ここは薄暗い牢屋…。ではなく…。
「うむうむ。ナユカが楽しそうでなによりだ」
「いや〜。ユキも楽しそうだけど、最近訓練してないからな〜。させた方がいいか?」
「今でも充分強いだろうに。他のプレイヤーが可哀想だからやめとけ」
「まあ、いいか〜」
私の隣で楽な姿勢を保ったまま、目の前に出した巨大フォログラムに、映画さながらRBGの戦争の様子を映し出している勇人と翔平。
私は一応犯罪者だ。名はウルド。なのに彼らと言ったら牢屋に押しかけてきたと思ったら、堂々と居座り、おつまみと飲み物片手に「娘の大事なイベントだ!!」と言って鑑賞会を始め出した。
もう一度言おう。ここは一応牢屋である。
決して、ふかふかなベッドや最新鋭のお風呂、お菓子などが自由に食べられるなど、おかしな点は多々あるが、ここは牢屋である…はず。
不安になってきた…。
「私は…。一体何をしているのだろうな…」
そんな小さな独り言。口から勝手に飛び出してしまったその言葉は勇人達にも聞こえていたらしく。こっちをチラッと見て…。あ、すぐに映像に視線を戻した。
「我々の敵「ソレ」の根絶。その手助けだよ」
「君からもたらされた情報は防衛省にとってとてつもない価値を持っていたからね〜。君は無理やり従わされていたのだよ?なら被害者側だと言っていいんじゃないかな〜?」
「だが、犠牲者が出たのも事実だ。その責任は私にあるだろう?」
「まあ、そうだな。その罪滅ぼしでして、君には我々に協力してもらっている」
と、勇人は言いつつ。ポテチを口に放り込んでいた。
「私は、許されるつもりなんてないぞ。君たちに協力して「ソレ」を打倒できたなら死刑で構わない」
「だから死刑制度は無いって〜」
そうだったな。死刑がないなら…。私は一体どうやって罪滅ぼしできるのだろうな…。死んで行った人間はもう、戻って来ないのに。
「そう、自分を追い詰めてもキリがないぞ?」
「…」
「まあ、そうだな、ではひとつ提案なんだが」
「なんだ?」
提案。それがどんなことでも私は受け入れようと思う。彼らのためになるならば。
「RBGをプレイヤーとしてプレイして欲しい」
「わかっ…。はい?」
え?今なんといった?
私にRBGをプレイ?え?なぜ?というか、なんで?
*
「おつかれ〜!」
「いやー。まあまあ疲れたよ。特に最後」
「まあ、スティーが敵の最高戦力だからね〜。それに勝てたナユカ!偉いっ!」
「ほとんどユキじゃね?」
「いやー。ナユカさんも凄かったですよ?」
「あ、てかビュアさん!最後ナイス!」
「いやー、結構ギリギリでしたね。透明化中は〔飛行〕できないんですよね…。全力疾走はなかなか大変でしたよ」
目の前に浮かぶ、戦争終了の文字。結果は私たちCSFの完全勝利に終わったようだった。
この勝利にはもちろん私たち「リリース」の力もあるけど、何よりそれぞれのギルドが役割を持って動けていた点が1番の勝因だと思う。
ただひとつ。さっきから気になることがあったのだが…。
「ところでさ…。闘技場の方から聞こえた爆音。あれは何?ついでにミカちゃん大丈夫?」
闘技場の方から聞こえたとてつもない爆音と閃光。それと同時にHPが一瞬でゼロになったミカちゃん…。
ミカちゃんやられちゃった?
「私もわからなかったんですよね…」
「さ〜?」
「コメントなら何か知ってる人いますかね?」
戦争が終わったので、コメント機能が復活したビュアさんの生配信。私も試しに表示させてみると。
『いや、あれはもう…』
『わざとなのかな?』
『運営のカメラ破壊されたのか、その後の光景が映されないんだよな笑』
『ミカ、やらかす』
『ビームはロマン』
『ミサイルはロマン』
『自爆もロマン』
『敵諸共自爆した』
『砲撃とともに自爆』
『巨砲厳つかった』
なんか、なんかもう、また爆発したのだけはわかった。
『男のロマンだ仕方ない』
『ミストラルは男だが、ミカは女の子だぞ?』
『オトコノロマンだ仕方ない』
「自爆したらしいですね」
「なにしてんの…」
「さすがミカちゃん…」
3人とも呆れて笑顔で吹き飛んだミカちゃんを幻視したのはきっと気のせいに違いない。
司令塔が自爆って1番ダメなんじゃね?
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