「よし!じゃあどこ行く〜?」
ゲームにログインした私たち5人は、今。泊まってるホテルの屋上に出ていた。上を見上げればそこにはいつもより近く見える星々の輝きが…。火星だからかな?大気が人工的に作られているとはいえ、やはりベースとなる地球とは少しだけ違うように見える。
それに。
「あれが火星の月ですか…。ですよね?」
「ん。フォボスとダイモス」
「2個あると聞きましたが…。もうひとつは小さくて分かりにくいですね」
そう、地球と違って月がふたつあるのだ。ただし、月と比べるとはるかに小さく見えるので、見慣れてる私たちから見たら違和感がすごいけど。あと、少し歪に見える。月程明るくないからよく見えないし、一応満ち欠けもあるから分からないけど。
「いいですね!なんか火星ぽいです」
「ぽいじゃないけどね?ここ火星だから」
全員でここら辺ではいちばん高いビルの端から見上げつつ、物珍しさに見飽きることもない。まあ、綺麗だし。塵ひとつない澄んだ空気の下、私たちは風に服を靡かせる。
「あれがスタジアム?」
「ん。あそこ」
「んじゃ〜、とりあえずあのスタジアムまで行ってみようか〜?」
「「賛成!」」
「動画はどうします?プライベートで行きたいならやめときますか?」
「ん〜。まあ、配信していいんじゃな〜い?襲われても返り討ちにすればいいし〜」
「いいんです?」
「「うん!」」
私とユキが許可を出したので、ビュアさんも嬉しそうにカメラを回す準備を始めた。
「準備出来たら行こうか〜」
「火星探索ツアーだね!」
眼下に広がるきらびやかな街並みを眺めつつ、まだ見ぬ土地に思いを馳せる。たぶん、開拓師団の人達はこういうの見るのが好きなんだろうね。わかる気がする。
「OKです。配信開始します」
『いちこめ〜』
『ゲリラ配信だー!ッてどこここ!』
『なんかすげ絵面が様になってるな』
私たちはそのまま夜景を見ていただけなのだが…。ビュアさんがカメラアングルを並んでいる私たちから見て真横に持ってきていた。
全員同じ方向を見ながらのバックに夜景…。確かにいつもと違った感じに見えなくもない。ユキもいつもと違ってクールに見える。ヒカリさんはいつもクール…。というより無表情だから変わらないけど。雰囲気ね。
『今火星だよね?』
『え?スタジアム周辺にいるの?』
『夜景的にアリン』
『今から行くわ』
『拡散!拡散!』
うん。絶対に集まるね。人。
今日の今日だからみんなまだお祭りムード的なテンションかもしれない。
「今から私たちは〜、スタジアムに向かいま〜す。目指せ!百人斬り〜、ナユカを倒した方にはなんと!100Gさしあげまーす!」
「ちょっとユキ!?」
『ほう?』
『ほほう?』
『ほほほほほう?』
『金…金金』
『ナユカちゃんを倒す…』
え?!ユキ!??なんかめちゃくちゃなこと言ってない?観光は?このままだと確実に観光どころじゃ無いよね?戦闘ばっかになっちゃうじゃん!!
「私たちは防衛ですか?」
「そうそ〜う」
「いやいや!私を勝手に目標にしないでよ!」
「え〜?ちょうどいいじゃん?」
「何が!?」
「難易度〜」
ほう?ユキそれはひょっとして私が弱いと言いたいのかな?そうなのかな?
よかろう…。この私が、来るやつ全てをバッタバッタと切り伏せればいいのだろう?
「ん。ナユカ。火がついた」
「つけたのはユキさんです!」
「ということで〜、みんなかかってこ〜い!」
『何処!?』
『スタジアムの周りでひときわ高い場所!!』
『俺がナユカちゃんを倒す!お前らどけッ!!』
『うわッ!色んなとこで戦闘がッ!』
『めっちゃ参加したいけど、月なんだよな…』
『まあ、帰ってくる時にやってくれると信じて…』
ということで、来るやつみんなしばいちゃいましょう。ゴソゴソ…
「うわっ!みんなもう特定して集まって来てますよ?上から見ると意外と綺麗ですね?」
「さぁさぁ!面白くなってきました!実況は私、アキアカネがお送りします!たぶん解説のヒカリはする気ありません!」
「ん。バッチグー」
よし!
「ナユカ〜、やるでしょ?今宵、夜はまだ続く。闇に輝く5人の弾幕。魅せたる幻想。轟く喧騒。さあ、【私と一緒に踊りましょう?】」
「はぁ…、やらないと観光できないでしょ…。というか終わるの?これ?響く音色。彩る5輪。誘われしもの。交わる波は幻を作る。えぇ、そんな夜を【君と咲かせよう】」
私とユキはお互い戦闘服に着替える。と同時にビルの屋上を華やかに、目立つように、彩った。
「「さあ、ゲリラライブだ!!」」
夜はまだまだ終わらない!
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