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"291"  霧の中で

公開日時: 2023年3月22日(水) 03:47
文字数:2,085



 濃い霧の中、見えない陸地に違和感を感じた2人。その途端、2人の目の前に現れたクエスト画面がその違和感を肯定した。



「とまぁ…、どうにかしなくちゃいけなくなった訳だが…w」



「これの謎って言われても。なにか探せばあるのですわ?」


「さあ?wとりあえず色々動いてみるしかないだろ?」



 2人とも情報は限りなくゼロに近く、わかるのは陸にたどり着けないこと。濃い霧が立ち込めていること。下は湖だということくらいだ。


 そしてスカイスクランブルイベントの現在。水泳系のスキルは発見されていない。つまり水中に入る=死だ。


「まさかこの下に原因があるとか?w」


「泳げないのにどうやって探すんですの?」


「まあな…」




 2人は一先ず〔地図〕を確かめる。が、当たり前のように地図は湖のど真ん中を現在地として指しており、動いてみても全く微動だにしない。


 しばらく移動しながら探してみるが全くそれらしい反応もなかった。アリアは〔気配感知〕。ハルトは〔熱感知〕のスキルを使いながらだが、いずれも反応がない。


 そのまま数十分ほど探すも全く反応無し。


「やっぱり普通に探したんじゃ見つからないな…」


「…、そろそろ疲れてきましたわ」


 何も変化のない景色が数十分続けばさすがに飽きてしまうのか。アリアは魔力回復薬を飲みながらそう呟いた。一方ハルトは何もせず周囲を見回す。




「…ん」


 と、そんなハルトへアリアは魔力回復薬を突き出した。


「どうせ、魔力回復薬なんてもの持ってないんでしょ?余裕ぶってますが見え見えですわ」


 顔を逸らしながらツンデレ全開である。

 そんなアリアの攻撃にハルトも一瞬こいつわざとか?と思う。一応顔が赤いのでたぶん素でやってるんだろうな…。と遅れながらに納得したが。


 アリアの読み通り、ハルトは魔力をほとんど使うことは無い。剣技の合間合間に魔弾を飛ばす程度でバフ系統のスキルすら殆ど使わないのだ。


 よって、魔力は自然回復で間に合っていた今までと違い。〔飛行〕+〔熱感知〕を継続的に使用していたハルトはすぐにガス欠となったのである。



「お、おう、サンキュー…」



 危うく墜落、溺死寸前だったとは意地でも言えないので、少し濁しながら礼を言うハルト。そんな反応をしたハルトを見て不思議そうな表情を見せた。






「ともかく、このまま続けても埒が明かないな。なにかいい案ねぇーか?w」


「こっちに投げないでですわ…」


「なんだよw。優等生だろ?」


「そうですわね?あなたの妨害がなければもっと優等生でしたわ」


「否定はしないのな…」


 2人は夫婦漫才さながらの会話を繰り返す。



「…、でわそうですわね…。意外とこの湖は入って大丈夫とかないですわ?ハルト、1回潜ってらっしゃい」


「ふむ、いや待て!、それもしダメだった時確定死するからな?」


「じゃあなにかハルトも案を出しなさいよ」



「…、霧が邪魔だから吹き飛ばす…とか?お前〔風〕って使えるのか?」


「時間かければ行けますわ。ただMP空っぽになりますわ…。でも…」



「わかった、あとは俺が面倒見る。全部吹きとばせ!」




 有無を言わせず、ハルトはアリアに命ずる。


「もう!どうなっても知りませんわッ!〔風〕なんてほとんど使わないのに…」



 アリアはその場で停止し、先程回復したばかりの〔魔力〕を全て使う勢で魔力を消費する。



「ハルト!私の真下に陣取りなさい。あと、見えなくても上は向くなですわッ!」


「え?」



 ゲームの仕様で見えません。何がとは言いませんが。




「その風、辺りを拒み遠ざける壁となれ。我は命ず、終わりなき旅時の寄り道を、その性質とともにここへ集いて、不可視の力を束ねれば。不変であり不定形な御身もことを成す。この湖の霧。辺りから消し去り吹き飛ばす」


「なげぇな…」


 アリアはゆっくり唱えこの詠唱だけで1、2分はかけている。


「[贄は我が身纏いし魔力。目指すは水平。どこまでも遠く進みゆき、ゆける限り吹き荒れろ]」


 一区切り。アリアはその手をすっと前に構えた。



「詠唱終わりましたわ」


「詠唱終わったら喋れるのな?w」



「あとは〔技名〕を唱えるだけですわ。名前は何にしますの?」


「え?名前決めてねぇーの?w〔技名〕なのに!?」


「そもそもこれは〔魔法〕ですわ。それに普通の魔法や〔詠唱〕と違って〔大魔法〕。大魔法の詠唱は即席その場で作り上げなければいけないのですわ。つまりほぼ1回きりですわよ」


「へぇ。んじゃ適当に【大魔法「エリアウィンド」】とか」


「いきますわ【大魔法「エリアウィンド」】」


「採用かよw」




 アリアを取り巻く風がその手に集まり、目に見えて凝縮されていく。それはアリアが真上にはね上げることで決壊し瞬く間に暴風を生み出した。


 さながらの台風の強風が全方位から吹き荒れるカオス空間のよう。実際真下にいるはずのハルトですらその場停滞が難しく、1歩謝れば吹き飛ぶか湖に落ちるほど。




 その風が収まった時、あたりは見通しよくなっていた。文字通り霧を吹き飛ばした。

 それと同時に落下するアリア。


「おっと…。重ッ」


「お、重いってなんですの!!そんなに私重くないですわよ!!」


 ハルトに受け止められ、顔が真っ赤なアリアがさらに真っ赤になったのは言うまでもない。

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