同好怪!?

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第3話(2)部室確保

公開日時: 2024年3月24日(日) 09:28
文字数:1,740

「ここは……」

「部室棟ですね」

 俺の曖昧な認識を疾風が補足する。そう、部室棟だ。校庭の隅にあるそこそこ立派な建物の前に俺たちはたどり着く。俺は自らの認識を口にする。

「この棟は基本的には運動部用のものだぞ?」

「細かく規定されているの?」

「いや、されてはいないと思うが……」

「じゃあ問題ないね~♪」

「あ、ちょっと……」

 雷電が部室棟に入る。紅蓮が疾風に尋ねる。

「……どうするよ?」

「とりあえずは後に続きましょうか」

「それもそうだな」

「俺の意見は?」

「……」

「………」

「いや、無視すんなよ……顧問だぞ……」

 紅蓮と疾風もさっさと部室棟に入る。俺もぶつぶつと文句を言いながらそれに続く。

「ここだよ!」

 雷電が部室棟の一室に入る。誰にも使われていないような部屋だ。

「へえ、こんな部屋があるとは……」

 俺は驚き交じりで呟く。

「なんでここだけ空いてんだ?」

 紅蓮が首を傾げる。

「……日差しが悪いからですか?」

「晴嵐っち、半分ご名答~♪」

 雷電が疾風に向かって拍手する。

「半分?」

 疾風が首を捻る。

「そう、半分」

「意味がよく分かりませんね……」

「もう半分は結構単純なことだよ」

「結構単純?」

 紅蓮が腕を組む。

「分かるかな~分からないだろうな~」

「いや、さっさと答えを言えよ」

「む~龍虎っち、せっかちだな~」

 雷電が唇を尖らせる。

「そういうミニクイズがこの世で一番どうでも良いんだよ……」

「しょうがないなあ~ちなみに村松っちはどう?」

「……いや、皆目見当もつかないな……」

「え~学校関係者がそれで良いの~?」

 雷電が苦笑する。

「部活動関係にはほぼノータッチでここまで来たからな。それもしょうがないだろう。この部室棟だって、久々に入ったよ」

「胸を張ることではないと思いますが……」

 疾風が眼鏡の縁を抑えながら呟く。

「別に胸を張ったつもりはないが」

「そのように見えたので」

「そうか」

「ええ」

「で? もう半分の答えはなんなんだよ、金剛?」

 紅蓮が雷電に尋ねる。

「えっとね、この部室棟っていうのは、基本的には運動部向けに造ったものなんだけれどね。ちょっと多目に部屋を作ってしまったみたいで……」

「なんだそら」

「恐らくは念のためにでしょう」

 紅蓮に対し、疾風が告げる。雷電が頷く。

「多分そうだね。ただ、そんなに部屋はいらなかった。それにプラスして……」

「プラスして?」

 俺が首を傾げる。

「グラウンドなどで活動する部活動にとっては便利だけど、体育館とかで活動する運動部にとってはわりと不便みたいで……」

「ああ……」

「それでもいくつかの部活は荷物置きとかで使っているみたいだけど、この部屋みたいにほとんど使ってないような部屋も出てきたと……」

「ふむ……」

「それならば使ってしまおう!って思ったわけ」

「…………」

「……………」

「あれ? リアクションない? 二人ともどうしたの?」

 雷電が紅蓮と疾風の顔を覗き込む。

「いや、金剛さんにしては思ったよりマシな提案だと思いまして……」

「同感だな」

「ふ、二人とも酷くない⁉」

 疾風と紅蓮の言葉に雷電はショックを受ける。

「……いかがでしょうか?」

 疾風が俺に問うてくる。

「……俺の意見も聞いてくれるんだな」

「この部屋を使っても問題はないですか?」

「あらためて確認する必要はあると思うが、ほとんどまったく使ってないようだからな。まあ、良いんじゃないか?」

 気を取り直した雷電が俺に言ってくる。

「やぶ蛇になる恐れもあるから、シレっと申請しといてね~♪」

「分かった……ただ」

「ただ?」

「部室……本当に必要か?」

「無いよりは良いでしょ」

「それはそうかもしれないが……しかし……」

「まだなにか気になんのかよ?」

 紅蓮が口を開く。

「うん……運動部以外がこの部室棟を使うのはな……」

「規定は無えんだろ?」

「それはな……」

「それに……」

「それに?」

「オレらは別に文化系のつもりはねえぞ?」

「え?」

「え?じゃねえよ、こっちがえ?だわ」

 紅蓮が苦笑いをする。

「……じゃあ運動部なのか?」

 俺が首を捻る。

「その辺りが気になりますか……金剛さん」

 疾風が雷電に視線を向ける。

「村松っち、今夜も学校に残ってもらえる? カワイイものが見られると思うよ♪」

「ま、またか……」

「うん♪」

 雷電がニッコリと笑う。女子高生のカワイイって……。嫌な予感しかしないんだが。

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