*>>ナユカ視点
あれからノアに戻り、ギビン君の身に起きたことを説明してもらった。
この時驚いたのだが、ビュアさんからの連絡と録画の一部始終。ギビン君によると時間が止まったらしいのだが、ビュアさんの動画ではその止まった時の中まで鮮明に録画されていた。
私たちを少し見下ろす画角で、ある時からギビン君以外の全てが停止するのだ。全く私は自覚してなかったのだけど…
そして今もギビン君が保持する宝石にはメラメラと輝きが伺える。
とりあえずその勇者クエストをクリアするためにどうすればいいか、といった議題に移り変わって行くのだが、ここで声を上げたのは以外にもニワタリちゃんだ。
「その大樹なのじゃが…おそらく我らと同じ存在なのかもしれぬこっこ」
どゆこと?と思っていたらここでさらにビュアさんから新たな動画が送られてきた。
今度はビュアさんの操作するカメラではないらしい。
このゲームには13種、少なくともリーダー格の個体がいるということ。
ネズミ ウシ トラ ウサギ リュウ ヘビ ウマ ヒツジ サル トリ イヌ ブタ。
干支の十二支そのまんま。あとはネコも確認済みらしい。 あとアクマと呼ばれる個体が今回の襲撃の主犯格との事だ。
そしてもしニワタリちゃんの言うことが本当ならこれに大樹が加わるようで現在存在が確定したのは15種となる。
その説明をしてくれたネズミの話を録画越しでミザール艦長なども聞いている。
私が知ってるのはリュウにニワトリだけだ。イヌはノーカンでいいと思う。
「となると、救うためにはただあの若木を育てるだけじゃダメこっこ。そもそもあそこでこれ以上育つ方が危険こっこ」
との事らしい。うんうん。そろそろ私は話についていけなくなってきた。
「それは何とかなるかも〜?」
ユキには何かわかったことでもあるのだろうか?ユキはその後色んな人に連絡を飛ばしなにかの準備に取り掛かるようだった。
と言っても、本人は連絡するだけで何もしていない。
会議後それぞれの動きはこうだ。
ギビン君。私、ヒイロさんはミザール艦長案内の元エルフの集落を見て回る。
ユキはニワタリちゃんとともに宇宙船で急ぎ火星に行くらしい。なんでもあの若木を移動させるために必要なものを調達してくるんだとか。
ウルドはそのままログイン。パパに色々報告とか、異常がなかったかーとか、ゲームプレイによる種族的な問題を検査するらしい。
うむ…少し残念。でもよく考えたら当たり前だ。
ウルドと私たちはそもそも人の形をしているが星系特有の生態系などが違う。私ですらハーフであり、ゲームプレイ中に脳の使用率が普通の太陽系人とは違うというのだから、ウルドは特に注意していかなければならない。
話を戻して、私たちエルフの開拓地以外の動向もいくつか聞いている。
まずビュアさんとセリエルさん率いる情報屋組はネズミさんの話を聞きながらそれぞれの種族の居そうな場所を公開、全プレイヤーを巻き込んだ大捜索を開始するらしい。これには開拓使団がノリノリで参加。
ただネズミさんによるといくつかの種族は既に動き始めているようだ。
ミカちゃんや軍曹はユキと火星で合流予定。
ハルトさんとヒヒリー、キリアちゃん、あとジークさんはユキに頼まれた物資の調達と作成。
アリアさんはもう少しでログインできるらしく、ログイン後はギルバートちゃんに色々聞いてみるようだ。その後の動きは未定。
Jチームと闘技戦士団は残ったモンスターの討伐。特に海のモンスターを対処しに行くらしい。
さらに、アインズや、その他組織も積極的に動き始めている。
勇者クエストに関わらず、今はゲーム全体が動いている。プレイヤーと来訪者、そしてモンスターも。
大きな大きな渦中の中心に一体何が起こるのか…
「行きますよ?ナユカさん」
「あ、はーい」
ヒイロさんに呼ばれ私はノアから飛び出した。
先程も見たが集落はかなり枝分かれしていて全体はもっとでかいのだろう。
先程は見えなかったがエルフの子供たちが楽しそうに追いかけっこしていたり、家事途中の奥様エルフの井戸端会議?など。ほんの少し、のどかな空気が広がっていた。
「もっと広い森を走らせてあげたいのですが…」
そんな子供たちを見ながらミザール艦長は申し訳なさそうにしていた。
「いえ、ミザール艦長はとても素晴らしい族長さんだと思います。少なくとも、子供たちが笑っていられる程度には。それって現状で最高の状態では無いですか?」
わお、さすが勇者候補ギビン君。めちゃくちゃイケメンなこと言ってる。
「私もその意見に賛成だな。民を思う王こそ真なる王。私も父のようになれと口酸っぱく言われたものだ」
今度はウルド。彼は王族だ。そりゃー王になるための教育とか、心構えとかは人一倍詳しいだろう…
あれ?私も王族だな?おかしいぞ〜?
「うんうん。もっと笑っていられるように。私たちが頑張らないとね!」
とりあえず私も王族なので!なんか言葉にしてみたけど…。この言葉は将来の私への言葉なのかも。
ふと、そんな思いがよぎっていった。
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