「こういう展開、昔見た特撮でもよくあったわよね」
「はっ、最終回目前で敵が味方になる、というやつだな!」
「だったら私達が勝ってビシッと決めないと!」
リージェの拒絶領域により、熱太達はフェイウォンの展開域の影響を受けなくなっている。
灼熱、氷結、疾風、三つの属性が重なり合う連携が死鎧達の軍勢へと飛び込み、剣、鞭、脚撃が道を拓くように放たれていく。
「分散すると物量でやられるわ! 皆で一点突破にしましょう!」
殿についているメイの一声で広がっていた陣形はレスキューワールドを筆頭に一直線のものになっていく。
そのヒーローの中心に降り立ったリージェをララクが守りつつ、突破の道を作り上げていった。
メイの見立て通り、死鎧も取り囲みつつも進行方向の守りを固めるように膨らんでいく。
そこをヒーローの火力で削りながら進む作戦は先頭を交代で変更することで、展開力を温存しながら少しずつつ先へ進めている。
それでも充分に飛彩とフェイウォンに存在感を示せているだろう。
故にフェイウォンは死鎧の軍勢を放つだけでなく、展開域の中にドーム状の空間を作り上げた。
「あれは……!」
「救援に気づいてるってことでしょう」
「今なら私が行ける!」
後続から飛び出した春嶺はリボルバータイプの拳銃にチャージしていた展開力を巨大なレーザーのように撃ち出す。
「苦原刑!」
「任せたまえ!」
天へ放つ二つのそれに対して、刑が透明な展開壁を発動して軌道を変形する。地を這う死鎧達が流星に手を伸ばすも照らされるのみで防御などままならない。
見事なヒーローの連携がフェイウォンの作り上げた漆黒のドームに着弾するも、光を吸収するように春嶺の攻撃は掻き消えてしまった。
「頑丈、というベクトルじゃないですね……」
前髪の奥にある瞳は険しく細められた。攻撃を弾く役目を買っていた刑も生半可な攻撃でないことを知っているだけに歯が軋むような音を鳴らす。
「だったら私の未来確定で!」
「━━そうね、もっと接近してホーリーフォーチュンの未来確定があれば破れるかも!」
目標は変わらず前進あるのみ。未来を決めるヒーローに希望という重荷がのしかかった。
真っ暗なドームの中でも、視界は晴々と鮮やかに色を伝えてくる。
これがヴィランの見る世界なのか、と飛彩が考えてしまっているのは顎に受けたアッパーの勢いが凄まじすぎて脳が揺れ、片膝をついているからだ。
「邪魔は入らないほうがいい……そうだろう?」
「ぐっ、うぐぅ……!」
数回顎が砕かれ、回復しつつも痛みの記憶は残る。
顔の鎧までは顕現させられない矜持を弱点だと言うようにフェイウォンは執拗に生身の部分を攻撃する。
「があ、ぐはぁ!?」
「頂点に君臨する私を相手に! いつまで力を温存出来るかな?」
揺らめく鎧に反撃する飛彩だが、硬さとは違う何かに攻撃が無効化されている実感があった。これは最強の鎧であり、頂点に立っている能力が発動しているのかもしれない。
「ちっ……くそが」
距離を取った飛彩だが、もはや満身創痍を何度も通り越していた。
生命ノ奔流にて回復されることが拷問に近い。
(だが、まだやれる。やつは油断し始めた……)
戦いの中、備わってきたヴィランの能力を確かめる飛彩はいつでも発動出来るように意識を集中させる。
(チャンスは一回、あいつと一緒に次元の狭間に飛び込んで相討ちしてやる!)
その狙いを隠すように一発逆転を狙ったような大技を繰り出していく。
もちろんそれで撃破できればそれに越したことはないのだが、防御や反撃において上回ってくるフェイウォンには逆転の手立てなどなかった。
「そろそろ心が折れるかな?」
「黙れ。絶対にテメェをぶっ殺す」
研ぎ澄ました殺意だけはフェイウォンに負けていない。
その気迫があるからこそ、一発逆転の手でなんとかしようと自棄になっていると裏付けられているだろう。
そして蘭華は、狙撃銃でヒーロー達の援護をしながら飛彩の考えている相討ちの作戦を見抜いていた。
見抜く、と言うよりは飛彩ならばそうしてしまうだろう、という直感だった。
「ホリィ、無茶なお願いしてもいい?」
「━━わかってますよ」
「はっ、私が一番飛彩のことわかってるって思ってたけど、ホリィも大概ね」
迫りくる鎧を牽制し、崩れたところから浄化の光をホリィが撃ち込む。
ヒーローを活かす戦い方をすれば蘭華の右に出るものはいないだろう。
そんな連携を見せているホリィもまた飛彩が無茶をしでかすことは容易に予想出来ていた。
「飛彩くんが頑張ってるならもっと頑張らないと!」
「いいね! 私も今は根性論の気分!」
白い展開力を一気に立ち昇らせたホリィが両手から波動を展開壁目掛けて放つ。
光に呑まれて行った死鎧は白く染まり、ドーム状のフェイウォンとの決戦場もペンキをかけられたように白く染まる。
「ホリィちゃん、まさか!?」
命に関わるほどの展開出力。フェイウォンと同じく装備が炎のように揺らめき始め、髪は逆立ったままだ。
未来確定の生みの親であるメイだけが気付く、一定区間の未来を確定させた一撃だ。
危険すぎる、とは思いつつも飛彩の居場所に駆け付けられる方法の中でも数少ない有効な手立てと言えよう。
「コネクト! ホーリーロード!」
ヴィランの拒絶が下地を作り、ヒーローが未来を決める。
たった一人の大切な仲間を助けにいくためだけに。
「皆さん!」
燃えるようなホリィと並走する蘭華もまた拳銃に持ちかえ、這い寄ろうとする死鎧へと銃を乱射する。
「飛彩くんのところまで走り抜けられるように未来を確定させました!」
その言葉に全員の表情が明るいものになるが、命を燃やすようなホリィにすぐさま険しい表情に変わる。
「でも、未来は移り変わってしまう! だから、決めるために皆さんのお力を!」
作り上げた一直線の道に集る死鎧達はバリケードに群がるゾンビそのもので。
見えない障壁に拳を突き立てるたびに、白く輝く道は軋むような音を上げていた。
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