ハニーローズ

~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~
悠月 星花
悠月 星花

16. 手紙

公開日時: 2020年12月14日(月) 22:41
更新日時: 2021年1月6日(水) 23:03
文字数:3,652

「銀髪の君からね、預かってきた」


 

  兄妹水入らずで、週に1回はお茶会という名の学園情報収集報告会をする私達。

 私達からの情報をさらに両親にも報告という形で上げるようにしている。

 学園は、貴族社会の縮図なので、そのまま大人の世界に通づるものがあるのだ。

 なので、この会は、本当に兄妹二人だけでするものなので、いつも私にくっついている殿下もハリーも遠慮してもらっている。




「ジョージア様からですか? 私に? 」




 そうだと兄は頷いた。

 それは、きちんと便箋に入ったジョージアからの手紙であった。




「悪いけど、中身は確認させてもらったし、父上と母上にも内容を報告させてもらった。

 それで、二人からは、アンナに任せるだって。

 俺も、アンナの判断を支持するよ。

 協力が必要なら、手を打とう!」




 そこまで兄に言われたため、内容の確認を急ぐ。

 というか、兄がやたらニヤニヤしているのが気になるのだ。



 渡された手紙は、銀髪の君と言われる容姿そのままの凛としたような綺麗な字であった。




『 親愛なる アンナリーゼ様

 君と出会ってから、もう季節は一巡してしまった。

 あれ以来、君と話をすることもできないでいるが、

 君の話は、サシャからよく聞かせてもらっているよ。

 君は、私が思っている以上の令嬢のようだね。     』




 そこまで読んだとき、兄を睨む。




「お兄様? ジョージア様に私のこと一体何を吹き込んでいるの?」

「さぁ?僕は何もだよ。

 聞かれたことを答えているだけ。

 アンナの好きなものは何かとか、どんなものに感動するとか怒るとか、

 どんな男性が好きかとか……かなぁ?」

「それで? なんて言ったの? 」

「適当に言っといた」

「適当って何んです!!」




 兄の話に怒り心頭であるが、続きがあった。




『1年も学園にいれば、ローズディアの友もできたであろう。

 そして、私の噂も聞いていると思う。

 君と、もう一度話がしたいんだ。卒業間際でも構わない。

 私が卒業するまでに時間をとってくれないだろうか。

 返事がなければ、諦める。もし、返事をくれるのであれば、

 君に打ち明けたいことがあります。

                           ジョージア』




「打ち明けたいこと? お兄様は、わかりますか? 」

「アンナよ、家族に話してくれたあの夢の話を覚えているか……

 はっきり、自分で言ってたぞ? 私に恋をしますと」




 なるほど、私は納得した。

 そうだ。彼は私に恋をしたのだ。



 ただし、それは、『予知夢』では、入学式以降の話であったはずなのに……入学式の前日に起こった。

 確かに、彼は、別れ際に私の名前を呼んでいた。

 夢では、見ていないところであったのですっかり忘れていたのだ。



 卒業式まで、ほぼ1年ある。

 それまでに1度会って話がしたいという。

 実際、私も話がしたかった。

 今後、自分の人生に関わるため、どんな人なのかきちんと確認しておきたかったのだ。




「お兄様、学園では目立つので、我が家へ訪問していただくのはダメでしょうか? 

 兄の友人として……実際は、私と話すためですが……」




 兄に提案をする。

 私の名前で招待すると、外聞がよろしくない。

 そして、何より、殿下やハリーを含め、私の婚約者候補(私と私の家族は誰もそんな風に思っていないが……)と言われている方々にジョージアと話をしようとすると何故か邪魔をされてしまう。

 今、まさにそんな風になっているのだ……

 みんなものすごく労力払っているけど……未来の旦那様は、ジョージア様で決定しているのだ! と言ってやりたい……けど、言えない。

 もどかしい毎日を過ごしていた。




 そこにこのジョージアからの手紙だった。

 中身が家族で読みまわされていたとしても、もらえた手紙は、実はとても嬉しい。

 家族が確認済みなのは、今後を考えれば仕方のないことだ。




 私の提案に兄は悩んでるふりをしていた。

 両親に丸投げするつもりなのが分かる。




「私は、お兄様に聞いているのですよ? 

 ダメですか? いいですか? 白黒つけてください!」



 

 兄に迫ると、さすがに勘弁してくれと降参のポーズをとる。




「わかった、わかった。僕から招待状を出すとしよう。

 そして、両親にも伝えておく。

 東屋を片付けてもらって、そこで話をできるようにセッティングしようではないか!」

「さっすが、お兄様。

 やればできるじゃないですか!!

 卒業式と言えば、お兄様は卒業式のエスコートするパートナーはもう決まっていますか? 

 早く決めないと、いい子はみんな取られちゃいますよ?」




 とりあえず、持ち上げておくと同時にエスコートする令嬢が決まっていない兄に追い打ちをかけておく。




「わかってる……わかっているけどさ、まだ、決まってない……誰も俺とは……」




 そこまでいうと肩をがっくりして落ち込んでいく。

 兄の落ち込みように、ふふふと笑いがこみ上げる。

 私がいうのもなんだが、うちの兄はかなり優良物件である。

 ちょっと運動音痴ではあるのだけど……もともと頭はよかったし、父に学び要領が少しよくなった。

 社交下手だったが、母の特訓のおかげで、平均より少し上の社交術もつけた。

 身分も侯爵。

 父も財務大臣であり、父の親友は宰相である。

 将来、宰相候補と言われているハリーとも私の紹介でいい仲である。



 なのにもてない……



 でも、そんな兄がいいと言ってくれている令嬢もいるのだ。




「お兄様、そこで妹の出番ですわ! 

 協力してくれるお兄様のために妹の私が一肌脱ぎますわ。

 大切お兄様ですもの。

 変な令嬢に引っかかってほしくはないですものね。

 私の眼鏡にかなう方でないといけませんから!」




 そういうと、兄は若干引いていたが、紹介してくれるというのなら……と、乗り気になっている。




「では、ジョージア様を招待する日に同じくお呼びしますので、早速、日取りを決めましょう。

 しっかり、令嬢の心つかんでくださいね!! 

 紹介したい方は、お兄様が、しっかり心奪われる方ですから!!」



 そこまでいうと、持つべきものは妹だとか言っている。

 なかなか、現金な兄だ。

 思慮深いはずだが、妹の眼鏡にかなう令嬢というのは、かなり教養のある最優良物件である可能性があると思っているようだ。

 確かに、最優良物件というより、お兄様となら最優良物件になるという令嬢を、私は入学当初より選んである。




「ところで、その……令嬢は、どこの誰なのだ……?」




 興味をそそられたのか、聞いてくる。




「どこの誰もよろしいではないですか? 

 私、『予知夢』でお兄様の奥様は知っていはいましたが、初めて本物にお会いしたときは、

 これ以上の方はいらっしゃらないと確信しました。

 絶対気に入りますよ!! 太鼓判です!!」




 気合を入れて薦める妹の私。

 その妹の姿をみて、満足そうにしている兄。

 部屋でそれぞれを見つめ、それぞれに思い更ける。

 あの方には、是非とも兄を支えてほしいものだ。

 ジョージア様に招待状を送るだけで……うまく兄を誘導できたと私はほくそ笑む。




「では、お兄様。招待する日を決めましょうか?

 何日か予定の候補を出しますので、ジョージア様に都合のいい日を聞いてきてください。

 私のほうも聞いてきますので。いつがよろしいか? 」




 早速、招待する日の話をすると、引き締まった顔になる兄。




「それじゃあ、5日後の休日と12日後の休日はどうだろうか?」

 



 提案されたのは2日間だけ。

 私たち兄妹は、日にちなどどうともなるが、招待される方はそうはいかない。




「もう1日追加しましょう。

 白黒つけるのであれば2択でいいですが、相手側を呼び出すのです。

 招待するといえども、今回のはわざわざ足を運んでもらう側に選んでもらえるように

 しておかないといけませんよ?」




 兄の提案に1日増やす提案をする。

 最初聞いたときに何故? という顔をしていたが、さすがに理解してもらえたようだ。




「そうだな。それがいいかもしれない。

 しかも、ジョージア様は、上位貴族だからね……我が家程度に来てもらうからこそそうだな。

 いつでもと言いたいところだけ、こちらにも用意が必要だからね……

 日にちは、限定させてもらって選んでもらおう」

「では、もう1週後の休日も含めましょう。それでよろしいか?」




 兄に確認するといいよと返事をくれる。

 これで、お互い誘う人ににいつ来れるか確認してその日に来てもらうよう招待状を書くだけとなった。

 とりあえず、両親にもこの計画の報告は必要なので、手紙を書くことにする。



「では、2日後の午後にでもまたお茶会をいたしましょう。

 そうそう、私たち、学園ではかなり仲の良い兄妹と有名らしいですよ」

「そらそうだろう……この二人だけのお茶会以外にも、アンナの大立会いには必ず、

 僕がすっ飛んで行っているからね……

 ほんと、もう少し大人しくしていてほしいものだよ……

 嫁の貰い手……なくなるぞ……あ……!あるのか。貰い手。しかも、上位貴族で!」




 そういって、羨ましいとか呟きながら、頭を抱えて、ため息をついている。




「まぁまぁ、そう肩を落とさないでください。お兄様も、素敵な未来の奥様ができますから!!」




 にっこり笑って私はごまかしているが、そういうことじゃないんだ……と呟いていた。



 その後、母に送った報告書の返事は、兄の相手について申し分ないと返事をもらったので、私は早速行動開始である。

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