「ホリィ! 手伝うぞ!」
「熱太さん!? エレナさんに翔香ちゃんも!?」
「俺もいるぞ」
「刑さん!」
世界展開用のエネルギーを奪う装備に身を包む熱太たちは雑魚のヴィランを蹴散らしながら戦場の中心へと一気に躍り出る。
危険が伴いつつも一気に変身するためのものだろう。
「それにしてもこれはいったいどういう……?」
状況をいまだに理解出来ていない熱太は蘭華の送った救難信号を頼りに戦場に駆けつけたようだが、このような大規模作戦が行われているとは思ってもいなかったらしい。
「熱太、変身できていない腑抜け共を守りつつ戦うぞ」
「あ、ああ……」
それぞれの得意とする特注武器を構えて激戦区へと二人は身を投じる。
それを見た翔香も自慢の俊足を生かして戦場を撹乱した。
「ホリィちゃん……貴方の熱太以上に向こう見ずな覚悟が今回は正解だったようね。私はただ分かった振りをしてたお節介おばさんだったみたい」
「な、何言ってるんですか! まあ、正直あれのおかげで火がついちゃった節もありますが……」
戦場で日常を思い出した二人はそれを取り戻すためにここにいる全てのヴィランを倒さなければと覚悟を新たに決める。
「私は貴方の補助に回る。変身出来るまでは存分に使ってちょうだい!」
「ありがとうございます!」
その瞬間、天井から爆発したような轟音が響いて灰色の煙が舞い上がる。
今度は何だとモニター越しに猫背の男が食い入るように見つめた。
ヒーローたちがこれ以上の恐怖はやめてくれと腰を抜かした。ホリィやララクたちは驚きの後、安堵の息を漏らしてしまう。
そしてリージェは敵に囲まれていることも忘れて満面の笑みを浮かべた。
「飛彩ぉ!」
「待たせたな、リージェェェェェェェ!」
振りかざした左拳と飛び上がったリージェの蹴り込みが空中でぶつかり合う。
一際大きな波動が周りを襲い、護利隊員達や最下級のヴィランたちを地面へと這いつくばらせた。
「テメェ……よくもやってくれたなぁ! 」
「そっちから吹っかけてきたんだろ? まあいいや! 一番の障壁である君を優先しよう!」
大将戦を滞りなく行わせるために黒斗たちは露払いの如くヴィランの軍勢へと攻撃を開始する。
ホリィや変身途中のヒーローをアシストする戦い方は指揮一つで鉄壁の布陣へと成り代わった。
「勝てる! これなら勝てるぞ!」
一人の隊員に希望が宿った瞬間、それは一気に波及して勝誓の咆哮が連なっていく。
ヴィランも負けじと絶殺の展開力で応えた。
「第一部隊は前に! 第四部隊はヒーロー共の護衛のために後退!」
黒斗が現れたことで余計な思考を捨てた護利隊員たちが十二分に力を発揮し始める。
蘭華も指揮の援護に回りつつ的確な射撃でホリィや熱太たちをアシストした。
たった数人の乱入で塗り替わる勢力図に情けなく震えるヒーローたちはますます歯噛みした。
猫背の司令官の怒号が飛び交うものの、悔しさと恐怖で入り乱れるヒーローたちの心情は何の声も通さない。
混沌と化していく戦場を変えられるのは自分しかいないとますます奮起した飛彩は漲る展開力のままに紅き右脚も目覚めさせた。
「残虐ノ王!」
「その蹴りは拒絶だぁ!」
大きく弾かれた飛彩は黒い道路を転がっていき、スロースターターな自分の能力を恨んだ。
「ここは俺がやらなきゃいけねぇのによぉ……!」
「飛彩ちゃん!」
「隠雅飛彩!」
追撃に飛んでいたリージェを弾き飛ばしたのは春嶺の光弾を手に纏ったララクの鉄拳だ。
「がっ! まだそんな力が!?」
「私も飛彩ちゃんと一緒に戦う! こんなところで負けられないよ!」
「ララク……ありがとな!」
その援護が有れば飛彩の残る能力が目覚めるのも時間の問題だ。
ララク、春嶺、飛彩の新しい組み合わせの攻撃はリージェの拒絶の的を絞らせずダメージを植え付けていく。
「おいおい、ララクも銃の子も一度僕に負けたんだ。退場してくれよ!」
「させるか!」
振り上げた左拳と回転蹴りがぶつかり合い、区域を覆う天蓋が震える。
互いに一歩も引かずに培ってきた格闘術を披露していく。
威力は完璧に拮抗し、最初の場所から動かずに攻撃がぶつかり合っていった。
「前より弱くなったんじゃないかぁ! 飛彩ぉ!」
「これでも同じことが言えるかぁ?」
左脚を軸にした瞬間、深緑の鎧が一気に装着された。
目覚めしはかつてリージェを追い詰めた生命ノ奔流がさらに飛彩の展開力へ力を与える。
振り抜かれた左拳はより勢いを増してリージェの拳を弾く。さらにそのまま胸部へとめり込み、地面を転がさせた。
「命から湧き上がる力よ!」
そう左足で踏ん張れば死した大地から太い幹が蛇のように発生してリージェとの間に壁を作る。
追撃を封じる壁になったかと思えば、一瞬でリージェの周りを覆う檻になる。
「捉えたわ!」
ララクの喜びに満ちた声に春嶺も力強く頷く。
これは仕留めるチャンスだと二人の展開力が盛り上がっていく瞬間、その大樹は腐り落ちるように朽ちていった。
「こんなものは簡単に命ごと拒絶できるよ?」
踏み込んでいた二人の背後へと一瞬で移動したリージェは展開力を剣状に伸ばして二人の首を跳ね飛ばそうとする。
「テメェの相手は俺だろ!」
それを読んでいたかのような赤脚の跳躍により斬撃は天へと蹴り上げられる。
その展開力を左拳で吸収して返しの刃を放った瞬間にそれは拒絶で掻き消えてしまった。
「拒絶の素晴らしさを忘れちゃったかなぁ?」
「はっ、防戦一方のくせによく言うぜ?」
火花を散らす二つの眼光。
そこに入り乱れる黒と三色の展開領域攻撃と防御が目まぐるしく入れ替わる超絶高速戦闘は区域の中を所狭しと駆け巡っていく。
「ちっ、速いねぇ!」
「守ってばっかじゃ勝てねぇぜ?」
「言ってくれるじゃないか」
事実、この攻防においてリージェは防御の時にしか拒絶の力を発揮していない。
その罠のような気配に飛彩の攻め手も下がりやすいものになっている。
拳撃の最中、振り抜かれた拳と拳が鍔迫り合いのように波動を振りまいてヴィランや護利隊が視界を両腕で覆うほどである。
ヒーローはいまだに恐怖に怯えているが、それを切り拓くために熱太や刑が率先して戦場を守っていく。
おかげで飛彩は心置きなく戦っているのだが、わずかな陰りを見抜いたリージェは口角を上げて笑った。
「ははっ、どの攻撃を弾かれるか分からない……その恐怖はしっかりと君の威力を減らしてるよ?」
「くっ!」
自身の気づかないところにある心の揺らぎは、実感として飛彩を襲う。
「ここは邪魔が多い……ああ、認めよう! 認めるよ!」
高らかに叫ぶリージェは戦いの愉悦に浸っている。
「侵略よりも! 今は僕らの決着が優先だ!」
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