「陛下の召喚により、フレイゼン、参りました」
部屋に入ってきた侯爵は、察したようだ。
顔が先ほどより引き締まる。
「フレイゼン、そなたを召喚したのは、他でもない、アンナリーゼのことだ」
「アンナリーゼが、また何かしでかしましたか?」
親の侯爵でさえ、何をしたのかと心配しているのだ……
そんな娘がいることは、さぞ頭を悩ませるであろう。
いや、余は、そんな娘を息子の嫁にひいては、未来の王妃にと望んでおるのだが。
「何事もしでかしておらん! それよりもだ、そなたの娘を余の息子の嫁にほしいのだ。
どうだ?フレイゼンよ、受けてくれるであろう?」
なんだ、婚約のことかと胸をなでおろしているフレイゼン。
「婚約については、娘と話し合っておりますが、陛下に再三申し上げていますが、
今のところ誰ともしないということです」
「王命でも受けぬということか?」
「失礼ながら、そうでしょうな。もう、彼女は……娘は、将来を自分で決めております。
王命であとうと、私は娘が決めた将来を受け入れるつもりです。
彼女は、私たちの未来のために戦うと決めたようなので、親である私は、ただ、応援し続ける
だけとしております」
「そなた、王命に背くと言うのか?」
「はい。そうです。我が家の女性は、大変強かでございます。
王にこの首刎ねられようとも彼女たちは、決して俯くことはしないでしょうよ。
陛下もご存じでしょ?うちの妻と娘を……」
フレイゼンは苦笑いをしているが、確かに妻も大した器だ。
フレイゼンの首を刎ねるようなことがあれば、余の首と胴体も繋がってはいないだろう……
そして、息子の首もきっと冷たい玉座の下に転がっているだろう。
鮮血でドレスを染め、あやしく笑みを浮かべるフレイゼンの妻の顔がチラッと見え体が震える。
娘もフレイゼンの系統でなく、妻の方の系統だろう……じゃじゃ馬なのだから。
あまりにも似合いすぎている妄想に軽く頭を振ることになった。
フレイゼンに手でもかけてみろ、国が……傾くな。
いや、国がなくなるな……普段は忘れがちであるが、それほど、フレイゼン侯爵家の女性は苛烈であるのだ。
「では、そなたは、アンナリーゼの婚約をどのように考えておるのだ?」
四人で考えた案は、侯爵により一蹴されてしまった。
なので、これ以上は何も言えないので、提案させることにした。
「王子の手前、言い難いのですが、私は王太子妃には、ローズディア公国の第二公女をお勧めします。
まだ、会ったことはございませんが、娘が申すに王子にとって運命の人となるようですよ」
にっこり笑って答えるフレイゼンに唖然とする。
いけしゃあしゃあと他国の姫を薦めてくる。
「私でよければ、我が国での後ろ盾にもなるつもりです」
侯爵が後ろ盾というと、それほどの効力は持たないが、このフレイゼンは国家予算より多くの資産を持っている。
国一番の金持ちなのだ。
そこが全面的に後ろ盾となると申すならこれ以上ない縁談となるのだ。
アンナリーゼへの打診は、この後ろ盾も王子の基盤としてほしかったところだった。
アンナリーゼを諦めてくれるなら、公女の後ろ盾になると取引材料を出されてしまえば、折れるしかない、気がしてきた。
「では、余に3ヶ月の猶予をくれ。
見事、息子がアンナリーゼの心を射止めれば、アンナリーゼを王太子妃に、
ダメであれば、公女の後ろ盾を引き受けてくれるということで取引としてくれるか?」
「かしこまりました。その取引で構いません。ハリー君もアンナとの婚約に1枚かむかい?」
宰相とフレイゼンは仲が悪いと報告を受けていが、この会話を聞く限りでは、そうではないらしい。
むしろ、ハリー君なんて呼んでいるあたり、親子で仲がいいことが伺える。
急に決まったデビュタントのパートナーのことを思い出した。
確か、この二人の子どもたちが、色合いを合わせたかのような衣装を身にまとっていたはずだ。
密かに二人で決めていたのかもしれない。
「いや、遠慮しておこう。アンナリーゼの性格からして、アンナリーゼの意志を曲げることが
できるわけもないし、息子に勝ち目があるとは到底思えない」
「そうかい。アンナは、ハリー君のこと好きだと思うがな……
まぁ、選べない理由があるのだ。悪くは思わないでやってくれ」
「そうなのか?それは、息子は喜ぶ話だ。だが、黙っておこう」
フレイゼンの言葉が気になったが、とりあえず、猶予はできたので息子に頑張ってもらうしかない。
選べない理由があるとは一体どういうことなのだろうか。
その理由がわからない限り、アンナリーゼとの婚約を成すことは無理であろう。
到底息子にそれが調べらるとは思えないが、何事もやってみないとわからない。
アンナリーゼもまだ、17、8の娘なのだ。
恋だの愛だのでなびくことも……あるかもしれない。
だいぶ望み薄ではあるが……可能性の問題である。
そんなことを思うと、思わずため息が漏れてしまう。
余のため息をもってこの会談は終わるのであった。
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