次の休日は、予定通りにみんな集まった。
ただし、一人追加になっている……トワイス国の第一王子その人だ。
「ハリー何故、殿下がいらっしゃるのかしら?」
ちょっと離れたところでハリーに詰め寄ると、仕方ないだろう……とため息交じりに諦めてくれと言われた。
ハリーが諦めろと言うもの、追い返すわけにもいかない。
もうこうなったら、私、殿下にメアリー推しまくりますけどね! と心で拳を握る。
実をいうと、私の強制婚約が決まるまでは、殿下と距離を置きたいと思っていた。
なのにだ、なかなか離れられずにいるので、ここはメアリーに殿下のお守を頑張ってもらおう。
「今日はなんてお呼びしたらいいですか?」
いつも殿下がお忍びで歩き回るときは偽名を使う。
そして、何故かうちの兄の名前なのだ。
「サシャでよいではないか!」
予想通りの答が返ってきたので、そのように呼んでくださいとみんなに伝える。
まず、やるべきことは、護衛のいない殿下を殿下とわからないように普通の学生さんにしなくてはならないので、言葉遣いに気を付けるようにしないといけない。
「サシャのおも……お付き添いは、ハリーとメアリーでお願いしますね!!」
そう、今日は、公爵家の子息令嬢がいるのだ。
殿下のお守は、丸投げしてもいいだろう。
私は、早々に離れ、ウィルたちに囲まれていた。
「ほっといていいのかよ?自国の王子だろ?」
ウィルに小声で言われたが、私はどこ吹く風である。
「今日くらい、いいでしょ?知ってると思ってるけど、 私、あの二人から少し離れたいの。
そのための割り振りだから下手に手心加えないでね?」
周りにいたセバスにもナタリーにも聞こえたようで頷いてくれる。
「それより、楽しみね!
生クリームたっぷりのケーキだなんて……想像しただけで、うっとりしちゃうよ!」
言葉がだんだん町娘風に砕けてくる。
「アンナは、生クリーム大好きだからな……俺には理解できないけど……」
「それにはウィルに同意」
「私もよ。さすがにアンナのあれは……引くわ!」
3人に言われ、私はむっとする。
だって、この世の中にあんなにおいしいものがあるだなんて、最近まで知らなかった。
そう、生クリームがたっぷり縫ってあるケーキに、さらにオン・ザ・クリームができるのだ。
もうそれを考えただけで、私は小躍りしそうなくらい幸せだった。
「もうすぐ、店につくぜ」
そう言われれば、さらに心は逸る。
「あぁあ……楽しみ!!」
ふと、後ろを向く。
殿下を真ん中にハリーとメアリーが両脇をはさんで談笑しているのが見えた。
うん、よかった、うまくいっているみたい。
それだけ確認すれば、あとは私の楽しみだけだ。
予約をしてくれていたウィルに感謝する。
向かった先は人気のお店なので、いつものように人であふれかえっていた。
店先で、予約したことを伝えると店員が確認に向かう。
その間、ふと店内を覗くと、そこには見知った人がいた。
そう、兄とエリザベスだ。
そして、兄の前に置かれているのが、私の求めるケーキであり、エリザベスは若干引き気味にコーヒーとかいう苦い飲み物を飲んでいるようだ。
私が覗いているのにセバスがそれに気づいたのだろう。
「アンナ、あれって……」
「何も言わないで、そっとしておきましょう。
その方がいいというものよ。セバス」
話をすり替えたつもりはなかったが、セバスが言いたかったのは兄を見つけたこと。
そして、その兄が食べているケーキが、私の求めるものだったことを見て兄妹だなと言いたかったらしい。
私の勘違いだ。
ちなみに、エリザベスとのことは、学園内で今では知らない人はいないほど有名な話だそうだ。
「予約確認できたから、入れって」
待っていたら、ウィルが呼びに来てくれる。
お店の中へぞろぞろと入っていくとさすがに目立つ。
そこで、兄と目があったが今日は他人、知らぬふりだ。
それを察してくれたのか、兄も知らん顔している。
部屋に案内され、メニューをみる。
私はもちろん、生クリームたっぷりのケーキだ。
他もそれぞれ好きなものを選んで注文している。
勝手のわからないのは、城下にあまり来ない殿下だけだ。
「あの子と同じものを」
おぉーチャレンジャーだ! と私は歓喜した。
殿下が選んだのは私と同じものだったのだからだ!!
さすがにまずいと思ったのか、ハリーがこっちのほうがおすすめですよなんて言っている。
ちょっと、ハリー!と思ったが、残ってしまうともったいないので、その判断でいい。
ハリー、ナイスフォローだ!
ケーキがくるまでのしばらく、私の成績向上の話をしてみんなが喜んでくれる。
ウィルとセバスは、学年2位と3位の実力者。
ナタリーも成績上位者なのだ。
今回の実力テストでは、1桁順位になれたものの、この中では、私が一番バカな子なので、みんなが一塩に喜んでくれた。
そうこうしていると扉がノックされ、ワゴンに乗ったケーキや飲み物を給仕がそれぞれの前に置いてくれる。
私は、ただただ目の前に置かれたケーキと生クリームにうっとりだ。
はぁ……たっぷりの甘い甘い生クリーム……生クリームはたっぷりで!!
熱い視線をケーキと生クリームに送る私。
それを今日一緒に来ていたみんなが、ひきつった笑顔で見守っていたことは私が知る由もないことであった。
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