わんだーけみかる!

化学チート使って異世界無双!?(したかった)
ぽんぽこりーぬ。
ぽんぽこりーぬ。

第10話 エ◯回

公開日時: 2020年9月9日(水) 19:33
文字数:2,052


聖都グルメに舌鼓を打ち、女神まんの柔らかさとジューシーさに満足した一行は、大聖堂カシードラに到着した。


「そういえば神器の一つってこの大聖堂にあるんだろ? 大切に保管されてるようなものをあっさり貰えるのか?」


「うふふふ。ご心配ありませんわ、勇者様」


「あ、あなたは?」


大聖堂の奥から出てきたのは、ウェーブのかかった漆黒の髪をした妖艶な美女だ。

身体の局所を必要最低限の白い布のみで隠している。

いろんなところがこぼれそうだ。

薄暗い中にステンドグラスから差し込む光が、彼女に陰影を作り、美しさを更に際立たせている。


女神だ。

女神に違いない。



「ようこそいらっしゃいました。わたくしはここの枢機卿であるレイナと申します。ちなみに国王レクスはわたくしの兄ですの」



この世界にも遺伝子はあるのかな?

あるんだよな?

いや、確かに国王もイケメンだったよ?

だけど俺が知ってる王様って、飲み屋のねーちゃんにセクハラしようとして店主のおっちゃんに殴られてたし。

しかも王妃様が店に突撃してきて、首根っこ掴まれてドナドナされてた人だよ?

ていうか初めて王様の名前知ったよ?



「あらあら? 旅でお疲れなのかしら? 大丈夫?」



この歳で頭撫でられたー!?

男だけどナデポしちゃう!

ていうか近い!

柔らかいのが当たってる!

いい匂いする!!



「ふふふ、いい子ね。そんなにが好きなら、ゆーっくり撫でてあげるわよ?」



ツツーゥと胸を指で撫でられたアキラは強制起動終了した。



「あーレイナさん? その辺にしていただかないと勇者(笑)が愚者に退化しそうだから離してあげて」


「あらあら、残念。まぁいいわ。わたくしの部屋にいらして。歓迎いたしますわ」




外観と違い、内装は質実剛健しつじつごうけんな作りをしていた大聖堂。

執務室といっても過言でもない、必要最低限の物しかない枢機卿室で一同は寛いでいた。



「それで、この聖都には神器を回収しにきた、ということでよろしいのですね?」


「えぇ、この旅に欠かせないとのことで。この大聖堂に保管されているんですよね?」



なまめかしく生足を組み替えるレイナを見ないように、視点を後ろの壁に固定し、真面目な態度を取り繕うアキラ。



「いいえ。保管はされていないわ」


「えぇっ? まさか魔族に奪われた?! それとも何か試練が必要とかですか?」



「大丈夫、神器はこの大聖堂にある……ハズよ。そうね、実際に取りに行ってもらったほうが早いかしら。アキラ君、一人で私に着いてきてくれる?」


「ちょっ! まだ日中ですよ?! ……って違いますよね、分かってる。分かってるからロロルさんお腹つねらないで!」




迷路のような聖堂内を案内されること10分。

青銅製の両開き扉の前に着いた。



「神器はこの扉の先にありますの。詳しいことは中にある石碑に書かれておりますので。さぁ、いってらっしゃい」


「え? いやそんなニッコリ言われても……わかりました。行けばわかるんですね」


ギギギ……と音を立て扉を開く。

なるほど、確かに石碑がある。

そしてその側には小さな泉。



「えーっと、なになに? 『なんじ 魔ヲ払ウ心正シキ勇気ヲ持チ ちからヲ求メルナラバ 時ヲ捨テ 泉ニ命ノ欠片かけらヲ入レヨ』だって?」



うーん……と悩むアキラ。

戻ってレイナに聞きたいが、一人で行かせたからには何か理由があるハズだ。

人によって欠片が違う? 血だったらちょっと嫌だなぁ。

命の欠片であって、命ではない。

命のように大事なモノ……か?

それでいて泉に入れるモノ。

そういえば、泉に何かを落とすって何かで聞いたな……

――そうだ!



アキラはまだ新品同様の片手剣を腰から外し、助走をつけて泉に投げ入れた。

唯一の武器が沈むと、一拍の間を置いてブクブクと泡が立ってくる。



「おっ? 正解か? やはり勇者は賢さも高いようだなぁ!! ふはははは! ……は?」



――ザシュッ!



綺麗な弧を描いてアキラの両足の間にが刺さる。

一歩間違えれば足がもう二本増えるところだった。

四足歩行で手も持つ勇者。

ケンタウロスかな?



「ヒッ……ヒヒヒヒ……ちょ、ちょっと想定外はあったが神器ゲット? ん?鎌のつかに何か書いてあるな。『原作のイソップ物語は女神じゃなくて男神じゃボケェ! あんな露出狂と一緒にすんな! それにアイツは泉じゃなくて川に潜ってただけよ! やり直し!』だって?えぇー知らんがな。大体童話の類は幼児向けにするにあたって編集されてるんだよ。原作なんて殺伐過ぎて子供泣くぞ!」



涙目で腰を抜かしたアキラ。

ぎりぎり漏らさず尊厳は守られたが、武器は鎌になってしまった。

神器じゃなかったかー。もう帰りたいなー。

草を刈り、作物を守る勇者もいいかもしれない。

命は名声やお金では買えないのだ。



「ん? お金? 時を捨てる……たいむ、いず、まねー? まさかお金を投げ捨てろ、と?」



いやいや、まさか。

でもどこか俗物そうな女神様ならお金も大好物かもしれない。

少なくとも喜捨やお賽銭で怒られることもないだろう。

もう、どうにでもなーれ気分でポケットにあったお金をポーンと投げ入れた。






……何も起こらない。今月のお小遣い全部入れたのに。

と思った瞬間、胸に焼ける痛みが走り――銀色に輝くやいばが生えた。






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