神様、ちょっとチートがすぎませんか?

「大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!!」
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147.勇者と闇

公開日時: 2021年3月4日(木) 13:31
文字数:1,882

キダンの剣は僕の服だけを斬って止まった。


「……どういうつもり?」

「簡単に終わったら、つまらないだろう?」


 尋ねる僕に、キダンは余裕の表情。

 実際、余裕なのだ。

 今のキダンの動き、僕は目で追うこともできなかった。

 あのキラーリアさんの動きですら、ここまでではない。


「くっ!!」


 僕は光と闇の剣をキダンめがけて振り下ろす。

 どういうつもりかは知らないけれど、動きを止めたならチャンスだ。


 だが。


「無駄だよ」


 そう言うと、キダンの姿は再び消えた。


「こっち、こっち。遅いよ、パドお兄ちゃん」


 背後から声が聞こえ、僕はハッと振り返る。


 ――どうなっている!? 幻覚か?


「もしかして、幻覚かなとか思っている?

 残念でした。単に全力疾走しただけだよ」


 そういうと、キダンは再び消え、今度は僕の首根っこに彼の剣が突きつけられた。

 僕の首の皮がほんの少しだけ斬られ、ひとしずくの血液が流れる。


 ――うそ、だろう?


 今のは少しだけ見えた。

 確かに幻覚じゃない。ワープしたわけでもない。

 単純に走って僕のそばに接近しただけだ。

 信じられないようなスピードで。


「くそっ」


 僕はやけっぱちのように光と闇の剣を振り回す。

 もちろん、キダンはこれもあっさり避ける。


 ――ダメだ、動きが捕らえられない。


「言い忘れたつもりはないんだけど、俺は強いんだよ」


 ダメだ。

 立ち止まっていては勝ち目がない。


 僕は200倍の力を全開にしてキダンに向かって駆ける。

 キダンに闇と光の剣を次々に繰り出す。


 だが。

 ヤツは全く動じた様子がない。

 僕の剣を、あえて紙一重で躱してみせる。

 本当はもっと余裕で避けられるくせに遊んでいるのだ。


「ほらほら、パドお兄ちゃん、遅いよー」


 気がつくと、キダンの姿は桜稔の幼少期の姿に変わっていた。


「ふっざけんなぁぁぁぁ!!」


 僕はさらに光と闇の剣を振るうが、むなしくくうを切るばかり。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 僕は荒い息をつく。

 一方、キダンは余裕顔。


「あーあ、ガッカリだなぁ。パドお兄ちゃんならもっとボクと戦えると思ったのに」


 稔の顔でキダンは頬を膨らませて不満顔。


 ――くそっ。

 ――完全に遊ばれている。


 200倍の力と1000倍の力。

 問題なのはそれだけじゃない。

 そもそも、キダンは何年も戦い続けたのだ。

 それに対して僕は実戦経験も劣っている。

 しかも、先ほどから光と闇の剣が僕の魔力をガンガン吸い取っている。


 ――ダメだ、このままじゃ勝てない。


 その時だった。


「パドー!!!」


 叫び声と共に、現れたのはドラゴン形態のリラ。

 そのまま、口を開け、キダンに噛みつこうとする。


 だが。


「無駄だよ、リラお姉ちゃん」


 キダンはにっこり笑うと、リラの鼻先に無造作に手を当てた。

 それだけで、ドラゴン形態のリラが吹っ飛び、転がり、そして人の形態へと戻る。


「無理しない方がいいよ、リラお姉ちゃん。ここに来るまでにもかなり消耗しているんでしょう? パドお兄ちゃんも酷いよね、リラお姉ちゃんをこんなに苦しめて、龍族にも犠牲者をいっぱい出してさ」


 いけいけしゃあしゃあ言ってのけるキダンに、リラが叫ぶ。


「どの口がそれを言うのよ!?」

「ま、そうだけどね。

 そのあげくがこうやって、ボクに遊ばれて終わりとか、情けないよね、パドお兄ちゃん?」


 キダンはそう言って僕を挑発する。


 リラ、ありがとう。

 僕にとって、君は勇者だ。

 だから。僕は……


 こうなったら、もう――


「くそっ。もう魔力が……」


 僕は光と闇の剣を消す。


「あーあ、もう終わりかぁ。もっと楽しみたかったんだけどな」


 キダンはそういうと、無造作に僕に近づく。


 そうだ、そうやって近づいてこい。

 そうしたら、使ってやるから。


 大神デオスが僕に授けたもうひとつの魔法。


 キダンが僕にさらに一歩近づいたところで、僕は飛び跳ねる。

 そして、ヤツに抱きつく。


「なっ、どういうつもりだ!?」


 初めて慌てた声を出すキダン。


「パドっ!!」


 リラが悲鳴のような声を上げる。

 彼女は知っているのだ、これから僕が何をしようとしているかを。


 わかっている。

 この方法を使ったら僕は――


 ――でも、仕方が無いじゃないか。

 僕は負けるわけにはいかない。


 リラ、バラヌ、ジラ、お父さん、皆が住む世界を護らなくちゃ。


 だから。


「リラ、ごめんっ!」


 僕はそう叫び、最後の魔法を発動した。


 かつて、お師匠様が、教皇が僕を救い、アル様がバラヌ達を救ったのと同じように。


 命を、魔力にして燃やす。


「僕の200倍の命と、残りの魔力、全部お前にぶつけてやるっ!!」

「きさまっ、これを狙って……」

「もしも、僕とお前が同類だというなら、一緒に逝こう、キダンっ!!」


 僕は叫んで、命と魔力を暴走させた。


「パドォォォォ」


 最後に聞いたのは、リラの叫び声だった。

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