「空飛んでた猫達が次々落ちてきたぞ!どうなってる!?」
「なんか弱ってるぞッ!やれやれっ!」
場所は変わって最前線。今も尚、戦闘が繰り広げられるそこには数多くのプレイヤーと猫が空中、地上でバトルを繰り広げていた。
が、しばらくして、いきなり空を飛んでいた猫オリビエシリーズがいきなり〔飛行〕を切ったように。いや、奪われたように落下してきたのだ。
猫ということもあり、かなりの高高度からの落下にもダメージを受けながらではあるが耐え抜いたようである。
ほとんどのオリビエシリーズが落下の衝撃で部位使用不可の状態異常を受けているようで、落ちた傍から動くことが出来ない。それを見たプレイヤーはチャンスとオリビエシリーズを次々に粒子に変えていった。
その様子を本部で聞いたセリエルはすぐさま確認のメッセージを広場経由であの二人に送る。
二人に見るように言っておいたコメント広場には本人たちからこう返って来ていた。
原因。鳥。以上
もうちょっと情報を落とせと声を大にして言いつけてやりたいが、今ここでこんなことをしても仕方ない。どうせ近くにいたあのニワトリの仕業だろうとして自己判断する。
「動画。回ってますよね?」
「はい、バッチリ」
そんなセリエルの後ろでウキウキルンルンで1人だけハイテンションなビュアが答えた。
「総員!伝達です。どうやったかは検討もつきませんが、猫型モンスターで飛行してくる厄介な敵。オリビエが現在地面に全て落下しています。優先的に見つけたら殲滅してください。その際あくまで弱っているだけなので油断しないように!」
生配信越しに見ているであろう参加プレイヤーに簡潔に連絡しつつ、オリビエシリーズの優先的撃破を目指す。どうやったか分からない以上、再びオリビエに飛び立たれる前に数を減らしておきたいという魂胆だ。
それを知ってか知らずか。最前線にいる鳥モンスターも優先的にオリビエシリーズを攻撃しているように見える。
さらにプレイヤーは空には敵が居ないため、地表に降り、剣で攻撃をし始めた。
これは〔飛行〕のスキルによって減っていくMPを極力抑えるための戦術である。こうした長い長期戦の戦いに慣れてきたプレイヤーが多いのか、それとも今この戦闘で誰かがそういう知識をバレまいてくれているお陰だろうか。
プレイヤーが地表に専念することでさらに前線を押し上げつつあった。
一旦、制空権を鳥モンスターに任せる形で戦場を優位に進めている。
もうそろそろ時刻は10時程だろうか。太陽がかなり上のほうにまでのぼっていた。
🐱
「はぁ〜…、せっかく人共が結界個体をフルボッコにして弱らせてくれた思うたんに…、はやすぎひんか復活。しかもちゃんと大樹のてっぺんに陣取りやがって…。ほんまめんどくさいわー。さっさと浮島開け渡せばええやん?しかも人と手を組むとかプライドドブネズミと変わらんやない?」
オリビエシリーズの背中に乗りながら愚痴を吐き飛ばす白い猫。ここは浮島の縁であるためスズネの貼った飛行阻害の結界範囲外であった。
ただし結界があるということはそのまま行けば落下してしまうため。現状全ての猫型モンスターは陸路を使っている。
「でかい図体がこっち目掛けて飛んできょーるわ…」
歩くのがめんどくさかったのもあるが、白猫は一旦眷属たちを仕向けつつ進行を止めている。その理由に今でも遠くに見える空飛ぶチキンがこちらに来ているためである。
そもそもニワトリは飛べないのになんで飛んでんねん。なんて言うもはや愚痴とも言えない文句まで1人でブツブツと吐き続けていた。下の白猫を載せているオリビエは可愛そうである。
たまに気を使ってか、あるいは無視されたと言われないためにか、にゃー、にゃーーー、と相槌を打ち続けていた。…目は完全に疲れきったそれである。
「さて、言いたいこと言うたさかい、そろそろ準備しようかね〜」
そう言いながら白猫はいつの間にかオリビエの背中から霞むように消えてった。
…残されたオリビエは小さく安堵の息を吐いていた。
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