「まさか洟垂れウルフがこんなに立派になってるとはなぁ」
「おやっさん、あまり恥ずかしい話せんでくださいよ」
「いや、それにしてもエルマさんを助けたのは良い判断だ。この人は俺にとっても大切な人でな」
「なんと! これはエルマの姉御と呼ばなければいけない感じですかい」
「あぁ……この人のおかげで俺も最近は仕事が捗るんだよ」
「そりゃあめでてえ話じゃねえですかおやっさん! 」
「あぁ、もう来年の仕事にも着手し始めているくらいだぜ」
「はぁ……マジックポーションを湯水のように、しかも敵に使ってやる懐の深さ。流石おやっさんが見込んだ人だぜ……」
はい、アンジャッシュが発生していました。
面倒くさいから全部放置したけどね。
実際どう思われても困らないし、悪評にも繋がらないだろうから。
なにせ……。
「救国の罪人ねぇ……」
「まーた古臭いうえにこっぱずかしいあだ名持ちだしてきたなぁエルマさんよう」
「さっき絡まれた貴族が言ってたんですよ」
「俺は別に当然のことをしただけだぜ。スラム街を減らそうと支援だのをして、ウルフみたいな親のいないガキを引き取って孤児院を立てて、大体いつもそんな感じの仕事しかしてねえんだよ」
「無許可の孤児院に無許可の人員派遣、どちらも法に触れていますが国からすれば面倒ごとの種を摘み取ってくれるわけですからね。救国の罪人というのはまさしくピッタリだと思いますが……なんで国の許可を取らないんです? 」
「国のお偉方を巻き込めばそこに権力抗争が生まれるからだ。だから俺はマフィアとして活動してんだよ」
「はぁ、相変わらずの漢気ですね」
「おうよ! おやっさんの漢気は世界一だぜ! 」
君は元気だね、ウルフ君。
ともあれこうして私は新しいコネクションを手に入れたのだ。
金階級の冒険者、新進気鋭のウルフという期待の新星にして救国の罪人率いるマフィアの幹部候補生と。
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