【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
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ホリィの答えを

公開日時: 2021年1月21日(木) 00:03
文字数:2,061

「結局この会場に戻ってくるとはなぁ……で、こんな有象無象の金持ち相手にどうするつもりだ?」


「飛彩くんはスティージェンに勝ったんですもの。今度は私が戦う番です」


 恭しく挨拶をしてくる連中を切り抜けながら飛彩とホリィはステージへと向かっていく。

 ホリィの行く先に気づいたのか人々はにこやかな笑顔で道を開けていく。


 阻むものは誰もいないと思っていた矢先、姉妹が迎えに上がったかのように装って道を塞いだ。


「ホリィ、ダメじゃない。みすぼらしい姿を皆様にお見せしちゃ」


「お父様怒ってるよ〜。どんな風に怒られちゃうか見ものだね!」


 ウェーブがかった金髪とホリィ以上に豊満な胸を強調したドレスに男たちは息を飲む。

 対してライティーは体躯こそ小さいものの、姉たちに劣らぬ美貌を持ちショートボブに揃えた髪がよく似合っていた。

 まだまだ胸は成長途中であるものの。


「マリアージュお姉様、ライティー。そこを退いてください。やらなければならないことがありますので」


 一切視線を揺らさないホリィに二人は驚いた。

 いつもならば視線を逸らし、どこか逃げ場所を探すように辺りを見渡す捕食される動物のような弱々しさが一切感じられない。


「ホリィ、ダメよ。貴方のような出来損ないがこんな場所にきては。皆様のお目汚しよ?」


「私たちも同じレベルに見られちゃうんだからさっさと消えてよね」


 突き刺すような悪意。

 パーティーの喧騒が大きいとはいえ、確実にそれはホリィの胸を抉る。


 だが、もはや家の中で怯えていた少女はここにはいない。

 そして何よりも頼れる上に恥ずかしいところを見せられない騎士ナイトが側に控えている。


「もう一度言います。退いてください。マリアージュお姉様、ライティー」


 ヴィランに向けるかのような力のこもった視線を向けられた二人は、草食動物の反乱にあったかのような気持ちで後ずさる。


 しかし、それでも下に見ていたという今までの過去がマリアージュたちをどうしても引き下がらせなかった。


 ここでホリィに道を譲れば敗北を認めたも同然だという気持ちからか、後退りしたことをかき消すかのように姉妹は一気にホリィにへと詰め寄ってくる。


それを一歩後ろで見ていた飛彩は、何気無しに思ったことをそのまま口から呟いた。



「ホリィ、お前が姉妹きょうだいの中で一番綺麗なんだな」



 驚きに頬を染めるホリィと美しい美貌が引きつったように凍りつくマリアージュとライティー。

 聞き間違いかと思ったのか、飛彩が呟いたことをもう一度問いただした。


「ななななな、何かの間違いでは?」


「間違いなわけあるかよ。性根とかそれ以前にお前らの顔がタイプじゃねぇ」


 常人から見ればマリアージュもライティーも整った顔立ちをしており、モデルなどでは太刀打ち出来ない美貌を誇っている。

 そんな相手を飛彩は頭を掻きながら一刀両断したのだ。

 通信機越しに蘭華とカクリも文句を言っているが、少女たちの怒りはよく飛彩に馬耳東風される。


「あ、貴方はどこの企業の方でしょうか……?」


「ちょっとアンタ! 誰にそんな口きいてるの? パパに頼んで会社ごと潰してあげるんだから!」


 このような脅しに屈することもなく飛彩は首を傾げながらさらなる毒を吐き続ける。


「ホリィ、なんでこんなブスどもにビビってるんだ? お前の方が可愛いんだからしっかりしろよ」


「「は……はぁ!?」」


 苦笑いを浮かべたくなるホリィだったが、想い人が自分を一番美しいと褒められることだけは悪い気はしないようだ。

 おかげで飛彩の言う通り何故こんなことで恐れを抱いていたのだろうと笑えてくるほどのようで。


「あー、悪い。家族はあんまり馬鹿にしちゃいけねぇよな。クラスの連中みたいな感じで声かけちまった。悪いなホリィの姉ちゃんたち。忘れてくれ」


 一方的に暴言を吐いた飛彩に対し、マリアージュもライティーも身体に雷が落ちたような衝撃に包まれている。


 今までマリアージュもライティーも容姿を蔑まれることはなかったのだ。

 飛彩も貶す言葉よりも、ホリィ以下だなどと言われたことの衝撃が大きいのか二人とも全く動かなくなってしまっている。


「ヤベェ、また蘭華に怒られちまうな……女心が分からないだなんだって」


「いや、今回は蘭華ちゃんたちも喜んでると思いますよ?」


 ホリィを褒めたことには怒りを覚えつつも、恋敵が増えなかったことに喜ぶと蘭華やカクリをよそに、ホリィは再び壇上を目指す。

 姉妹は言わば第一関門のようなものだったのだが、飛彩の言葉でほぼ自動ドアも同然である。


「そーいや、親父に文句言うなら裏で言えば良いんじゃないか? 姉貴どもにも絡まれずに済んだろ?」


「聴衆がいることが大事なんです。お父様だけに話しても取り合ってもらえないでしょうし」


 まずは話を流されない土壌を作ろうというホリィの作戦が功を奏し、カエザールの演説の前にヒーローであり、センテイア家の次女であるホリィが何かを話すぞと人々の注目が集まっていく。


「お父様も飛び出してきます……飛彩くん、ここまでエスコートありがとう」


「お前の選ぶ答え、聞かせてもらうぜ?」



「ええ。一番の特等席で聞いててくださいね」

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