ナユカが上で何も出来ない状況にある中、したのメンツはとにかく水中へと即座へ退避できるような立ち回りを主軸に、鳥相手に善戦していた。
「ナユカさんは大丈夫なので?」
「う〜ん。こっちがヘイトを買ってる限りは大丈夫〜。だからナユカは今動けないわけだけどね〜?」
「ナユカさんだけ孤立状態…。なかなか状況はよくありませんね?本来なら私たちの後ろに陣取り、バフを飛ばして貰うのが1番だったのでしょうが…」
「うん。〔水泳〕取れてなかったんだよね〜。ショップに行った時とかも運悪くてなくてさ〜」
水中でも会話はできるようで、ユキとビュアはそんなことを話しながら水面下で移動をしている。割と〔水泳〕も空を飛ぶのと同じように動けるので、自由度は高い。
強いて言うなら若干速度が落ちているのと、重力落下ができないこと。火属性やそのた水に弱そうなものが全般使えないことが不便な点と言えよう。
逆に、水中戦闘などを好むプレイヤーも少なからず居たりする。今回はそんなメンバーではないのだが、〔水泳〕は、〔飛行〕に継ぐ革命スキル。入手難易度はかなり低く、ナユカ以外のメンバーは全員保持していた。
(よ〜く考えたら、ナユカってまだゲーム始めてそんなに経ってないしね〜)
忘れられがちだが、ナユカは本来ならまだまだ初心者の域である。もっとも、誰もそんなことは思ってもいないのだ。本人すら、少し自覚してきた程である。
ボコッ!!!
「ッ!?」
ユキは突如上から落ちてきた岩をギリギリで回避し、水面に飛び出す。
「ちょっと〜?危ないんですけど〜?」
「あ?躱せるだろーが、こいつに攻撃するなら岩とかの方がいいだろ」
「仲間の位置把握すら出来ないのかな〜?」
「ちっ!このガキッ!?」
バキバキッ!!
ユキのとランプ。2人は一瞬鳥から目を離し、互いを見た瞬間。鳥は唐突に加速して2人に体当たりを仕掛ける。
それに気づいたユキが、ユキとランプに向かってくる鳥との間に氷の壁を海から作り上げ、その突撃を逸らす。バキバキと音をたてながら崩壊した氷の壁だが、かろうじて2人とも無傷だ。鳥を逸らした方角も、誰もいない方へ逸らす。
「敵と味方の把握はチーム戦の基本だよ〜?できる人がやってないと、あっという間にパーティーがバラバラになっちゃうからね〜。わかった?」
「ちっ…」
腑に落ちない様な表情になるランプだが、ユキがランプを置いていくように鳥めがけて飛んで行くのを見て…。
一瞬、周りを把握するように回し見てあとを追いかけた。
その頃、ヒカリも自身の間合いに鳥が居るだけでダメージを受けてしまうため、遠距離からチクチクと、弾幕を飛ばし、たまに自分にヘイトが向くように仕向けている。
ヒカリとアキアカネもナユカの状況は把握しているため、目立ちすぎず、目立つように動いていた。
「ん。アキ、どうする?」
「どうするって言われてもね…。あんまり相性良くないんだよね。あのニワトリ、わかっててやってない?」
「たぶん、わざと」
「だよね。だとすると、本当に困ってるんだけど。こっちのやりそうな攻撃も予測されてそうだよ…。前回の戦闘もあるし、大技使えば確実に速攻で潰しに来るよね?」
「ん。絶対しない方がいい。今は陽動に専念する」
「君たちなんか硬いよ?もう少し肩の力を抜いたらどうだい?」
2人に偶然近づいていたカルマが、2人の作戦会議を聞きながらそんなことを言う。
2人からしてみればいつもの事だが、第三者から見たらいつも実況しているふたりとは打って変わって静かだという印象なのだ。
「ん?別にいつも通り」
「こないだのオオカミに比べたら優しいですね。あのニワトリ。だって様子見とか言って、油断してる節ありますからね!」
「あ、そう…」
カルマは2人は少し異質だと判断を下す。それはあながち間違いでもなく。極度の緊張状態であったあの戦争と比べれば、遊びなんて生ぬるい。と、無意識に2人とも思っているからであった。傍から見たら彼女ら2人がいつもより緊張して固くなっているように見えたが、逆で、カルマ自信が舞い上がっていた。と、自覚する。
「ふむ。大技はしない方がいいのかい?2人はスカイスクランブルの時に戦ったのだろう?」
「あの頃とはだいぶ違う見た目してますけどね?」
「ん。私たちの技は知られてる」
「なら僕が打って出ましょうか?僕の技はあの鳥にはバレていないでしょう?」
「あいつ。強いよ?何するの」
2人とも打開策がなかったので意外とカルマの大技と聞いて期待している。
それを感じ取ったカルマも、もうこの2人と敵対することもないだろうと作戦を打ち明けた。
「ランプと君たちができるだけ大量に弾幕を飛ばす。その後は僕に任せてくれよ。全部再現してみせるからさ」
暗い海の上。積み上げた罪が密かに笑った。
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