないこと言い出すし?ミカちゃんは壁吹っ飛ばして現れるし?いざ闘技大会が始まったら私はソロの部出ないから出番ないし?ハルトさんは目立つし?ユキは雪女になるし?ワンライフクリアしただけで変に注目集めるし?
もう、こんだけ目立ったらなれるもので、初めの頃に比べると周りの視線なんて怖くない。まあ?私の場合目立つことに意味があるらしい。ユキがそんなこと言ってた。
だからわかるよ。ビュアさんの動画や生配信にちょくちょく出てるから、最近自分がだいぶ知名度が高くなってきたことぐらい…。
あぁ…そこはね?私もわかっててやってる部分もあるからわかるんだよ?別に可愛いって言われて嫌な気持ちにはならないし、そうやって知名度アップがイコール〔魅力〕ので得られるスペックアップに繋がるからね。
でもだからってこれはないと思うんだよ!!いくら目立つからってそんな騙すような真似しといて直前で渡してくるとかさー!!?しかもみんなだよ?みーんなちょっと笑ってやがるの!!ミカちゃんなんて抑えきれずにお腹抱えて笑い出すしッ!
何が言いたいかって?OKOK。1から説明しようではないか。
*
「ナユカ〜そろそろ温まってきた〜?」
「うん!問題ないよ!バッチリ」
メンバー全員で観戦室に集合していた。試合開始30分前である。それまでに今日の予定や、観戦組の休憩時間の話をしていた時にそれは起こったのだった。
「武器はちゃんと持ったか?」
「うん」
「いいか?使い方はこないだ教えたが…」
ハルトさんに作ってもらった武器を手に取りそれらの最終確認をしていたのである。
私の武器は三つ。
1つは、仕込み投げナイフ。これはこれから渡す服の裏に隠して装備させるようにできたナイフで、投げナイフとあるように、軽くスイングするだけで高速で飛んでいく物理斬攻撃が放てるらしい。これはハルトさんの〔鍛冶〕と〔付加〕のスキルによりできた武器で、[投げられたら〔高速〕で〔直進〕する]ようにできているらしい。これのすごいところは「投げる」と使用者が意識すれば少しのモーションで飛んでいくことと、物理的な軌道ではなく。ほんとに何かに当たるまで〔直進〕するとこにある。つまり飛ばしても地面に落ちずそのまま進んでいく。ということだ。
そしてもう1つ、扇子である。こちらも赤い華やかな柄の入った扇子なのだが、軽くて硬くてオマケに斬れるらしい。その理由は素材として黒龍の鱗と爪を使ったかららしい。見た目としては黒龍の要素はどこにも無いが、扇子の親骨、中骨に鱗を加工したものを。扇面は紙や布ではなくそのまま中骨を伸ばし3枚構造になるようにして表面と裏面に何か別の素材で薄く赤のコーティングをしているようだ。もちろん綺麗に何か模様が描かれていたりする。そして扇子の先の部分には爪と何か言ってたけどよく分からない金属を練りこんだ刃を仕込んでいるとの事。ちゃんとスムーズに開閉できるくせにとても頑丈というthe fantasyな性能を実現させていた。まあ、ゲームだからね。
そして最後、今でも意味が分からないお面です。
頭から斜めに掛けるように装備するらしく、そんな変な付け方のなのに激しく動いたり、バトル中でも取れない優れものだ。サイズは普通のおめんと比べると小さく、邪魔にはならないし…可愛いとは思う。なんか悔しい…。ちなみに描かれているのはよく見る狐のやつが少し可愛く書かれているのである。これ絶対ユキでしょ?私のこういう好み知ってるのはユキぐらいだもん!
「じゃあ、武器についてはこんなもんか」
「はーい」
何となくは理解したから大丈夫なはず…
「じゃ〜次はいよいよ装備ね〜!」
「おおー、どんな装備になったの?」
「まあ、それは着てみてからのお楽しみよ〜」
ん?
「さ〜、インベントリに〔納品〕しといたから装備してみなよ〜」
「うん」
なんかちょっと様子に違和感があったけどこの時の私はそんな些細なことに気づかなかったのである。
そんなこんなで送られて来た装備をインベントリで見つける。
装備品は三つ。それをポチポチポチと装備していく私…。
みんなの前で姿を変えた私は…
「よっと!」
なんということでしょう!扇子と同じような柄の入った浴衣を装備していたのです。
「うんうん〜、さっすが〜ナユカ浴衣も似合うね〜」
「確かによく合ってますね。動画映えしそうです」
「これにさっきのお面だろ?気分は夏祭りだな」
「ただなぁー、やっぱり動きやすさ重視すると…」
「どこ見てるのですわ!」
「ちょっ!抓るな!!」
ん?あ、ちょっと待ってこれ!!
「脚めっちゃみえるくない!!!?」
浴衣の長い丈が邪魔にならないように、横に大きくスリッドを入れているように見えるそれはナユカの脚をかなり露出させていたのである。
「大丈夫〜大丈夫〜ゲームないだと見せようとしても見えないから〜」
「いやそういう問題じゃなーーーーいッ!!!!!」
そう、この衣装は多分傍から見たらちょっと着るのに勇気がいる。なんというかこう…可愛いから少し色気が出ている感じがする。ていうかこれで私「空中戦」するんですけどッ!!!
「え?いや待ってそれで空飛んだらヒラヒラして脚めっちゃ見えるじゃん!?」
「ナユカ〜。見えるんじゃないよ?魅せるんだよ〜」
「私はそんな変態じゃないッ!!ヤーーーダーーーー!!」
「アッハッハッハッハッ」
「さあ〜、そろそろ行くよ〜」
「いやっ!!待って!!待ってってばー!!…」
*
という訳だ。そもそも作ってもらっておいて文句を言えるはずもなく。その作った本人が真隣にいる以上着るんだけど…着るんだけどッ!!
すごく別の意味で緊張してしまっているナユカを見てユキは意地悪そうに笑うのだった。
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