夏と少女と日陰。
夏、だ。
暴力的なほど鮮やかに色づいた景色に、夏を感じる。
気温の高さとか、日射しの強さとか、そういうものよりもっと強く、目に入ってくる緑や青や白や黄土色が私に夏を感じさせる。
私は夏とあまり相性がよくない。
身体があまり強くないとか、肌が弱いとか、露出が増えやすいのが嫌だとか、色々と理由はある。だけど、一番私が夏を苦手だと感じる理由は、もっと別のところにある。
ぎらついた景色。否が応でも上がる体温。長い日照時間に、早い日の出。
夏は、人を活発にする。私みたいなできそこないにも、動け動けと気持ちと身体を熱くする。
そんな夏が、私は苦手だ。
嫌いなわけではないのだ。冷たいアイスを食べるのは好きだし、夏の風景は美しいと思う。自分の好きな人たちが夏だからとはしゃいでいるのを見るのも好きだし、楽しい季節だと思う。
ただ、私は、そんな楽しい季節に、完全に混ざることができない。
陽にあたることと運動をすることが他人と比べてとても毒になってしまう私は、みんなのように太陽の下で遊ぶことはできない。
だというのに、私は太陽の下で遊んできらきらと輝く笑顔を見せるみんなを、とてもとても羨ましく思ってしまう。
憧れとも言える羨望は、時々私の中で大きくなりすぎる。そして、大きくなった私の気持ちを夏が勝手に盛り上げて、私の身体に毒を入れようとしてくる。
熱くなった身体の内側でどんどん膨れ上がっていく気持ちを抑えることができなくなりそうになる。だから、夏は苦手なのだ。
いつか、いつか、と、根拠のない期待をしながら十数年を過ごした私は、いまだに日傘の下から出ることができない。
目の前に広がる美しい風景は好きだ。私の身体に毒にならない範囲で一緒に過ごして遊んでくれる友達も好きだ。たくさんのわがままを聞いて私の不自由をなくそうとしてくれる家族も、大好きだ。
たくさんの好きがある。だけど、私は、私だけが、嫌いだ。
夏はそのことを私に一番強く突きつけてくる季節。だから私は、夏と相性がよくない。
今日も私の胸の内は重い。自分という存在の弱さと、親から授かった自分という存在を否定してしまうことへの罪悪感が喉の奥につかえているみたいで、息苦しい。
こんな息苦しさに慣れる頃には、私は、少しぐらい私を好きになれるだろうか。
何一つ予測のできない未来に想いを馳せ、私は知らず知らずのうちに下がっていた視線を少しだけ上げた。
ああ、やっぱり、夏は綺麗だなあ。
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