【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
半袖高太郎

始祖と創造者

公開日時: 2021年4月29日(木) 00:09
文字数:2,460

 城から一足飛びで荒地に降り立ったメイは、作り上げた岩山の棺桶に向かってそう呟く。


 鎧のせいで顔の表情を誰も窺い知ることはないが、片足に重心をかけただらけた立ち方はまだまだ余力があると感じさせてくる。


「貴方こそ、ボーッと世界を眺めてただけなんじゃないの?」


 その攻撃は一度は炸裂しただろうが時を巻き戻すように岩達が浮かび上がっていく。

 未だに四肢があるフェイウォンは漆黒の瞳を見開き、長髪を逆立たせていた。


 その妙齢な外観と、高く整った鼻に大きな目は理知的な見た目でありながら好戦的な笑顔という感情を見せている。


「ははっ、やはりお前に渡した能力は面白いな!」


 全てのヴィランの源だったフェイウォンは全てのヴィランの能力を有している。

 しかし受肉した存在は、その支配から一線を引くことになるのだ。


「まあ、今のでやれてたらこっちも私が支配してたわね」


「好きなだけ吠えるがいい!」


 リージェの拒絶、ララクの恐怖、メイの創造、これらの強力な能力は現段階ではフェイウォンが使うことは出来ない。

 そのアドバンテージを生かし、メイは畳み掛けるように岩棺をドーム状の展開で覆い尽くしていく。


「念入りにやらせてもらうから!」


 瓦礫が浮かぶ空間を駆け抜けたメイは、それらを足場にして四方八方から打撃を浴びせていく。


 マントの奥にひかる鎧は軽装よりに見えるものの、悲鳴をあげそうになるのは攻撃しているメイの手甲だった。


(鎧の差は理解しているはず、ならば狙いは別か)


 悪い意味でフェイウォンは強くなりすぎた。故に敵の初撃で死ぬこともなければ、戦いの前から相手に対して策を練ることもない。



 全ては『攻撃を受けてからどうするか』だった。



 その油断を逆手にとったメイは現世で開発を進めていたヴィランの展開力を完全に封じる杭を囲むように設置している。


「これで裸同然よ」


 ただ使えばメイ自身の能力すら消えてしまうものだが、その杭とフェイウォンを結ぶように繋いだ鎖が縛っているものだけを無力に変えていく。


「手品の連続だ」


「いつまで笑ってられるかしら? ……創誕そうたん奇奇天界ききてんかい!」


 透明の展開域の中で炎が巻き起こった。そのまま間髪入れずに雷が。さらには水流と暴風による大渦が。

 災害のミキサーが岩ごと凄まじい勢いで粉砕していき、荒れ狂うその中で黒い鎧が度々浮かび上がるように翻弄されていた。


「永遠にその中にいなさい。あの世界は私が目をつけた私のもの。簡単に渡せないわ」


 メイの能力において創れないものなど存在しない。

 知覚している全てを展開内に発生させる桁外れの能力だ。

 フェイウォンが今それを扱うことが出来ないのはメイにとって大きなアドバンテージとなっているのだろう。


「これであなた自身の展開力は無効化した。足掻いても無駄だから」


 そのままメイは永遠の監獄から立ち去ろうと異次元空間への亀裂を作り上げる。

 これで飛彩達のいる現世を狙うヴィランはランクの低い雑魚ばかりになる、と。


「あの世界の発展も、ヒーローの力も、私が創り上げたもの……私が支配する世界を盗ろうなんて二度と考えないことね」


「無理を言うな」


 直後、吹き飛ばされた展開域からメイの攻撃の余波が荒野を彩る。

 視界を腕で覆ったわずかな瞬間、メイは背後を取られた感覚によって鎧の中にある背筋が粟立った。



「欲しいものを諦めろなど、到底出来るものではないぞ?」



 展開力は無効化した、それなのに封印の鎖やメイの災禍からも抜け出せたことが認めがたい事実として楔と化す。


「……それは私も同じなんだけど?」


 鎧の中で流れる冷や汗。フェイウォンは単純な膂力だけでメイの攻撃を崩壊させたのだ。

 メイがヴィランの侵攻から現世を守るために作り上げた封印杭も力技で無効化出来るのであれば、もはや束縛など無意味に等しい。


「力の差は分かっただろう? お前の全力……そのタネがなくなるまで相手してやっても構わんのだが?」


 振り向きざまの一撃をフェイウォンは最初からその場に攻撃が飛んでくると予期していた様子で受け止める。


「くっ!?」


「ヴィランらしくなってきたなぁ? 力で相手を捻じ伏せる、と」


「じゃあ付き合ってもらおうかしら!」


 これからもフェイウォンは攻撃を受けてから反撃の手立てを練るだろう。

 それが頂点に立つ者としてのプライドであり、自らを最恐のヴィランと考える所以のはずだ。


 そこを突けば確実に勝利する手立てはあるはずだ、とメイは考えたのだ。


(何度でも試せ……一撃目で相手を葬るイマジネーションを!)


 天に舞うオーロラが緑だけでなく様々な色を彩り始めた。

 黒を愛するヴィラン達には眩く視界を奪うものになるだろう。


 何もかもを味方につければ必ず勝機は訪れると、メイは握られている拳に展開力を込め始めた。


「世代交代ってやつを始めましょう」


「では縛りを課させてもらうぞ? 勝利した方が相手を支配し、敗北者は命尽きるまで相手に従う」


「!?」


 言葉に含まれた展開力を察知した時にはすでに手遅れ。

 制約の能力を行使されたことに気づいたメイは絶対に負けられない戦いになったと歯を食いしばった。


「面倒なヴィランを生んでたのね」


「便利だぞ、聞かん坊を押さえつけるにはな?」


「偶然手に入ったものなのに偉そうにしないで欲しいわ」


 拘束を振り解いたメイはすかさず次の手を打つ。

 拳を再び放つと同時にメイの周囲に大小様々な銃が発生した。


「複雑そうなものも一瞬か。それ以上見せびらかさん方が良いぞ?」


「はぁぁ!」


 右ストレートと同時に逃げ場を奪うような銃弾の雨。

 しかしフェイウォンは円を描くように両腕を回して一瞬のうちに全ての攻撃をはたき落とした。


「返して欲しくなってしまうからなぁ」


 邪悪な笑みを見せつけられたメイは鎧の奥の瞳を鋭いものとして次なる創造を発生させていく。


 フェイウォンの放った制約から逃れるために、もはや命を投げ打ってでも勝利しなければならないと美しいオーロラで異世を照らしながら。


「何でもかんでも奪えると思わないでくれる?」



 メイの創造という比類なき力をもってしても底知れぬ相手に、支配者を決する前哨戦が始まろうとしていた。

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