迫る攻撃、誰の目から見てもこれでおしまい。避けようもない数の暴力が2人を襲う…。
2人もデスを覚悟していたその瞬間…
「守った…。回復だけ。サナタリア」
「了解です。ささお二人さん!おまたせしましたのです!」
2人の前に突如現れたでかいバリアのような物が猫型モンスターたちの攻撃をことごとく弾く。目にも止まらない速さでぶっ飛んできたその大柄の男と女の子は2人を守るように全力で技を発動した。
「行くです!【若木達のステップアップ】!」
「【不動球】」
いきなり地面から新しい木々が生え猫モンスターを襲い上に高く突き飛ばす。さらにヒカリ、アキアカネ、ダイチ、サナタリアを囲む球状のバリアが展開され…
「はいです!体力回復薬と魔力回復薬です!あ、お代はツケといてあげますよ。らしいです」
手渡された回復薬を見つめ、サナタリアを見つめ、もう一度回復薬を見つめたアキアカネはそこで思考を復活させる。
「ちょっ!?これバカたかいやつじゃないですか!?受け取れませんよ!!しかも二人共に一本づつとか!?」
回復薬系統でなおかつ1回で全回復するようなアイテムはRBGにおいてかなり高い。それが4本というのは普通に200万Gほどである。ちなみにユキが即決で買った博物館よりはこれでもはるかに安かった。
2人に当然そんなに所持金があるはずもなく。
RBGのG(ゴールド)はオーブ回収の被ったもので1000G。闘技場の公式戦で勝つと500G。遭遇戦で相手から奪うと相手所持金とランク差により価格が決まる。つまりとんでもなく集めにくいのだ!
ユキのように、突撃!1000人切り!みたいな馬鹿なことをしない限り滅多に集まるものでは無いのである。
プレイヤーが戦闘せずに稼げるGも、自身の作ったプレイヤーメイドの装備やアイテムを売ることだけであり、その素材や、露店代、経営費や色んなところで使うためそこまで残らない。
「だからです。今度なにかあった時に返してもらうです。行動で。だそうです」
サナタリアは腰に手を当てあたかも寛大なのだぞぉ〜。と少し控えめな胸をはりながら2人に言う。ちなみに全部リンがそう伝えてくれとサナタリアに言った文言であり。
そしてサナタリアの視界にはその1字1句違いのないカンペが表示されていたりする。
つまりちょっと残念な子だ!!
「はやく…」
「…っ…」
そのダイチの一声がアキアカネの迷いをさらに追い込む。こんな高いものを飲んで何をいったい要求されるのか。そんな不安が彼女の中で渦巻いていた。
そんなアキアカネを見てヒカリは無表情のまま回復薬を見つめる。
そして無言で回復薬を飲み始めた。
「ヒカリ…」
「飲む。ニワトリ、危ない」
「っ…わかった」
そうだ。こうしているあいだ2人は雑魚猫モンスターたちの相手ができていない。つまり鳥に負担をかけていることになる。
せっかくのイベントだ。これはゲームだ。だから全力でやりたいことを優先して何が悪い。
「んッ。…ゲームなのに一気飲みで少し気持ち悪いとこまで再現しなくていいのに…」
体力回復薬と魔力回復薬を一気に飲み干したアキアカネは、その目に確かな意思と楽しみを全力で挑みに行くために緩んだ顔を浮かべ槍を構える。
「ヒカリ!」
「ん」
「こいつら一匹残らず駆逐する!!」
「ん。…アキ、流石に、口悪い」
「ええい!ままよ!突撃やぁ!!」
何かいろいろと吹っ切れたアキアカネとそれを眺めるヒカリ。二人共にその顔は、ほんの少しだけ笑っていたような気がした。
「あれ?私たち、空気なのです?」
「サナタリア…はやく」
「は、はいです」
この後この4人は本当にあたりの猫型モンスターを駆逐する勢いで討伐していく。前衛のヒカリとアキアカネにサポートもできる前衛のサナタリア。そしてその3人を守る鉄壁を誇るダイチ。
その4人に立ち向かう猫モンスターは対して未だにデバフが着いているためなすすべがなかった。
強いて言うなら、この後魔力回復薬をもう一本づつ渡された時。2人の顔が死地に赴く顔だったことだけが、モンスターたちの功績と言えよう…。的確にお財布にダメージを受けた2人であった。
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