ハニーローズ

~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~
悠月 星花
悠月 星花

88. 婚約発表

公開日時: 2021年5月22日(土) 23:03
文字数:3,613

「さすがに、疲れました……」

「結構、連続で踊ってたからね。ほら、寄っかかっていいよ?」



 ジョージアに促されて、寄りかかるようにすると私は緊張した。

 でも、嫌な緊張ではなく、それすら心地よい気さえするので変だ……



「もうすぐ、薔薇の発表だね。去年は……あれだね……」



 ちょっと赤くなっているジョージア。

 去年の赤薔薇の称号のことを思い出したのだろうか?



「ふふふ、ジョージア様、顔赤いですよ?私たち、婚約したのですから……慣れてください」

「奥様の方が、肝が据わっているってことかな?」

「えぇーそれって……ダメですか?」

「いいと思うよ。アンナがどっしりしてるとアンバー領も繁栄しそうだ!」



 どういう意味だ……?かわいらしく頬に手をあて小首をかしげておくことにした。

 後はジョージアの好きに理解してくれとばかりだ。



「アンナがいれば、僕もいろいろ頑張れるということだよ!」

「そうですか……」

「もちろん、領地運営も手伝ってくれるのだろう?」

「はい。それは、私も携わりたいです!」



 でも、私は、なんと言われようと恋愛初心者ですからね……領地運営は、楽しみになので頑張りますけど!心の中で、そっと呟いておく。



 薔薇の発表が始まったようだ。



「『紫薔薇の称号』は、ジルベスター殿下およびシルキー公女です。どうぞ、前へ!」



 パチパチパチと拍手が、される。

 二人とも微笑みあって、嬉しそうだった。



「『ピンク薔薇の称号』は、ヘンリー・クリス・サンストーンおよびイリア・クララ・ルチックです。

 どうぞ、前へ!」



 イリアがことさら嬉しそうだ。

 ハリーもイリアをエスコートして表彰してもらいに行く。

 ただし、イリアが大変なことになっていて、ハリーもおろおろとしている。

 あんなハリーを見るのはなんだか新鮮であった。



「ハリー、イリア!!よかったね!!」

「あーんなぁ……」



 ぐずぐずに泣いているイリアは、年相応に見える。

 よかったよかったとイリアを撫でると涙をハラハラと流し続けて止まりそうにない。



「『白薔薇の称号』は、ヘンリー・クリス・サンストーンおよびアンナリーゼ・トロン・フレイゼン。

 どうぞ、前に!」

「「「えっ?」」」



 ハリー、イリア、私の三人が顔を見合わせる。



「今年もなのね……さすが、すごいな……」



 泣いていたイリアの涙は、私たちが呼ばれたことで引っ込んだようだ。

 よかったのだが、なんとも言えない場の空気に、ハリーと苦笑いをするしかなかった。



「辞退は……ダメそうだね……」

「そうみたいね……みんな、見てる」

「行こうか、『僕のお姫様』」

「はい、『私の王子様』」



 ジョージアによっかかっていた私は、ハリーが差し出してくれる手を取る。



「去年に引き続き、君たちが選ばれるとはね……最後のダンスは、素晴らしかったよ!」



 昨年も生徒会役員であったらしく、今期の生徒会長に言われる。



「ありがとう。僕たちのラストダンスだ。称号として永遠に残ることは、嬉しいよ!」



 白薔薇の称号は、赤薔薇と違い、一輪の白薔薇のブリザードフラワーを贈られる。



「後で俺のと交換して?」

「いいけど、どうして?」

「後で話すよ!」



 壇上から降りて待つべきものの所へ戻っていく。

 私は、ジョージアの元へ、ハリーは、イリアの元へと……

 少しだけ、ハリーの後姿を目で追ってしまった。頭を振って、ジョージアの隣に並び立つ。



「残すところ、赤薔薇だな」



 殿下、シルキー、ハリー、イリア、私は、それぞれ薔薇の称号を持っている。

 しかし、どの薔薇の称号も目立つ人間ばかりだ。



「アンナとジョージア殿では、ないかのぉ……」



 シルキーは何気なく言ったのだろう。



「さすがに、それはないと思いますよ?」

「そうかのぉ……わらわは、そなたら二人のダンスがとっても素敵だったと思うぞ!

 本物の王子と姫のようじゃった!」



 ジョージアと私は、シルキーのその発言に苦笑いだ。



「本物を目の前にして、なんとも返答のしにくいことを……」



 ハリーは、私たちを見て思わず口から出てしまったようだ。



「ハリー、聞こえているぞ!」

「殿下は、どう思われますか?」



 そこに、ハリーのフォローとばかりにイリアが話を振りなおす。さすがだ!



「イリアは、俺に聞くのか?」

「はい……」



 殿下は、自分たちが取れると思っていたので、答えにくいようだ。



「そ……そりゃ……アンナとジョージア殿の……」

「なんです?殿下?」



 ハリーは、殿下に質問をし、意地悪く笑っている。



「ハリー!そなたが答えよ!」



 それに気づいた殿下は、ハリーに丸投げした。



「はぁ……僕は、ジョージア様とアンナのダンスが、今日一番だと思ってます。

 まぁ、僕とイリアも悪くなかったと思うんですけどね。ピンク薔薇でしたから」

「ヘンリー様……」



 ハリーの言葉が嬉しかったのか、イリアは、頬を抑えてもじもじとし始めた。





 あぁ……混沌だ……






「最後に、『赤薔薇の称号』を発表します。これは、学園始まって以来のこと!!」



 生徒会長が、興奮している。

 そして、持ったぶったように間をおいている。



「『赤薔薇の称号』は、卒業生アンナリーゼ・トロン・フレイゼンおよび婚約者ジョージア・フラン・

 アンバー!!2年連続の赤薔薇です!!

 あと、アンナリーゼは、4つも称号を取得しているのですね!

 こちらも、学園始まって以来のことです!みなさーん!拍手!!」



 まさかまさかの飛び入り参加のジョージアと私のカップルが、『赤薔薇の称号』をかっさらってしまった。



「まぁ、仕方ないよね……?」

「そなたらほど、楽しげで息の合った踊り手はいなかったからな!」



 仕方なしと殿下たちは、拍手をおくってくれる。



「行こうか?アンナ」



 手を差し伸べてくれるのは、ジョージアだ。

 優しい微笑みに私は応え、手を取る。



「はい、ジョージア様!」



 壇上に上がり、2年連続で、赤薔薇のバッチをもらう。

 去年も思ったが、なんとも、質素だ!



 壇上から見渡す。

 殿下やハリー、イリアにシルキー、ウィルとセバスとナタリー、両親と兄、そのほかクラスメイトが、拍手をおくってくれる。



「去年も思いましたが、嬉しいですね!」

「あぁ、そうだな。アンナとまた、この景色が見れるとは思わなかった」

「今年は、どうします?」

「そうだな……」



 こそこそっと話すと、二人で正面を向く。

 そして、最上級の礼を尽くすことにした。

 ジョージアは、最敬礼で……私は、淑女の礼をとる。



 一層の拍手で、表彰式が終わった。




「静粛に!!」



 トワイス国宰相であるハリーの父親が、よくとおる声で拍手で熱くなった会場を静まり返した。



「この度、我が国トワイスと隣国のローズディア公国にて、両国の絆を深めるため、両国の者同士の

 婚約が行われる。最たるは、トワイス国王太子とローズディア公国公女である。

 それぞれ、婚約者には連絡され了承があった旨、この場を借りて報告する中でも、本日皆も聞いたで

 あろうが、1組のカップルがここにいるので、紹介しよう!」



 宰相にチラッと見られた気がする。

 私、一応その中では、今日のところ、公女を除けば1番上位なのよね……?



「ここに我が国アンナリーゼ・トロン・フレイゼン、ローズディア公国ジョージア・フラン・アンバー」



 呼ばれたので、私とジョージアは前へでる。



「両者の婚約が成立したことを陛下の名とローズディア公の名をもって承認する。

 両国の架け橋となり、より両国の繁栄に励むよう!」

「ありがたき幸せ。必ずや2人で両国の発展に共に邁進してまいります」



 ジョージアが返答してくれるので、私は、隣でそれに倣うだけだ。

 さすが、公爵家の跡取りだ。急な対応もなんのこともない。



「では、二人に祝福の拍手を!!」



 その拍手にて、今年の祝賀会は、終了となった。




 ◇◆◇◆◇




 ホールは、ざわざわとしている。こそっと私は抜け出した。



「やっぱりここかい?」

「ジョージア様!」

「アンナはいつも抜け出すのが上手だね……」

「いつも逃げているみたいで、その言い方嫌です!」



 プイっと顔をそむける。

 ハハハ!おかしそうに笑うので、さらに頬を膨らませて私はむきになって怒った。



「アンナ、機嫌なおせ!」



 ふっと寄ってきてジョージアに後ろから抱きしめられる。



「月がきれいですね?」



 なんの脈略もない私の話だった。

 ジョージアも見上げたのだろう。今夜は、ストロベリームーンだそうだ。



「あぁ、綺麗だ。なぁ、ここで踊らないか?音楽はないけど……」

「いいですよ!」



 二人だけの音楽が鳴り、踊り始める。




 ◇◆◇◆◇




「姫さんめっけ!」



 ウィルの声が聞こえた。もちろん、セバスとナタリーも一緒にいる。



「素敵ですね。月をバックに踊るなんて!」

「恥ずかしいから、何も言わないで!!」

「ハハハ!!アンナにも恥ずかしいってことがあるんだな!

 いつも堂々としていると思ってたけど……!」

「ありますよ!もぅ!!」



 さらに、殿下やハリー達まできた。

 いつものメンバーに囲まれながら、私たちは1曲分踊ったのだった。



「まだ、踊り足りないのか……?」



 殿下はうんざりしていたが、私はジョージアとのこの時間が楽しくて仕方なかった。

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