「【悪魔の瞳は時を無視する(カイロス)】」
カルマの手の上に浮かぶ時計型の魔法陣が18:00を指す。と、同時にさらにその上に大きな魔法陣が現れ、これまた時計型のその針が普通の時計とは逆向きに回り出す。
途端に現れ出す無数の弾幕は、ひとりが出せるとは到底思えない物量を超え、さらに増え続ける。
「なっ!?私たちの弾幕が!」
「ヒカリ…。あれ飽和限界どうなってんの?」
「ん。たぶん。スキルのせい。見たことない〔逆行〕〔時〕〔コピー〕?てのが使われてる。あと。〔記憶〕〔采配〕〔配置〕〔等価交換〕〔条件〕〔指定〕〔キープ〕〔ストップ〕〔ミラー〕。まだある…。多い」
「砕けろ!」
とんでもない量の弾幕の元は過去に使ったヒカリやアキアカネなどの弾幕が再び、全員の今までの攻撃が今、同時に発動し、カチコチのニワトリに飛んでいく。
カルマの弾幕を当てるために、ユキは〔粉砕〕を使いその氷像を文字通り粉砕。
未だ、HPの残っているニワトリ目掛け飛来する魔弾の数は優に万を越え、全てが当たる訳では無いものの、広範囲、高密度の弾幕のカーテンに逃げ場など無い。
「コ、コケ…」
「なるほど。ユキの最後の攻撃は範囲外だったか…。残念」
一通りの弾幕が通り過ぎた後には、満身創痍のニワトリが、そのボロボロになった体をなんとか持ち上げる。
「まだ、終わらさないコケ…。【焔咲】」
突如巻き上がる炎が鳥を包み。空へ登る。
「なっ!?あれで生きてやがるのかァ?」
「僕はもう戦力外かな…。回復薬でもこれは治らないからね…」
「お前は海ん中にいろ。流石に働き過ぎだァ。俺が能無しみたいに見えるのは癪に障る」
「任せたよ」
先程の技の反動か、あれだけの特別な弾幕を放てば、それなりの代償系のスキルを使用することとなる。わかりやすいのは、以前、ヒカリがフェンリルに使った〔限界突破〕だろうか。
〔限界突破〕は「HP0の状態で効果が切れすると回復薬が効かない」「使用中は秒間5SP消費」「使用中にHPが切れても死なない」「色々アップ」というとんでもスキルであるが、使用=勝たなきゃほぼ確定で死。勝ってもHP0なら同じく死というピンキーさを誇る。
対して、カルマが使ったスキルは〔逆行〕使用時間=全体バットステータス。〔時〕使用時間に応じて回復不可能状態。となる。
そのため、大幅弱体化を食らった回復できないカルマはお荷物になってしまう。
幸い、水中には火が主体の鳥の攻撃は届かない。カルマはしばらく身を潜めるために水中に留まることを決めた。
閑話休題。
同時に、炎に包まれた鳥は、ユキ達が弾幕を飛ばそうと全く手応えがない。しばらくして、その炎が辺りへ弾け飛び。中から綺麗に元通りになった鳥が両翼を大きく開き現れる。
「「な!?」」
「さすがにそれは反則じゃないかな〜?」
「クソがッ!」
「これは…」
「ん。〔超回復〕…」
「えー!?」
それぞれアキアカネとビュアは驚愕し、ユキはゲームじゃないなら、その張り付いた苦笑いの横に冷や汗が浮かんでいたであろう。
ランプは悪態をつき、カルマは水面から顔を出しながら、険しい表情になる。
ヒカリはその鳥が使ったスキルを見て原因を突き止め、最後にはるか上空では、今も尚流れる音楽。とナユカの「えー!?」がマイク越しに聞こえてきた。間奏なのでセーフ。
メンバー絶望の鳳凰戦。
「さて、なかなかやばかったこっこ。第3ラウンドコケーーー!!!」
さらに激しく燃える鳥がメンバー目掛けて火弾を飛ばし、ナユカ以外の全員が咄嗟に海中へ退避する。
「ちっ!おい!あれどーすんだァ!」
「自己回復スキル〜。存在したんだね〜」
「ん。初」
「2人ともマイペースですね?」
「いつも通りでは?」
「僕は聞く専ね?」
やはりなんかリリースのメンバーは感覚が少し…。いやだいぶ毒されているようだ。これにはランプもため息と悪態を吐く。ついでにカルマですらそのテンションにつられている。
「どうします?」
「戦闘継続〜。行くよ〜?」
「アキは。回復」
「わかってるよ」
全員がそれぞれ回復薬を使用し、再び鳥に攻撃をしようと海面を飛び出そうとした時。
『ユキッ!!出ちゃダメッ!!』
「ッ!全員停止!!!!!」
ドコッ!!
飛び出そうとしたところに落ちる弾幕が着弾し、大きな爆発をうむ。間一髪、ナユカのおかげで気づけた弾幕。
だがしかし、水中からは弾幕の影など見えず、ただ明るい空と、燃え盛る鳥が見えるのみである。
『透明な鳥が飛んでる!』
ナユカかの目で捉えられた、弾幕は、今もユキたちの真上に陣取り。水面下のメンバーに狙いを定め続けている。
「しばらく出てくるなこっこ。まずは上から落とすこっこ」
「しまったッ!!ナユカ!!」
「【ニワタリの使命】」
空が光り、海面が燃え出す。
「はぁ!?」
「海が燃えてる!?」
「な!?全員海底に!水温が急激に上昇しています!!」
「ここ海なのだが…」
海面そのものが燃えだし、実質海と空の境界線にボーダーが引かれ、さらに海水が急激に沸騰状態になる。
『ナユカ!ニワトリがそっちに!!』
『うん』
『逃げて!』
『向こうの方がスピード速い。そしてここ以外に私が歌える場所もない。つまりここで、あいつを「どうにかしないとね」』
『ナ、ナユカ!?…できるの?』
『任せて、出来れば早めに出てこれるように。それまでの時間は最低限稼ぐよ』
『了解』
その酉は舞い上がる。その歌は降り注ぐ。それは太陽に挑む。その瞳に赤を挿して。
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