「酷い目にあいました」
また少し痩せたのではと思ったけどこれ窶れているんだと気が付かせてくれたヨートフさんは煙草を片手にクレームを入れに来たのだった。
「まったく、まさか異端審問官があんな刺客を差し向けるとは……」
「え? 」
「あなたが紹介したイオリって娼婦、私がここまで追いつめられるのは久しぶりでしたよ」
なんだろう、その少年向け冒険譚に出てきそうなセリフ。
しかも悪役が言うやつ。
「危うく全て搾り取られて殺されるところでした……」
「ははっ、娼館なんかで遊んでる罰でも当たったんじゃないですか? 」
たぶんイオリさんは異端審問の類じゃないと思う。
だって、あれ普通に楽しんでるだけの人みたいだし。
そもそもヨートフさんが新月派の事結構広めてるから最悪この街全部潰されることになるのにあんな目立つ刺客は送り込まないでしょ。
「神官が遊んではいけないなどという戒律はありません。性交渉を禁忌とする神など人類を滅ぼそうとする邪神でしょう」
「まぁ、そりゃそうですけどね……」
「あぁん見つけましたわぁ! 」
「「ひぃっ! 」」
ヨートフさんのクレームを遮ったのは間延びした声だった。
思わず私も息をのむ。
「ヨートフさまぁ、今夜もお相手をぉ」
「わ、私は敬虔な神官ですのでそういう行為は許可なくできないのです! 」
あ、嘘ついた。
敬虔な神官様が嘘ついた。
「あらぁ、ではエルマさんにぃ……」
「ヨートフさんのそれ嘘なんでじっくりたっぷり愛されてください」
「ちょっ、エルマさん! 恨みますからね! 」
私の言葉にキランと目を光らせたイオリさん。
そのままずるずると連行されていく様は、これから精肉される家畜のようにも見えた。
……ヨートフさん、イオリさんを満足させられるくらいの絶倫なんだなぁ。
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