【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
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怪獣の咆哮

公開日時: 2021年6月6日(日) 00:08
文字数:2,204

 飛彩の左ストレートはフェイウォンの右手に納められている。

 その事実は相手が分身体でもなんでもない本体であると飛彩に裏付けさせた。


(異世の中ならどこへでも瞬間移動可能ってか? やっぱり規格外だな)


 城門前で始まった世界を揺るがす最高峰の戦いは黒と三色の鎧が織りなす闇と光の決戦となる。


(動揺は捨てろ。皆は変身してる。今一番心配しなきゃいけねぇのは俺自身だな、まったく)


 握られた拳から波動を放ち、組み伏せられた状態から脱した飛彩だが冷静さを保てと心の中で何度も念じていた。


「もう終わりか?」


「一発だけで俺の全てがわかるのかテメェは」


「はっ。私を前にして臆さない事は褒めてやろう」


「ぶっ潰さなきゃいけない相手にビビってどうする!」


 渾身の拳が通じないならば蹴りで、連打で、手刀で、波動で。

 様々な攻撃でフェイウォンに猛攻を仕掛ける飛彩だが相手は一流を超えた存在。


 最低限の力で攻撃をはじき飛ばし、その度に飛彩の首元へ拳や蹴りを寸止めで突きつける。


「師匠気取りかよっ!」


「本気になる方法は忘れてしまってな……準備運動に付き合ってもらおう」


「ほざきやがれ!」


 手をぶらぶらと振ったフェイウォンは、マントを外す様子もなく軽々と飛彩の一撃をいなす。

 そのまま城壁に突き刺さった拳はいとも簡単に壁を粉砕する。


「おお、当たったらまずいか」


「ちっ……」


 拳を引き抜き振り返る飛彩だが、フェイウォンは拍手しながら未だに本調子ではない様子を見せていた。



(やつは油断してる……この右腕をぶつけるチャンスは絶対にある!)



 展開無効の能力を持つ右腕は、範囲内にいるもの全て展開力を「無かったこと」にする飛彩必殺の力だ。

 敵味方関係なく能力を人間レベルまで落とすその能力は、むしろ一騎討ちになっている今しか使用出来ない。


「さっさとぶっ倒して皆を助けなきゃいけないんだ」


「クリエメイトより楽しませてくれるのかな?」


 気がかりな事項を全て後回しにして飛彩は目の前にいる諸悪の根源に全神経を注ぐ。

 神すら地に引き摺り下ろす最大の能力と共に。






 飛彩の救援がない、それは同時にフェイウォンの介入が他の場所にもないということを示していた。


 黒斗とメイは現世での戦況を盛り返していく。

 熱太たちはリージェと凌ぎを削り合っていた。

 ホリィと蘭華、そしてララクは遮るものなく飛彩の元へ。


 そして、変身したことで大きく盛り返していた春嶺と刑はユリラを確実に追い詰めていた。


「貴様ら……フェイウォン様の怒りを買うぞ!」


「頼みの綱である始祖様は君を助けてくれるのかい?」


 春嶺との阿吽の呼吸で接近戦を繰り広げる刑は槍から天刑皇へと獲物を持ち替えている。 

 身の丈を超える巨大な鎌は巨大な獣の首を一撃で切り落とせるだろう。


 「そろそろ処刑の時間だ!」


 斬撃だけでなく真横にした樋での打撃は鎧の中にある肉体を揺らす。


「ぐがっ!? フェイウォン様の前で……このような醜態を晒すわけにはいかない!」


「そんな信頼関係じゃ、私たちには勝てないわ」


 凝縮された展開力のビームがユリラから針山を生やすかのように鋭い波動を叩きつけていく。

 鎧を貫通するほど凝縮された掃射に肉体も大きく損傷を受けたようだ。


 膝から崩れ落ちたユリラに対して刑も春嶺も勝利を確信した刹那。


 確信ほど油断に等しいものはないことを二人は思い知らされる。



「ギャオアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」



 耳を擘く咆哮と共に視線は上へ。

 視界に飛び込む無数の怪獣『ゴーガ・レギオン』に息を飲むよりも早く、口に燻る炎を視認した二人は固まって周囲に展開力での防御壁を敢行する。


 地面に片膝をついて発生させたドーム状のシールドは費やした展開力にしては防御力を発揮しきれずにいる。


「まずい、あの女ヴィランが何か細工してるぞ!」


「私が攻撃を逸らす!」


 防御壁の外から展開弾を発生させ、ゴーガレギオンの頭部を揺らすような一撃を放つ。

 そのままバランスを崩した巨龍はドミノのように倒れ込んでいった。


「よし、時間は稼げた……あの女、こんな隠し球を」


「だがあの炎の中無事では済まないはずだ」


「それはどうかしら?」


 防御壁を解除した二人は傷だらけになりながらもゴーガレギオンを従えるように空中に浮かぶユリラを見遣る。


「まさか。途中から手応えがなくなっていたのは……」


「桃髪の子は察しがいいわね。異世中に散っている生物たちの中でも選りすぐりの性能を持つ子たちを集めさせてもらったわ」


 指揮下に置く能力で前もって有能な個体には印をつけていたであろうユリラはそれらの怪物を呼び寄せるために展開力を集中していたようだ。


「音も気配も感じなかったでしょう? 展開力の余波や地面の揺れ、巨大な生物の気配……それら全てが貴方達に届かないように指揮下に置くことが出来るもの」


 つまり刑と春嶺はユリラを倒す絶好の機会を失ってしまったことになる。


 ここからは戦いに全能力を費やすユリラと、数十頭の巨龍を相手にしなければならないのだから。


「くっ……あいつ一体を倒すのにどれだけの人員が追加されると思っている!」


「仕込む時間が足りない、か。苦原刑、ここは移動しながら戦おう」


 脚力に展開力を込めた二人は闘技場のようになっていたその場から一気に距離をとった。

 それと同時に起き上がるレギオン達はユリラに頭を下げるようにして命令を待っている。


「追いかけっこね。まあ、この城下でレギオンから逃れられるかしら?」

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