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W-2 83  地球から月へ

公開日時: 2024年1月25日(木) 03:55
文字数:2,235


 勢いよく飛び立った戦闘機。その中で4名ほど死にそうな顔でシートベルト付きの椅子に座りぐったりしていた。


「だからうちは言ったぜ?シートベルトした状態で〔飛行〕付けてできるだけ上に飛ぶようにって」



 唯一平気そうに先頭の少しいかつい座席に座り込んいたミカ。ご機嫌なのか足をご機嫌にパタパタさせて操縦桿をがっしりにぎりこんでいた。


「Gで潰れるかと思いましたわ…」


「無茶な上昇するなよ…」


「‎〜✻」


「…」


 即席の滑走路とも呼べないスペースから無理やり機体をあげた御一行。しかし飛び立つ時できるだけ早く上昇するために、全速力かつ全力で機体を上に向けた反動で機体内部にはとんでもないGが発生していたようである。


 ミカの言う通り〔飛行〕のスキルで緩和できるのだが初見でその力加減を見切ることなど不可能だ。予想以上のGにアリアとハルトは苦言を呈し、サーニャは溶けるように座席にただれ。キリアに至っては目をぐるぐる回していた。



「おい。サーニャ!カメラ配信開始しないとセリエルに怒られるぞ」


「…は!!」



 何とか原型を取り戻したサーニャは本来の目的を思い出し急いでカメラをオンにする。



『お!船内!』

『おおー!』

『外どんな感じ?』

『なんかみんなぐったりしてない?』



 程なくして配信画面が切り替わり船内を映し出すカメラ。ゆっくりと船内を観察できるようにカメラを操作していく。

 船内は戦闘機にしてはかなり広い。…が、5人も搭乗するとさすがに狭く感じる程度にしかスペースは無い。通常の戦闘機より大型のミカ式は戦闘機とは言っているもののそれらしい兵器は殆ど取り付けられていない。



「現在宇宙船は上空20km程でしょうかそろそろ成層圏に突入します」


「おいおいフィートって言おうぜ。味がない」


「誰も分かりませんよ!」


「今66.000ft超えたとこだなッ!」


「20kmで合ってますわ…」




 数分で成層圏に突入した戦闘機。ここからさらに中間圏、熱圏を超え外気圏へと突入していく予定である。


「地球からどんどん遠ざかっていますわ」


「あ?慣れればこんなもんだぜ?うちは割と地球から出るからな…」


「私も見慣れてるわ。でも何度観てもこの星は美しい。それでいいじゃない?」


『キレイ』

『地球は行ったことないけどこれは見てみたい』

『星によって違う雰囲気がいい』


 窓から除く地球が瞳に反射する。見慣れていると言ったサーニャはそれでも窓から地球を覗く。少しづつ辺りが赤く、深く、青くなっていきさらに地球は彩りを変える。

 開拓使団は絶景好き、冒険好きが集まってできたギルドだ。そのリーダーも例に溺れず絶景好きなのだった。





「大気圏突入するぜ。ここからは何が起こるか分からねぇ!最悪、即真空で即死も有り得るから構えとくことをおすすめするぜ…」


「ゑ?」


「おおwなんかふわふわしてきた!」




 そして宇宙船は大気圏を超えていく。まだ少し下という感覚はあるものの。ほぼ無重力となった船内。シートベルトを外せばたちまちその場で座りつづけることは無理であろう。


《システムを起動します。権限検索中。該当項目クリア。プレイヤー、アリア、キリア、サーニャ、ハルト、ミカにスキル〔下部指定〕を寄与します》


「おお…」


「なるほどなw」


「♪」



ーーーー


スキル:下部指定


カテゴリー:空間系

ランク:白

発動:プリセット

概要:密閉空間において下部を指定することで重力方向を指定する。使用対象は密閉空間なので空間に穴が空くと効果は消える。初期発動に10MPを消費することで永続的に〔下部指定〕可能。

 このスキルは無重力空間に侵入することで自動的に取得が可能である。


解放条件

・無重力空間に侵入


ーーーー



「〔下部指定〕」


 効果を理解したミカが声に出しながらスキルを発動させる。するとたちまちフワフワした感覚は消え地上にいた時と同じように座席に座ることが出来た。

 発動したミカ以外も同時に消えた浮遊感に驚き効果を実感する。



「ひとりが発動すれば効果は共有か?」


「対象が空間だからですわ」



『え、スキルって貰えるの?』

『条件獲得か』

『いいなぁ〜』

『宇宙に行けば貰えるのか』

『無いと不便だもんね』




 一通りスキルを確認し終え、なおも進む宇宙船はついに熱圏からも脱出する。



「一応、動いてないとは思うが惑星間テレポートビーコンも見ていくぜ?」


「動いてなかったらどうするんだ?w」


 惑星間テレポートビーコンとは。

 現実世界にもある装置のことだ。このビーコン同士を接続した場所どうしでテレポートが可能なのだが…


「その時は光速エンジンに頑張って貰うぜ!」


 数分後見えてきたビーコンは予想通り未起動状態であった。



 キリアとミカの知識とアリオト艦長から許可を得て作り方を学び作り上げた最高傑作。光速エンジンはその名の通り光速で宇宙空間を移動可能にするものだ。


「んじゃ全員、月に向かって突き進むぜ!!」


「光速だとどれくらいかかるんだ?w」



「加速する必要があるし光速になるまでに月に着きますわ。馬鹿ですわね?」


「あ?知らねぇーんだから聞いてるんだろが、お前こそお勉強頑張りました自慢か?w」


「リリースっていつもこんななの?」


「だぜ?」



「あぁ、そう…」



 そして一行はエンジン光を青く噴射しながら加速して行った。












 ちなみに。この時点でナユカと新規加入の軍曹、ヒヒリー以外の3人はこの配信に気付いていたようで、ビュアはニヤリと。ユキは表情1つ変えず、ヒカリはそもそも表情変わらず、アキアカネだけぎこちない笑顔をナユカにバレないように必死で取り繕っていたようである。

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