【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
半袖高太郎

レスキューワールド・リアライズ

公開日時: 2021年2月23日(火) 11:35
文字数:2,279

これ以上遊んでも面白くないとララクは目の前で発生した火柱を水平に切り裂いた。


 ちょうど熱太の腰あたりで振られた傘の薙ぎ払いにより、火柱は燃料を失ったかのようにして一気に霧散する。


 手応えを感じられなかったララクが展開を察知して上を見上げた瞬間、真紅の装甲に身を包んだレスキューレッドに変身した熱太が命断の刃を振り下ろしていた。


「熱い思いで世界を救う! 灼熱の魂! レスキューレッド!」


「くっ!?」


 先ほどまで傘で受け止めていた熱太の斬撃をララクはここで初めて回避した。

 あのまま鍔迫り合いを行えば、傘を失うだけでなく鎧が溶かされるという未来が見えたような気がしたからである。


 地上に降り立った熱太と火花を散らすララクの間合いは一定に保たれ、両者が構えた得物が一寸違わず相手の急所目掛けて攻撃出来るように研ぎ澄まされていた。


「……面白いわねっ。もう少し遊んであげるっ!」


「その余裕、いつまで持つかな?」


 先に仕掛けた熱太は斬撃と見せかけて異空間から取り出した武器の一つである緑に輝く銃、ゲイルサーキュレーターを取り出し、疾風弾をこれでもかと乱射した。


「ええ!? 飛び道具!?」


 傘で疾風を弾いていくララクだが、鋼鉄の傘を束ねている留め具が外れて花のように大きく開く。

 そこ目掛けて風を撃ち込んだことにより、ララクの身体が宙に浮かんだ。


「そこだ!」


 何とか傘を振り戻し、自らの視界を塞ぐような形で熱太の熱斬を防御する。

 しかし膂力でも熱太に劣らぬララクは傘を両手で掴み地面に降り立ったと同時に突進した。


「——あれ」


 その踏み込みは風を切り裂く衝撃波を作るほどだったが、熱太に直撃することもなく空気を突き飛ばしたに過ぎない。


「悪いが女でも容赦は出来ん!」


「っ!」


 側面に瞬時に移動出来たのは、翔香の愛用しているグランドブーツによる高速移動が可能にしたものだ。

 様々な兵装を用いて有利に戦いを進めるレスキューワールドらしい戦い方と言えるだろう。


 ララクの上をいくスピードの勢いを全て右足に込めて回転蹴りでララクの背中を狙った。


「奇襲なら喋らない方がいいわよ?」


 前のめりな姿勢になっていたララクはそのまま前転するようにその場で跳ね、後方に振り上げた踵で熱太の蹴りの軌道を空へと変えてしまう。


 ドレスやヒールを纏っていてもなお、熱太と同等に格闘術を披露するララクはその場で素早く回転して着地する。


「奇襲は卑怯じゃないわ。勝利という美しさのためならばどんな泥に塗れても構わないの。それが美しいことだと勝者が塗り替えることが出来るから」


「ご高説感謝するが、それに従うかどうかは別だ!」


 各種武装を外し、ブレイザーブレイバーのみで再び突貫する。

 ララクは辟易した様子で傘を再び留め直し素早く迎撃を開始する。


「飛彩は渡さん! やつは俺の生涯のライバルであり……親友だ!」


「素敵ね! 貴方達も飛彩ちゃんの友達なのね? なら一緒に連れてってあげる!」


 呆れたと思えばお人形遊びに興ずる少女のような表情の輝かせ方だ。

 仮面の奥で歯を食いしばる熱太は怒りを燃料にララクへと渾身の一撃を叩き込んでいく。


 その攻撃は全て研ぎ澄まされた集中力がみせる必殺の一撃と化している。

 だが、ララクは刃のない側面からブレイザーブレイバーを弾き飛ばしていく。


「なんのこれしきぃ!」


「あははっ! 熱いね!」


 通常形態の熱量ではララクの鎧を煤けさせることも出来ず、リージェを追い詰めたハイパーレスキューレッドの力を求めるものの未だに翔香とエレナは変身できていない。


 さらに二人の展開力が著しく低下する以上、レスキューワールドのみでの戦闘で行うには現状危険すぎるのだ。


「降参しなって。ララクはまだ展開能力さえ使ってないんだよ?」


「そんなものは戦いをやめる理由にならん!」


 底が見えないララクに対し、熱太は持てる力を全て振り絞って戦っている。

 押しつぶすようなララクの展開に対して地表を覆っていく灼熱の炎は拮抗せずどんどん鎮火させられていった。


「飛彩ちゃんと一緒に来れば別に失うものもないでしょう? 何も不自由はさせないわ?」


「俺や飛彩が消えたら、誰が世界を守る……!」


「ララクにとって世界はララクに見えるものだけ。それ以外は無いに等しいし、考える必要もないと思うなぁ」


 丁寧に答えていく割には問答は不要と告げるように傘を思い切り引いて左手で狙いを定めて刺突の構えを取るララク。

 傘の先端に展開力が渦巻き、破壊力が増していくのを視覚と肌で熱太は感じていく。


 止められない、と太刀筋が揺らいだ瞬間に後方から飛来する蛇腹剣がララクの傘を縛り上げた。


「一気に貰ってくわよ!」


「特大のご馳走だね!」


 旋風を巻き起こし、ララクと熱太の間に割り込んだ翔香は低い姿勢から蹴り上げて傘を下から思い切り蹴り飛ばした。


「あわっ!」


 特大に練られていた展開力は特別武装を容量超過で破壊させてしまうほどのエネルギーだったが、翔香とエレナのカウントが一気にゼロへと時を進めた。


「「キューカイチェンジ!」」


 疾風吹き荒ぶ大地と凍てつく氷の世界が展開として現れララクを挟み込む。


 展開から浮かび上がった装甲がララクの目の前を横切り、二人の少女へと装着されていった。


「慈愛の心で世界を救う! 麗しき魂! レスキューブルー!」


「楽しい意志で世界を救う! 元気な魂! レスキュー! イエロー!」


 変身したのも束の間、ここでエレナは一番の愛用武器であるフローズンウィップで傘ごとララクを縛り上げて身動きを取れない状態へと変貌させた。


 さらにそのまま展開力を滾らせ、ララクの足と地面を氷の像へと変貌させていく。


「レスキューワールド、本領発揮よ!」

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