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R×2 18  ドールメイカー。KOI-456.04

公開日時: 2022年7月21日(木) 23:51
文字数:1,922



「ドールー?来たよー!!」


「おじゃまするであります!!」


 貸店舗のそのお店に入ると、たくさんのお人形さんが鎮座し、所狭しと飾られていた。人形も種類豊富で、西洋風から日本人形まで揃っている。

 一言で言おう。不気味だ。


 そんな変なところに入る客などほとんどおらず、来る人間も変態だらけだ。



「いらっしゃー…。うちの子達。調子はどぅ…?」



 やけに小声で現れたのは、人形の山から這い出してくる亡霊…。ではなくプレイヤー。


「ドールー。店もうちょっと片付けようよ?」


「みんなうちの子ぉ…。片付けるなんてありえなぃ…」


「あー…。そう」


「情熱ですな!!わかるであります!!」


「分からないでいいからな!」


「あり?」



 そんなお店を尋ねた軍曹とヒヒリー。そのドールと呼ぶ少女に会いにここまでやってきた訳だが…。


「何しに来たのぉ…?」


「ああ、軍ちゃんがドールの人形にケチつけに来たの!!」




「な!?う、嘘でありますよ!?ドールの人形にケチなんかつけないであります!!こ、今回は、折り入ってドールに頼みがありますですよ!」


「ふーん…。けちつけにきたんだぁ…?」



「ち、違うであります!!ほ、ほら!ヒヒリーも何いってるでありますか!!訂正してくださいですよ!!」


「ま…。いい…。中においで…」



 と言いながらまた人形の山に入って行くドール。2人はお互いに目を見合わせ、首を傾げる。



「「中?」」











*






 ここはどこか隔離された空間。中にいる人物を逃がさないための牢獄とも言われる場所であり、その部屋にはとある男がいた。


 ちなみに隔離されてはいるが、牢屋というより少し狭い普通の部屋にしか見えない。




コンコン。ガチャ





 ノックの後、扉が開きそこにある男が入ってきた。その様子を見て男は首を傾げる。


「死の時が来たのかと思ったが、違うな?」


「別に私たちは君を殺したりしないよ」


「あれだけのことをしたんだ。死者も出ただろう?それこそ俺を殺さないと遺族や周りの人間が騒ぐはずだ」


「なかなか頭は回るようだね?さすが、ハッキングするだけのことはある」


 そう言った男。朝霧 翔平しょうへい。ユキの父であり、現在防衛省に所属であるが、その家系は普通の階級段階に属さない。



 そして…。



「翔平は怖いから信憑性がないんだな」


「はっはっはっ。君が言うかね?確かに顔は厳ついが心は優しさに満ち溢れているよ?」


 後ろから来た勇人にそう返した翔平。2人は旧知の仲であり、若かりし頃共に育った幼なじみとも言う。


 こうして茶化しあうくらいには仲が良かった。


「全く、その厳つい顔からよくあんな可愛い子が産まれたもんだ」


「君みたいなイケメンの方が怖いけどね?中では何考えてるか分かったもんじゃない」


「花恋と那由花の事しか考えて無いが?」


「親バカでしたか」


「おうよ」



 自分で否定しないあたり、もう末期症状をはるかに凌駕していた。


「それで?何の用だ?まさか仲の良さを見せ付けに来たわけしゃないよな?」


 そこに割って入る男。


「そう気を立てなくてもいいよ。ウルド・コリィー君…。だったかな?」



 今回の騒ぎの直接的元凶の彼、那由花に敗れ、計画は失敗。ログインしていた自身の体も厳重にロックしていたはずなのに突破され、キリアにより捕獲された。


 その後、意識を刈り取られ、ここに連行されることとなる。


「君に用があってね」


 そう言い出したのは勇人である。


「今回の元凶は俺だ。分かりきっていることだろう?さっさと殺せばいい…」


「今の時代死刑はやってないんだよ」

 

「ならこのまま豚箱で一生を過ごせと?」


「いや?我々に協力して欲しくてね?」


「…バカか?」


 敵に協力しろと言う勇人をバカだと罵るウルド。しかし、そこにウルドにとって衝撃的な言葉を放つ勇人がいた。


「本気だ。君がどこから来て、何に縛り付けられていたのか。それを教えて欲しくてね」


「!!…言えるわけ…。無いだろう?」


「やはり君は味方になりそうだ」


「お〜…。米嶋家は怖いね〜」


 この際やり返しとばかりに煽る翔平は放置する勇人。少ししょんぼりした翔平だが、すぐに持ち直す。顔と違い性格はユキにもしっかり遺伝しているようだ。


「どういう意味だっ!」


「まだ気づかないか?君を縛っていたものはもう取れてると思うんだがね?」


「っ!?」



 そう言われて気づく。目が覚めてからあの嫌な耳鳴りのような不協和音が一切聞こえていないことに…。



「そんな…馬鹿な…」


「君に埋め込まれていたタネは取り除いたからな…。もう喋って大丈夫だぞ?」




 その勇人の一声はウルドにとって余程衝撃を与えたのか。彼の目には光るものが静かに滴り始めた。



「そう…か…。俺は…。解放されたのか…」



 今日この日彼によりもたらされた情報は、今後の防衛省にとってかなり有力な情報だったということだけ伝えておこうと思う。









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