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(三人称)
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漆黒の世界で、ルシフは全てを見ていた。
(ふーん、パドお兄ちゃん、犬っころやっつけたんだ)
幼き日の桜稔の姿のまま、ルシフは邪悪に笑う。
(ま、ザマアないよな。あの犬っころも)
この世界の『闇』。
神と相反して、世界を滅ぼす存在。
ルシフをこの世界に招き、『闇』の眷属とした化け物。
(これで僕が、名実ともにこの世界の『闇』か)
そう思うと笑えてくる。
まさか、神によって召喚され、神によって力を与えられた自分が、世界を滅ぼす側に回ることになろうとは。
(大神、お前の思惑も外れたね)
自分が生まれてからの500年余りを思い出す。
いい思い出などほとんど無い。
多少なりとも楽しかった思い出といえば、神に力を与えられこの世界でそれを奮った数年間だろうか。
神に祝福された勇者と人々に崇められるのは悪い気分ではなかった。
もっとも、実際のところは「勇者様」と体よく祭り上げられただけだったわけだが。
ルシフは目を瞑る。
そんな必要は無いが、なんとなくだ。
ルシフの意識の中に、リラにまたがったパドが『闇の女王』へと向かってくる姿が映る。
(いよいよだね。パドお兄ちゃん。決着を付けよう。存在と滅び、神と闇、生あるものと滅びに向かうもの、そして、ボクとパドお兄ちゃん、それら全ての戦いの結末はもうすぐだ)
とはいえ、はたしてパドは自分の期待に応えてくれるのだろうか。
神が自分に与えた祝福と比べれば、200倍の力と魔力など大した物ではない。
まともに戦えば――いや、戦わずとも、ルシフの勝ちだ。
(ま、そんなつまらないことしないけれどね)
さあ、おいでよパドお兄ちゃん。
ボクは大歓迎さ。
キミがボクを許せないように、ボクはこの世界が許せない。
だから、戦おう。
だから、決着を付けよう。
世界全ての命運を賭けて。
ルシフは、今心からパドの来訪を待ち望んでいた。
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