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"285"  スズメの音色は宿木の子守歌

公開日時: 2023年3月14日(火) 06:42
文字数:2,527

「「カワイイ!!」」




 丸っこくて大きくてふわふわで丸っこいスズメ。いかにも抱き枕にしてくださいと言わんばかりのそのモフモフ加減に2人は思わず叫ぶ。


 スズメはそんな二人を見て可愛らしくも首を傾げた。



「あれがボス?」


「たぶん」


 ボスの威厳という雰囲気皆無なフォルムを持ったスズメ。ただし大きさだけなら立派なボス級だ。


 


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チェインクエスト:今一度羽ばたきを手に入れて


クリア条件:「スズネ」の撃破

参加者:アキアカネ、ヒカリ

報酬:結界突破


集団報酬:結界解除

集団クリア条件:合計50回の「スズネ」の撃破


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 2人の目の前に現れるクエスト画面。書いてある内容はほとんど理解できないものの、2人ともとりあえずあのスズメ。もとい「スズネ」を倒せばいいことは分かる。



「ヒカリ」


「ん。とりあえず。倒す」

 


 2人は武器を構えて、弾幕を何時でも放てるように構える。が…。



「あ、あんなに可愛いのに!!攻撃したくない!!」


「それは。同意。でも、やらないと。クリア出来ない」



 そんな二人を見て、スズネはそのモフモフな巨体を2人に向ける。



チュン!!


 ひと鳴き。そのひと鳴きで暴風がごとく風が2人を襲う。


「うわっ!?」


 2人に襲いかかる暴風はさらに、あたりの木の葉を鋭い弾幕のように降り注がせる。大きな葉っぱは槍で弾くとかなりの手応えとともに「ガキンっ!!」ととても木の葉だとは思えない効果音を撒き散らした。


「当たったらやばめ!」


「ん」


 何とか暴風に抗いつつ、木の葉を躱しながらスズネに弾幕を差し向ける。スズネは別段躱すことも無くその弾幕を体に受けた。たしかに減るHP。ただしそれもほんの少しだ。


「ヒカリ!使うよ!!」


「ん、私も」


 アキアカネは槍を構えてスズネを狙う。


「【万残槍(アフターIアタック)】と!【残進槍(アドバンスIアタック)】」


 穂先が発光しだし、振った軌跡に残る。さらに〔設置〕された弾幕が急速に進み出しスズネを穿つ。



「ん。【万残拳(アフターIファイト)】」


 ヒカリも装備しているグローブが発光、拳を振り抜き弾幕が次々と放たれた。



 動きはそこまで早くないスズネだが、弾幕を食らわさせてもHPはさほど減らない。さらに近付こうにも暴風が邪魔をして上手いこと近接戦に持ち込むことは出来ない。


「硬い」


「どっちかって言うとやわらかそうな見た目なのにね」


 何とか攻撃を続ける2人。スズネ自体の攻撃パターンは単調で、何とかHPを少しづつ減らしていくことは可能だった。心配なのはMPの残量だが、2人ともこのスズネが本日ラストバトルだろうと考えて遠慮なく使い果たす勢いだ。


 そうしてスズネのHPが3分の1程度になる。すると暴風がやみスズネは可愛らしい鳴き声で鳴き声をあげた。


チュンチュン!!


「「!?」」


 2人の動きが一瞬だけ止まる。


「なに?!」


「たぶん、〔咆哮〕」



 ヒカリの予想通り、スズネの〔咆哮〕。咆哮とは似ても似つかわしくない可愛らしい鳴き声だが、スキルとしての効果は発揮され、2人はほんの一瞬だけ状態異常:恐怖になる。

 すぐに抜け出せたがこれを連発されると厄介だ。それに…。



「あ」


「げ。…また?」


 その鳴き声に呼ばれるようにあたりの木の葉の隙間から現れるキツツキの残党。全てを倒し着る前に突破してきたツケがここに来て牙を剥く。



 ちなみに、キツツキの正式名称は「ヅツツキ」だったりする。


 暴風がやんだ代わりに、またもや全方位からのキツツキ攻撃。2人は弾幕シールドを盾替わりに何とか耐え凌ぐが、スズネはさらにひと鳴きすると。


チュン!


「うっ!?」


 動きが止まり、さらに狙い済ましたかのように同時にキツツキ達がアキアカネを攻撃した。


 急所には当たらなかったものの少なくないダメージを負うアキアカネ。HPは残り半分程度まで減ってしまっている。

 ヒカリがアキアカネを守るように弾幕を〔回す〕即席シールドを作り上げ、そのすきにアキアカネは体勢を立て直す。


チュン!


「ん!?」


 しかし、今度はヒカリがスズネ本体からの攻撃に吹き飛ばされた。



「ヒカリ!!」


「ん!!」


 ヒカリは崩れた体勢から何とか地面に着地、そのまま拳を自分の後方に振り抜き。軽い〔衝撃波〕を飛ばす。その衝撃波の威力を使って自己の吹き飛ばされたエネルギーの方向を無理やり反転させ、さらにスズネに急接近して行く。


「行動パターン。変わった。これで本体。当たる【直進拳(ストレートIファイト)】!」


 そのまま肉薄することに成功したヒカリ。繰り出した技が一点集中一撃をスズネに叩き込むことに成功した。


チュン!?


 これにはたまらず仰け反るスズネ。見ればHPはかなり削ることに成功していた。

 スズネは何とか後ずさると、今度は翼を広げて飛び立つ。


「飛んだ!」


「鳥。だから」


 重そうな見た目とは裏腹に空へ躍り出たスズネは空中からキツツキに指示を飛ばす。



チュンチュン!!



 横一列に整列したキツツキが2人に色んな方角から波状攻撃を繰り返す。

 しっかり見定めれば回避は出来るが、今度はスズネへの攻撃手段が見つからない。


「飛べないのがきついね」


「ん。弾幕。削りきれない。かも?」


 2人ともMPもそこそこ消耗している。もし弾幕で攻撃しても先にMPぎれを起こす方が早いと判断した。


チュンチュンチュンチュンチュン!!


 それからもキツツキは色んなパターンで2人に突撃を繰り返す。


「これさ。キツツキ全部倒したら降りてきくる?」


「やってみる?」


「うん!」



 一旦、キツツキを殲滅することにした2人。MP削減のためできるだけ近接武器で物理的にたたき落としていく。

 槍でなぎ払い、グローブでそれぞれの個体を正確に撃ち落としていく。


 10分程で全てのキツツキを倒し切ることに成功した。


 するとスズネは鳴き声を止め2人目掛けて突撃を仕掛けてくる。



「ここだね!」


「ん。決める」


 2人はそのまま真正面からスズネを受け止めるべく武器を構えた。



チューーーン!!



「【打点撃(ポイントIパンチ)】」

「【打点突(ポイントIピアス)】!」



 両者突撃。深々と突き刺さる2人の攻撃とそれを頭突きで拮抗するスズネ。



結果は…。










チュン…。




 消滅するスズネ。その場に残った2人はそのままハイタッチして勝利を掴んだ。








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