「あぁ、ウルフの小僧が俺に拾われた経緯か」
「途中までは聞いたんですけどね、秘密だって言って」
「はっはっ、そりゃ言いたくねえだろうなぁ」
「お? なにか秘話でも? 」
「おう、ゴミかと思うくらいに殴られたウルフの小僧を見つけた俺の部下が治療を施してな。そいつに恩義を感じたのか、あんたをボスにしてやる! って叫んで俺を殺そうとしてきやがったのよ」
「ころっ……いやまぁ、かれならやるかもしれませんね。聞く限りだと」
「それをもう一回、俺が死ぬ寸前までボコボコにしてやったわけだ」
「はぁ、ウルフ君を」
金階級で現役冒険者を買えりうちにできるだけの才能の塊みたいなのを……。
手負いとはいえ……。
「それを繰り返しているうちにあの小僧はそれを訓練だと思い込むようになってなぁ」
「ボコボコにされるのが訓練……」
価値観狂ってる人って怖いなぁ……。
「まぁ、そんなこんなで数日あいつの面倒を見てやって、ついでに話を聞き出して孤児共を集めてたって話にこう何かをひらめいたんだよ」
「はぁ」
「その頃からスラムをどうにかしたいとは思っていたが具体的な方法が分からなくってな。けど孤児がいなくなればそのうちスラムなんてものが無くてもよくなるんじゃねえかとガキどもを集めて孤児院を作り、ギルドみたいな職業支援を始めて今に至ったんだから……あいつはある意味俺の恩人でもあるわけだ」
「でもボコボコにしたと」
「礼を込めて、本気で相手してやったぜ」
それ胸張って言う事じゃないですタカヒサさん。
「それで結局その後ウルフ君は? 」
「組に入りたいって言ってきたが年齢を理由に却下して適当な孤児院に放り込んだ。追い出す時にどうしてもというなら冒険者で金階級にでもなってから出直せって言ったら本当になってくるんだから驚きだよなぁ」
だよなぁって言われましても……。
いや本当に驚きだけどね。
「ま、俺に何かあった時のためにもあいつは育てておきたいと思っているんだ。そういうわけでエルマさん、あいつを貸してやることはできねえからな」
「あ、ばれてましたか」
「当然だ」
世間話からついでに旅の護衛の専属としてウルフ君雇えないかなーって思ってたけど断られちゃった。
残念っちゃ残念だけどまぁいいか。
なにせエスカルゴン様という最強の護衛にして足がいるんだから。
「それと一つ忠告だが、街を離れるならあと半年ほど待った方がいいな」
「ほう……」
「ここだけの話だが、武器を買い込んでおくといいぞ」
「武器、なるほど……なら食料もですね……」
「さすが、話が早くて助かるぜ」
「情報感謝します、ではさっそく私行ってきますんで」
「おう、気をつけてな」
ふふ、良いこと聞いちゃった。
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