『警告!崩壊開始を確認。推定墜落時間3分』
うるさいブザーと赤く回る警告灯。そして壁から音もなくスライドするように現れる機械の敵。
何体倒しても次から次へ湧いて出てくる敵を氷弾と岩弾で物理的にぶちのめしていくユキ。
何故か機械の敵には通常の魔弾のように物理的攻撃を持たない弾幕や魔法は全く効いていないらしく、更にはレーザーが入り乱れユキを襲う。
このイベントの段階ではあまりに異質なレーザー攻撃にユキはヒヤヒヤしながら回避行動をとっていた。
ちなみに、RBG内でプレイヤーが初めてレーザー攻撃をぶちかましたのは皆も知るミカちゃんである。
「ッ!!またシェルタ〜…、多いって〜」
〔地図〕を見ながら幾度となくシェルターを開け、その度にクリスタルを防衛する苦行。機械が放つ攻撃はユキを狙うものだが、その流れ弾がクリスタルに当たらないように立ち回るのは中々に足枷となっていた。
クリスタルを迅速速やかにくぼみにはめ、急遽進路を反転させたユキ。そのまま氷弾を飛ばし機械の敵に打撃を与えていく。
もちろん、レーザーをかいくぐりながら。
「まあ〜?さすがにテレ・バレットなんて言う馬鹿げた兵器に比べればまだ読みやすいけどさ〜。この難易度設定おかしいでしょ…」
そう言いつつもユキは無傷である。一定時間が経過し、シェルターが開き更にその先にある通路へ進めるようになった。
ユキは迷わず攻撃をやめ、クリスタルを取りその先に進む。
別に機械ひとつひとつはそこまで強くは無い。強いて言うならレーザー攻撃だが、当たらなければいいのだ。
ただユキは徐々に亀裂が入り、どこからが聞こえてくる崩落音を確認しながら走る。
そう、この脱出ゲームには制限時間があるのだ。無駄に戦闘するだけ時間をロスするためユキは殆ど逃亡に近い形で通路を進む。
ドコッ!?
不意に足場が崩れ即座に一瞬だけ〔飛行〕を使い体制を立て直すユキ。
「崩れてきてるし〜!?」
通路の亀裂は更に大きく、揺れや崩落音、爆発音すら近くで聞こえる。本格的に真っ直ぐだった通路も歪んでいく。
ヤバい雰囲気をひしひし感じるも出口は未だ見えない。ユキのマッピングによれば次の角を曲がればあとは出口まで一直線なのだが…。
ブー!ブー!ブー!
「まてまてまてまて〜いッ!!!」
角を曲がって目に入った。現在進行形で上下から閉まるシェルター。ゆっくり閉まっていくその光景は、これが閉まるとゲームオーバーだと直感的に分かるビジュアルだ。
更に全力で走るユキ。そこに追い打ちをかけるように一際大きな破壊音と同時に、今度は通路自体がどんどん傾斜していき、出口がどんどん上に傾く。
浮島そのものが落下し始めたのか。
「ッあ!?ッ間に合えッ!!」
強くなる浮遊感に即座に〔飛翔〕に切り替えたユキ。細くなりつつある出口に滑り込むように一直線に駆け抜ける。
間一髪。ギリギリ通り抜けたユキ。そんなに時間は経っていないのに何故か懐かしくも感じる外の空気を感じながら、視線を下に向ければ…。
その機械仕掛けの浮島がボロボロと残骸を撒き散らしながら雲海に沈んでいく。スケールの大きさ故か落下が少しスローにさえ見える迫力と、何とかゲームオーバーを回避することが出来たことに安堵した。
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チェインクエスト:壊れた浮島
クリア条件:「封核クリスタル」を保持したままこの浮島からの脱出。
クリア失敗条件:
・「封核クリスタル」の紛失
・「封核クリスタル」の破損
・プレイヤー死亡
・脱出失敗(一定高度島ごと落下)
クリア失敗時:「封核クリスタル」没収
参加者:ユキ
報酬:「封核クリスタル」の獲得
クリア状況:脱出済み
クリスタル耐久値:0├─────────┨100
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「よし…、帰ったらあの鳥…。もう1回ボコそう…」
大きな鳥。後にニワタリと名乗るその鳥。さもお使い感覚でとんでもないお題を自身へよこした鳥に殺意を漏らしつつユキは遠くに見える大きな大樹を目指す。
こうしてユキは鳥の思惑のまま。その機械仕掛けの浮島を破壊した。
後にこの機械の敵と再び相対すことになるとは露ほども思わずに。
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