3週間の休学になっている私は、先日約束したデートについてウィルに手紙を書くことにした。
『 ウィルへ
ナタリーから聞いているかもしれないけど、
背中にアツアツ紅茶が飛んできちゃって、やけどしちゃいました……
治療のため、3週間の休学です。
今のところ、ちょっと動けそうにないんだけど、2週間半くらいしたら大丈夫そうだから、
デートの予定を立てましょう!一度、王都の屋敷にきてほしいな。
アンナリーゼより 』
お屋敷のメイドに手紙を出してもらおうとお願いしようかとも思ったが、毎日学園と屋敷を行き来している伝書鳩がいることを思い出し、エリザベスが次の休憩時間に来るのを待つことにする。
「アンナ!消毒をしにきましたよ!!」
1日に5度以上、私の部屋を訪ねてくる来てくれているエリザベスは、現在、我が家での花嫁修業中。
ちょうどいい息抜きに私の看病が含まれているようで、ここ3日程、足しげく通ってくれている。
初夏の少し汗ばむ陽気になったにも関わらず、私の部屋は、厚いカーテンが引いてある。
おかげで、サウナ状態の暑い部屋になっているが、やけどを負った背中を冷やすため、ベッドの上で上半身裸のうえに背中に冷たいタオルを置いてもらっている状態の私は、それほど暑さを感じなかった。
「エリザベス、こんなに私の部屋に通っていて大丈夫なの?」
「えぇ、お義母様に許しは得ているわ。
ここの侍女たちは優秀だから、本当は私なんて必要ないのでしょうけど……アンナの顔が見たいのよ」
ほほ笑んでいるエリザベスをみれば、小姑のお小言なんて言えそうにない。
もちろん、言うつもりもないけど……この可愛らしい笑顔は、反則だと思う。
「なんてとは言わないで!エリザベスが、マメに軟膏を塗ってくれるおかげか痛みも和らいだし、
私も顔を見れて嬉しいわ!これも、ヘタレなお兄様のおかげね……
「もぅ!サシャは、そんなにヘタレじゃありません!」
そこで、ふふふと笑いあう。
私もエリザベスも、兄がヘタレだったことを知っている。
今も、少しその傾向があるが、エリザベスとの婚約を機に侯爵家の次期当主にふさわしいくらいには、成長していた。
その成長は、もちろんワイズ伯爵家を私が没落まで陥れたことをきっかけにだったが、いつまでも両親や私に頼っていられないという想いからだった。
何より、エリザベスを得たことは我が家にとって、兄の成長も含め大きくプラス作用となっている。
「そうそう、私のこれが治ったら、領地のお屋敷でお茶会を開こうと思うの。
それをお兄様とエリザベスに手伝ってもらうようお父様から言われているけど、もう、お母様から聞いているかしら?」
「昨日、お義母様から伺ってるわ。
規模はそんなに大きくないって聞いているのだけど、どれくらいの人を呼ぶつもり?」
「今、考えているのは、お客が10人分くらいで、ホステスとして私、ホストとしてお兄様、あと、エリザベスもそのお茶会には
参加してほしいの」
このお茶会は、いわゆる秘密のお茶会なのだが、いままで、エリザベスは招待客ではなかった。
私の遊び場でもあったため、なるべくローズディアの貴族との繋がりが欲しくって開いていたものだ。
今回は、ハリーも呼ぶことになっているので、エリザベスにも知ってもらおうと思って、思い切って手伝ってもらうことにした。
「小規模なお茶会ね?私も入っていいの?」
「もちろんよ。私の秘密のお茶会に参加して頂戴。
これから、エリザベスも我が家の一員として関わりが増える人たちだから、顔合わせしておきたいの」
「私も一員として認めてくれるのね……嬉しいわ!ちなみに、これってどんな集まりなの?」
「うーん。そうだな……エリザベスは、お兄様から私のことって何か聞いている?」
「特には……何も聞いていないけど……?」
「そう。その話は、お兄様から聞いてくれると嬉しいかな……でも、1つだけ。
私、来年の今頃は、ローズディアで花嫁修業していることになるの」
「えっ?それって……でも、アンナは、ヘンリー様と結婚するのではないの?」
「エリザベスもそう思っているんだ……違うよ? 私の相手は、違うの……」
そこまで言えば、相手が誰だかわかったようだ。
「でも、どうやって……?今、何も連絡は取ってないでしょ?
それに……アンナは、ヘンリー様を……」
私は、首を横に振る。
エリザベスは、混乱しているようだ。
事情も話さなければ、そうなるだろう。
「エリザベス、よく聞いて。エリザベスが、我が家のお嫁に来てくれることは、私が望んだの。
私の人生に巻き込んでしまってごめんね。
必ず、お兄様がエリザベスも家族も守るから…………許して……」
そこからは、私もエリザベスも一言も話さなかった。
ただ、私の背中のやけどを消毒し軟膏を塗り、冷やしてくれる。
淡々と作業をしていくエリザベス。
ちょうど終わったころ、休憩時間も終わったようだ。
「アンナ……もう、時間だからいくね……」
「うん。頑張ってね!!」
私は、明るくエリザベスを応援する。
すると、優しい笑顔が返ってくる。
「あっ!そうだ、これ……お兄様に渡しておいてくれる?」
先ほど書いた手紙をエリザベスに渡す。
「これは、誰宛かしら?」
「それは、ウィルに渡してほしいって、今度のお休みの打ち合わせについてだから」
「わかったわ。サシャに渡しておく!」
それだけ言うと、少し肩を落として部屋を出ていくエリザベスを見送った。
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