「ようこそおいでくださいました。米嶋御一行様」
しばらく待合室で待っていると、因幡さんが部屋にやってきた。
「護衛が付くとは聞いていたが…。因幡さんが?」
「はい。機内での護衛兼、案内役を努めさせていただきます」
「本部長直々に?」
「もちろん。ほかのものだと役不足かと思いまして、一応、やるべきことは全て終わらせたので私が地球から離れても問題ありませんよ。何かあれば副部長が何とかするでしょう」
防衛省日本地区本部長。最近色々防衛省は忙しいと聞いていたけど…。
「まあ、いいならいいが…。これ以上ない護衛だろうな…」
「お褒めに預かり光栄です」
どことなく、営業スマイルを崩さない因幡さんを、溜息とともにどこか不安そうにするパパ。よく分からないけど、案内してくれるのはありがたいよね。
「さあ、皆さん早速、港の方へ向かいましょうか」
そんなパパは置いといて、因幡さんは私たちを案内してくれた。軌道ポータルがあるこのビルもなかなかにでかいからね。案内がないと100パーセント迷子になる自信があるよ。
そうしてしばらく因幡さんについて少しお高そうな雰囲気の通路に出た。さらに少し進むと、目の前のガラスの奥に大きなポータルが見えてきた。近ずいて行くと、そのガラスの向こう側は日の光が差し込み、ビルの中央に円形の吹き抜けのような感じになっている。そのさらに中央には大きめのポータルが。さらに周りには小さなポータルが並んでいた。
「あちらは、資源や物資用のポータルになります。比較的大きな物はこちらを、少量かつ小さい物の場合はその周りにある小さいポータルを使います。一般の方々が使うポータルはここから少し離れて、ちょうど向かい側になります」
初めてポータルを使うので、ポータル自体は初めて見たけど、さっきからポータルには、大量の荷物や物資が消えたり、突然現れたりを繰り返していた。また、物資は現れると、突然浮かび上がり、どこかに運ばれていく。すごいね…。
私たちはその人間用のポータルを使うのかな?と思って因幡さんについて行くと、途中で、中央のガラス吹き抜け通路から抜けて、そのまま向かい側ではなく、別の方角へ進み始めた。あれ?
「米嶋御一行様には一般とは違うポータルをご用意しております。花恋様はもちろん、勇人博士も那由花様も、一般ポータルでは色々騒がれてしましますからね」
「助かるよ」
一応、ママは王女だし、パパは有名人だし、私とユキもアイドルだからね…。こう見ると確かに一般ポータルなんて使えば騒ぎになりそうだ。
「さて、こちらになります」
そうこう考えているうちに、目の前に現れたのは、さっきの資源用ポータルとは違い、見たところ普通の部屋のような…。ただし、家具とかは無い。
全員がその中に入ると、因幡さんがよく分からないボタンを押し、扉が自動でしまった。
「それでは、テレポート致します」
そして、そのまま因幡さんはもうひとつボタンを押すと…。
「ご到着しました」
ん?到着?まだボタンを押しただけで何も変化が無いけど…。
因幡さんはそのままもう一度ボタンを押し、今度は部屋の扉が開く。すると、そこはさっき来た道とは違う通路が広がっていた。
え!さっきの間にテレポート終わっちゃったの!?もうちょっとグワングワンしたり、おっとっと!!ってなるかと思ってたのに!
「さすが要人用だな。違和感の欠けらも無い」
「一般だと少しうるさいですからね。こちらの方がエネルギーを使いますが、安全で静かです」
という会話の元、推測するに結構良いポータルを使わせてくれたらしい。初めてだから分からないけど。
「さあ、皆様こちらへ。既に準備は整っていますよ」
そして、またもや案内されながら私たちは、進む。
ここは宇宙港。宙の玄関口にして世界最古の宇宙港。人はここから空に羽ばたき、人類を次なるステージに進めた港。今の太陽系へと歩みを進めた人類が、テラホーミングに使った歴史の産物。
過去の悲劇と、生き残りをかけた1000年以上も前からある施設。本来なら赤道上に作る前提だった衛星軌道エレベーターを、日本に作り上げ地球から外の世界に人類を逃がして。
様々な宇宙船が飛び交い、飛び立つ。
地球から遥か上空。同期軌道からさらにその上にあるここ。宇宙港に私たちは来ていた。
作者コメント
静止軌道やら衛星軌道やら、同期軌道やら…。色々ありますが、本来なら赤道上に衛星軌道エレベーターは出来るのではないか。と言われています。実際に作る計画があるそうです。そんなものがなぜ、赤道上ではなく、危険性も、設置も複雑になりかねない。日本上空に作ったのか…。作らざる追えなかったのか?
未来の地球に何があったのか。そもそも、なぜ作中で日本という国名が出てこないのか。
なぜ、木星圏でも、作者は「日本語」で物語を進行しているのか。(もちろん小説だからでもあるけど…)
実は全て、理由を元に作っております。
ここに来て、設定に公開している年表が、なにかヒントに…、なるかも知れませんよ?
ゲーム「RBG」。
リアル「何が起きているのか」。
過去「何があったのか」。
この3つが、この物語で繋がっていきます。たぶん…。
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