「ああ……」
「なんでだよ⁉」
「どうして⁉」
「り、理解出来ません!」
「まあ、ちょっと落ち着け……」
俺は三人を落ち着かせようとする。
「お、落ち着いてなどいられません!」
「そこを落ち着け」
「しかし!」
「いいから座れ……」
俺は疾風に対し、座るように促す。
「むう……」
疾風は席に座る。
「二人も……」
「ああ……」
「う、うん……」
紅蓮と雷電も席に座る。
「……状況を整理させてくれ」
俺は机に両肘をつき、顔の前で手を組む。
「はあ……」
「まずは紅蓮龍虎……お前さんは『怪獣』に変貌するんだったな……」
「ああ、そうだ」
「疾風晴嵐、お前さんは『怪異』に変化すると……」
「そうです」
「雷電金剛、お前さんは『怪人』に変身すると……」
「そうか……」
「それがどうかしたのかよ?」
「どうかしたもなにも!」
「!」
俺は両手で机をバンと叩く。三人はわずかにビクッとする。
「そんなわけの分からない事態に直面して、まともな神経を保っていられると思うのか⁉ はっきり言って大パニックだよ!」
「あ、ああ……」
「ふむ……」
「う、う~ん……」
三人は戸惑いながら首を縦に振る。
「い、いや、すまん、大声を上げて騒いでしまって……」
俺は頭を下げる。
「いえ、無理もないでしょう……」
「え?」
疾風の呟きに俺は言葉を上げる。
「生徒が怪獣、怪異、怪人だったなど到底受け止めきれるものではありません」
「それもそうだね~」
疾風の言葉に雷電が頷く。
「しかし……」
「しかし?」
「そこはあれですね……」
「あれ?」
「慣れていただくしかありません」
「慣れ⁉」
「ええ、そうです」
疾風が眼鏡をクイっと上げる。
「そ、そんな……」
「もちろん、だんだんとで構いません」
「そ、そうは言ってもだな……」
俺は困惑する。
「まあまあ、気楽に行こうよ~♪」
雷電が呑気な声を上げる。
「全然、気楽とはほど遠いんだが……」
「顧問なんだから、しょうがねえだろうが……」
紅蓮が顎をさすりながら呟く。
「しょ、しょうがねえって……な、なんだかなし崩し的に顧問になっているが、他に適任がいるんじゃないか⁉」
「いねえよ」
「いねえって……」
「覚悟を決めろって」
紅蓮が笑みを浮かべる。
「え、ええ……」
「いくつかシミュレーションを行った結果……他の先生方だと、混乱が拡大しそうでしたので……村松先生が最も適性ありだと判断しました」
「そ、そうなのか……」
シミュレーションってなんだろう……。
「失礼します!」
「‼」
部室に短髪の女子を先頭に体格の良い女子たちが入ってくる。
「紅蓮龍虎! ともに甲子園を目指そう!」
「いや、国立を目指そう!」
「いいや、東京体育館を目指そう!」
「いやいや、武道館を目指そう!」
「またかよ……」
紅蓮が額を抑える。
「な、なんだ……?」
「スカウトだよ~♪」
「ス、スカウト?」
雷電の言葉に俺は首を傾げる。
「……運動能力“だけは”ずば抜けていますから、各運動部にとっては喉から手が出るほど欲しい人材なのでしょう……」
「おい、だけはとか、強調すんな……」
紅蓮が疾風を睨みつける。
「紅蓮!」
「うるせえなあ、運動部なんてオレのガラじゃねえんだよ……」
「しかし、この部室棟に来たではないか!」
「ここがたまたま空いていたからだよ」
「まさか、ここでダラダラ放課後ティータイムをする気か⁉」
「ティータイムってガラじゃないだろう!」
「そうだそうだ!」
「うるせえ! オレにはやることがあんだよ!」
「やることとはなんだ?」
「それにしても、この同好会……妙な顔合わせだな……」
女子たちが俺と疾風、雷電を確認する。
「ああ~別になんでも良いだろうが! 出てけ、出てけ!」
「うわあ!」
紅蓮が女子たちを軽く押し返す。
「そ、そのパワー……やはり逸材だな……」
「いいから、各々勝手に青春していやがれ!」
「むう!」
「はあ……どうやら今日の夜も出そうだぜ……」
生徒たちを部室から追い出した後、紅蓮は振り返って俺に告げる。
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