「あれ、まじか…」
「ほんとにクリアするとは…」
「無茶苦茶ですわ…」
「あいつ目何個付いてやがる…」
『…は?』
『何今の…?夢?』
『クリア…』
『えっ?…えっ?』
「さすがナユカだね〜」
目の前で起こったことに整理がつかない会場の面々と動画の向こうの視聴者はただただそうつぶやくしかできない。唯一ユキだけがさも当たり前のようにしている中で、次第に歓声の声が大きくなっていった。
そこにミニゲームを終え戻ってくるナユカ。
「おつかれ〜。ナユカ。凄かったよ〜」
もちろん出迎えに現れるユキはとてもニコニコしていた。
「次はユキの番だよ?行ける?」
そう少し疲れ気味のナユカがユキに問うと…
「もちろん!クリアしてみせるよ〜。だから応援しててね?」
「うん」
ナユカをみんなの元に送り届けユキはそのステージへ歩んでいく。
ゲーム内では汗は演出以外ではかかないが、多分現実にある自分の体は汗でびっしょりになっているであろうと少し考えるユキ。
(さあ〜…。ちょっとこれは厳しいぞ〜)
あれをどうクリアしたものか…。真剣に悩んでいた。
(使えるスキルは無し…単純な観察能力と身体能力が物を言う…か〜。まあ、これでも守り人だからね。あとは気合かな〜)
《3…》
目を瞑るユキ。
《2…》
そのまま深呼吸して。
《1…》
ゆっくり息を吐き出す。
《ゲームスタート!!》
そしてユキは目を開ける。その瞳は鋭く、その眼に移る全ての光景を映さんとす。
そうしてユキは前に思いっきり走り出すのだった。
*
「おつかれさまです。ナユカさん」
「ありがとー」
「まさかほんとにクリアしてしまうとは思ってもいませんでした。よくあの初見殺しを躱せましたね?」
「いや、結構びっくりしたよ?なにあれ反則だよ!」
「それで…ナユカさんに聞くのですがユキさんは本当にクリアできるのですか?」
帰ってきたナユカに労いの言葉と疑問を飛ばすビュア。現在もそのまま生配信中であり、視聴者もその疑問を思っているものが多く。その代弁をビュアはしていたのだ。
「ユキは強いよ。私が生まれた中で2番目に強いかな?」
「えっと?ユキさんが強いのは皆さん知ってますが…。これはスキルなしですよ?なかなか厳しいんじゃないですか?」
ワンライフが始まり大きく動き出したユキをナユカは眺めている。しかし、それはどこか遠くを見ているようで、少し含み笑いをしたナユカはビュアに言う。
「違うよ。ユキはゲームの外でも強いからね。前に私を守ってくれたことがあるんだよ…変な人間から攫われそうになった私をユキは素手で助けてくれたんだ。だからユキはスキルがなくてもこのくらい自力で何とか出来ると思う」
唐突に飛び出した情報に困惑するビュアと視聴者にナユカふっと笑う。
「ユキは強いんだよ」
そのまま視線をユキに戻したナユカはそれ以上は語らずただただユキを眺める。彼女の瞳に映るのは今か、それとも遠い過去の記憶か。
その真実はナユカにしか分からない。
*
ユキは大きく動く。それは常に一定の場所には留まらず、まるで鬼ごっこでもしているかのように逃げる。相変わらず激しさを増すその弾幕にユキは方角は変えども前進し、後退は絶対にしない。
要は全部誘導してあげればいいんでしょ?こういう避けげーなら、パターンさえわかってしまえばあとは誘導しながら空いたスペースに体滑り込まてあげればいい。
パターンとしては
0:00
1:00
+
2:00
+
3:00
+
3:30
+
3:45
+
4:00
+
4:15
+
4:30
+
4:38
+
4:45
+
4:58
と私は予測している。問題は4分からの情報が若干不足気味なところか。4:45以降はまだ何かあるかもしれない。ちなみに軌道だけなら私狙いか、私の周囲に飛んでくるかランダムかの3種類しかないとも言い換えることが出来る。なので後退はしない。そんなことしたらこの3種類の弾幕に囲まれることになる。
私狙いの魔弾は逆に言ってしまえば動いていれば当たらない。全て後ろを通過していくだけた。あとは前後から魔弾が来たら横にズレればいい。
そうすれば退路の確保はできる。常に余裕をもって回避に専念しつつ前に進んでいけば当たらない!それが属性を帯びても同じ、私狙いの魔弾は動いていれば当たらない。進行方向を妨害するような弾幕も減る。問題はここからか。
4:45
何が来る?
スパッ!!
斬撃!!横から来た!ナユカに習ってスライディング!次!
ん〜!?引っ張られるッ!?て周りの弾幕もそれに引き寄せられていくように!!ブラックホールかなにかそんな感じの物か!?
吸い込まれないように直進前から吸い込まれに来る弾幕は気合いよけ!!
ピンッ!キッキッ…
今度は…
「物理的な爆弾んんんんんーーー?????!?」
こっちに来るなッ!んりゃァー!
ガキッ!!…ドカーン!!!!
よっし!完璧なシュートッ!
んで、最後の全方位弾は…
全ての着弾点はここ?中心?
…発射されるタイミング的には…
「上だァ〜〜!」
タイミングを合わせてジャンプしたユキは少し上昇。ジャンプの頂点で読み通り弾幕がピタッと止まり消えていった。
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