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R×2 60  夜は開け日は昇り其の酉は妖を以て人を照

公開日時: 2022年9月8日(木) 11:59
文字数:2,054


 突発的に始まった緊急クエスト。全員が理解できず、ただ何が起こるか身構えることしか出来ない。ランプさんとカルマさんも、強制的にパーティーを組まされた私たちに攻撃はできないとそうそうに諦め、現在はこちらと一緒に辺りを見回していた。





コケぇぇぇぇェェェエエエッ!!




 そして何処かからか聞こえてくる咆哮…。咆哮?鳴き声?というか。こけぇー?



 私たちの上空にいつの間にか飛んでいた大きな白い…。




「「あ、カワイイ鶏!」」




 やっぱりニワトリだよね?こけぇッてニワトリだよね?


 しかもかなり大きなまるまるとした体。フワフワな羽根にトサカ!!え?あのもふもふ触りたいんだけど。


「ほう?なかなか久しいメンツがおるこっこ」


「「喋ったッ!!」」


 いかにもニワトリのボスですよー?といった風貌をした巨大なニワトリ。まさか喋るとは思っておらず、ビュアさんと私は思わず口から驚きの言葉が漏れる。


「ん。まさかこのタイミングで再会。予想外」


「ですね?なんのようです?私とヒカリは試練をクリアしたはずですよ?」


「もちろん、ソナタ等のことは覚えておるこっこ。今回は我は呼ばれた側こっこよ?」


 そして、状況についていけない私たちを置いて、アキアカネさんとヒカリは知り合いのようで?

 ニワトリの知り合い?なんじゃそりゃ?

 一旦考えても、思考が堂堂巡りするだけなのでやめておこう。それより…。


「ふ、2人とも知り合い?」


 それでもやっぱり気になるので聞くことにした。好奇心ってすごいね?いや、知ったところで何も変わらないんだけどさ?


「ん。知り合い」


「ある意味。忘れるわけない相手ですね」



 2人はニワトリだと知ると普通に戦闘態勢を崩し、アキアカネさんは露骨に苦笑いしていた。ヒカリさんは無表情。


「ん。何の用?」


「相変わらずソナタは硬いこっこ。お友達できないこっこよ?」


「いや、できた」


「ならいいこっこ。さて、我の用事はもちろん。ヒカリ。アキアカネ。ソナタ等2人に用があるこっこ」


 そんなことを流暢に喋るニワトリは、私たち全員を見てこう言った。


「そして今。ここにおるソナタ等にも。資格があるようなのでこっこ」


「私たちも?」


「全員か?」


「全員こっこ」



 へー。てことは私も資格とかなんかクリアしちゃってたのかな?



「ちなみに。条件は?」


「こけぇー。まあ、特別にいいこっこ。条件は知名度、人数。そして一定範囲内の煌びやかさだこっこ。我はキレイ好きこっこ〜」


 知名度。確かに全員そこそこ知名度がある。ユキは言わずもがな。私や、ビュアさん、ヒカリさんやアキアカネさんも現在進行形で生配信されているので、認知度は高い。

 ついでに、さっきまで戦う気満々だったランプさんやカルマさんだが、確かこの人たちもユキと近しいランクの人達だったはずだ。

 つまりそこそこ知名度はあって当然だ。うん。納得。


 そして人数。今私たちは7人。人数はまあ、まあ、私たちがリリースで固まっている時など多々あったはずなのですぐにクリア出来る。


 で?たぶんこれが1番条件として厳しい。「一定範囲内が煌びやかであること」。私たちが焚き付けたせいでたくさんのプレイヤーがこの場に集まり弾幕を張っている。今は落ち着いているが、先程までは全面が天の川のように無数の弾幕がキラキラしていたに違いない。


「なるほど〜。で?鍛錬って何するの?」


「もちろん戦闘こっこ。ただし、今回は前回よりも激しくいくから覚悟するこっこ」


「黒龍戦みたいな感じだよね?結局」


「たぶん、そうかと」


 私はビュアさんに聞くと、ビュアさんもそうだと思ったのか、肯定の言葉が帰ってくる。


「おお。確かにそこのソナタ等は龍の気配がするこっこ」


「わかるの?」


「もちろんこっこ。龍と、我は同じ存在だこっこよ?」



 え?そうなの?でも言われてみれば緊急クエスト出し、始まり方は似てたから、そう言われるとそうかも?と思わなくもない。でも決定的に違う点がひとつ。



「黒龍…。喋らなかったよね?」


「意外とシャイだからこっこ。龍の奴は慣れれば結構アクティブにグイグイいくこっこ。喋らなかったのは照れ隠しこっこね。他にも喋らないこっこはそこそこいるんだこっこ。犬っころもそうこっこね」


慣れればアクティブ…。確かにアリアさんのとこに現れてからはめちゃくちゃ元気いいね。ただシャイか?私たちに咆哮とブレスかましたのはもしかしてツンデレてきな?まさか〜。

 と言うか似たようなので犬もいるのね?




「さて。そろそろ始めるこっこよ。我は酉。朝は日の訪れ、日を告げる我は火を纏う。ソナタ等に与える鍛錬は妖。我が名は鳳凰フェニックス。その日を以て先を照らす!」


 ニワトリが段々と赤く。そのうちしばらくして辺り一面が明るくなる。それは弾幕や光の魔法などという生ぬるいものでは無い。さっきまで浮かんでいたはずの二つの月は姿を隠し、その世界は朝を迎えた。え?今夜なのにッ!!私たちの上にはギラギラと輝く太陽が登っていた。




こけぇぇえええええええええぇ!!!!!




 そしてそのニワトリは日を背負いその羽根を燃やす。


 フェニックス。それが今、夜の世界に舞い上がった。



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