その後難なく試合を進めていくことが出来た。デュオの部でも参加チームは少ないとはいえ、なかなかの回数を勝ち抜きし続けなければならない。今何回戦目だっけ?1試合ずつの試合の合間の間隔はそこそこ長く。午前中で2桁回数試合をしたかな?程度ではあるが疲れるものは疲れる。
1試合ごとにHP、MP、アイテムなどは試合前の状態に戻るが、いつまでもこの緊張感の中集中力を維持し続けるのはなかなかの困難である。
ただ…
「う〜ん、やっぱり初めの人達以外はみんなそこそこパターン組んでたら余裕だね〜」
この様に、圧倒的に強いチームもそこそこな数存在するのでそういったチームは精神的な疲労は少なく、また試合時間も短いのである。
大体、そういったチームは1000位以上のランキングの人が1人、あるいは2人いるいわゆる上位勢の人達だ。
ひと試合ごとに全体のチーム数が半分減るので、だんだんとこれからは試合の待ち時間も短くなってくるだろう。
私たちの目標はもちろん優勝なので、全勝が必須な訳だがユキ曰くそんなに気をはらなくて良い。との事だ。
こんな感じでまあ、そこそこまあまあゆっくりしながら行ける私たちはかなり消耗も少なくこの先の試合も乗り切って行けそうだった。
*
「ナユカ〜、次少し注意しなよ〜。多分初戦の人達より強いよ〜」
入場しだして直ぐにそんなにことを私に言ってくるユキ。一体どこでその判断をしているのかまるで分からないが、ユキがそういうからには間違ってはいないのだろう。私は今までの少し緩んでいた気持ちを少し引き締める。
『わかった。何かあったの?』
ユキに〔念話〕で返事をした後に相手の方を伺う。特にそれと言って今までのプレイヤーと変わりはないと思うんだけど…。
『ん〜、なんて言うか〜…。経験則に元ずいた…感?』
本人もよく分からないのね…。まあ、そういう感もユキの場合はバカに出来ないので素直に警戒していこうと思う。
『どうする?〔魅力〕は使う?』
『いや〜、まだ大丈夫かな?私の〔妖力〕で十分倒せると思うし〜、それにまだ今後ぶつかる上位の奴らに知られたくないからね』
なるほど、確かにもっと上の人達と当たった時に切り札として使えるならそれに越したことはないね。
『注意しないといけないのは〜、相手のスキルかな〜?ナユカの〔スーパーアクセル〕みたいなレアリティ高くて効果も尖っているスキルとかが特に危ないから、予想外のスキルだと初見殺しの可能性も有るからね〜』
『了解!』
そっか、確かにそんな〔スーパーアクセル〕みたいに尖ったスキルが相手にもある可能性が出てくるのね。確かに危険だ。瞬間移動とか?影分身とかされたらさすがに初見はビビる。
〔スーパーアクセル〕も大概ぶっ壊れてるけどね!
だって、めちゃくちゃ早くなるもん。しかも速度だけじゃなくて、移動に関わった行動に限って言えば反射能力とか。旋回能力も地味に上がってるって言う…。これだけでもしかして勝てる?
そういえば、同じく黒龍討伐報酬の黒のオーブをゲットしたアリアさんとかハルトさんとか、ビュアさんとかは何のスキルをゲットしたんだろうね?後でこっそり聞いてみよう。
《スキルオープン》
『あ、あと〜、今回は「雪女」で行くからさっきみたいに私が上。ナユカが妨害じゃなくても大丈夫だよ〜』
あー、なるほど。確かに「雪女」の時はもう既に会場中冷えてるしユキだらけだもんね。
あれ?でもそうなると、ユキってわざわざ上取らなくても温度下げれるんじゃない?なんでわざわざそんなことしてるんだろ?
『じゃあどうしようか?私もユキも突っ込む?』
『ん〜、それでいっか!』
いいんかい!!雪山とか出す気無いな?アレ結構タメいるから私がまた護衛と妨害かと思ってたんだけど。
「じゃあ、やろうか〜。【あなたの美しい命を凍らせましょう】」
「うん!美しい弾幕の華を【君と咲かせよう】」
*
では…。まず結果から言おう。
結局この試合は2人の圧勝であった。というのもそもそもユキの「雪女」スタイルは、〔妖力〕により観客や相手のイメージを元にしてユキの力が強化されるのである。昨日の大暴れ以降、未だに再生される公式サイトのユキの試合は未だ留まることを知らなかった。
何が言いたいかと言うと、昨日よりも知名度がアップしたその能力があっという間に会場中を凍りつかせたのである。これには発動した本人も目を点にして、「へ?」と、とぼけていたのをナユカが確認していたので間違いない。ユキ本人もまさかここまで強化されるとは思っていなかったのである。
回避行動も咄嗟のことで遅れてしまい。一気に凍っていく会場に巻き込まれた相手は哀れ。何もすることなく敗北が決まってしまった。
凍ったのは会場だけでなく。観客や実況も空気が凍ってしまっていたのは言うまでもない。
ユキの化け物っぷりに、その次の試合相手は棄権したほどだ。その後も何とか一矢報いてやろうと試合に挑むプレイヤーは多くいたが、その尽くが無惨に散っていった…いや、砕けていった。
最後の方はナユカは変身すらしなかったので疲労もなし。唯一あるとしたら、ナユカはこう思う。
「あれ?これ。私いる?」
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