戦闘エリア全体に響く音楽とナユカの歌声。色んなプレイヤーに直接ナユカはとある仕掛けを施していた。
【音色響花「コネクスタ」】
彼女が歌を届けるための仕掛け。それはどこにいても、歌によるバフを届けるための魔法陣。
これを地道にナユカはひとりひとりに唱えていくのであるが…。如何せん技名が長いので20回を超えた辺りで、改名。【コネクスタ】に略したのだが…。
100を超えたあたりから、【えいっ!】になっていた。
ネーミングセンスがミカと同等である。本人はそんなこと構ってられなくなったのか、後半はもう数人まとめて【えいっ!】【えいっ!】【えいっ!】っと。雑に発動させていたのをユキは知っている。
そんな握手会さながらの仕込みを終えて、ナユカはこの巨大なエリア全体に自信の声を響かせることに成功した。
そして、その歌声は観戦者にも届くのである。爆発的なCPの増加が、CSF同盟全員にバフとして付与されるのだ。
感情がそれぞれのバフに変わる〔魅力〕。ナユカの場合。そのバフとなる感情。嬉しさ、楽しさ、心地良さ、美しさ、可愛さ、その他。プラス思考の感情が積み重なる。
ナユカの〔魅力〕に憧れたものは多いものの、未だにそこまで感情を引き出す〔魅力〕を発揮出来るプレイヤーはいない。
ナユカの強さはそこにある。
プレイヤースキルとして言えばそこまででは無い。見える分早く動ける。見てその先を予測できる分、考えられる時間が普通の人より長いが、強いて言えばそれだけだ。
未だにユキには、プレイヤースキルで圧倒される。
しかしナユカは弱い訳ではなく、発想力で相手を翻弄する。
今までにない挙動で、相手を混乱の渦に叩き込むのだ。毎度毎度、ただただ本人は気にせずに、新しい弾幕の形を作り出す。
MPという制限をガン無視するかのような弾幕は、相手を翻弄し、魅了し、先を読ませないための攻撃に早変わりしていた。
本人に自覚はない。大人数の戦いで1番厄介なプレイヤー。それはナユカなのだ。
ほとんどのプレイヤーは、1人で戦況を大きく変えることはできない。
…リリースは別だ。
1人で百人組手みたいなことを過去にした事のあるユキ。
1人で、フィールドごと変えてしまったことのあるアリア。
1人で、武器から多彩な超強力攻撃を何回もぶっぱなすハルト。
1人で、気配も何も無いとこから相手の情報を盗めるビュア。
1人で、エネルギータンクに陣取り極太ビームを放つミカ。
1人で、相手のスキルを丸裸にし、有効打しか繰り出さないヒカリ。
1人で、闘技場を使って色々できるアキアカネ。
1人で、とんでも爆弾をホイホイ作り出すキリア。
…リリースは別である…。
ナユカは、1人で、実質ひとりじゃないのだ。その背後には、魅せられた者達がいる。
そして、継続的に全員を超強化するのだ。
勝てると?本気でお思いで?
しかし、そんなこと知らないと、調子に乗る輩は沢山いる。今回もその輩を排除するだけだ。
『もう始めるぜ?』
『ユキ殿、こちらもいつでも大丈夫だ』
『いいよ〜。発射っ!』
『撃てっ!!』
『【ズッドーーーン!!】』
途端に鳴り響く轟音。音源はノアだ。いつの間にか、戦闘エリア外縁部に主砲を向けたノアが、号令とともにその本領を発揮する。
ドォォォォォンンンンンン!!
『次弾装填!』
着弾箇所はとてつもないことになっていた。辺りが焼け野原と化す。
その主砲は相手同盟の人口密度がいちばん高いところに目掛けて放たれ、そして総戦力を大きく削ることに成功した。
対するミカは。中央闘技場付近のエネルギータンク。その上空にて巨砲を放った。そこから放たれるビームは、大質量のエネルギー兵器がごとく。これまた外縁部を薙ぎ払った。角度の問題と闘技場と博物館の間にあるビルがノアの主砲の邪魔をしているため。その視角となる部分の穴埋めもミカはしているのだ。本来、参加予定のなかったノアだが、そのおかげでミカの仕事は減り、その代わり、戦争システムを取り仕切ることに集中できるようになるため、結果的に良かった。
『あとはノアに任せるぜ?うちは戦争システムに張り付くから、また用があったら言ってくれ。いつでも撃てる』
『サンキュ〜』
相手が可哀想である。
次、ノアはエリア外縁部の敵は殲滅できるが、さすがにエリア内を焼け野原にはしたくないため、撃てない。味方も巻き添えになる可能性も高いため。CSFプレイヤーはエリア内に待機していた。
しかし、流石に数が多く。既に内部に侵入を果たした敵プレイヤーを、CSFプレイヤーは相手取る。
そして、敵プレイヤーはここから巻き返そうと、戦闘を開始するが、異変はすぐにやってきた。
どんどん味方が分散するように減っていくのである。
戦闘している人間はともかく、中央を目指す部隊や、ギルド。それらが全て、少しづつ。消えるように死んでいくのである。さらに、エリア内部で、パーティーはどんどん孤立していく。いつの間にか屈強なプレイヤーに囲まれているなど、気付いた時にはもう遅い。
相手同盟の通信は混乱を窮めた。多方面から、救助要請や、死亡ログが流れてくる。
さらに、いつの間にか天候は雨に。
どんどん頭数を減らされていく敵同盟。
そして、気づけば。目の前にCSFのメンバーがいて…。
作者コメント
次回から、ナユカ達視点で戦争をお届け致します。
ナユカのステータスはその時に。
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