【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
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第3部 2章 〜スニーキング・ヘヴン〜

戦線離脱

公開日時: 2020年12月31日(木) 15:36
文字数:2,331

 数日後、ホリィと飛彩は再び顔を合わせることもなく別々に日々を過ごしていく。


 あの日のお互いのデートがまるで夢だったかのような距離感になってしまい、飛彩も自分から声をかけることが出来なくなってしまいた。


 ホリィが学校へも来ないことの方が多くなり、ヒーローや財閥の娘というものは多忙を極めると飛彩は静かに考える。


 そんな何気ない日常に風雲急を告げるかの如く、区域奪還作戦の内容に進捗があったとして護利隊側の主要な面々に集合の号令がかけられていた。





「……それでそれで、おんぶして部屋まで送ってもらっちゃったんだぁ〜!」


「へぇ〜、蘭華ちゃんやるじゃない」


「ふざけんなぁ! カクリのいない間に何してくれてんですかぁ!」


浮星ふわぼしさん、キャラ壊れてるわよ」


 作戦の説明を聞くためにブリーフィングルームに集まっていた蘭華、メイ、カクリ、春嶺の四人は遅れると連絡があった黒斗と飛彩が来るまでガールズトークに花を咲かせていた。


「カクリが検査で忙しい時に乳繰り合って……もうほんとに許しません!」


 自慢を一方的に続ける蘭華だが、飛彩とホリィがこっそりデートしていた事実を知れば、幸福の絶頂から一気に崩れ落ちるだろう。


「ま、一歩リードってやつ? いや、百歩くらいリードしちゃったかナ!」


 勝ち誇る蘭華だが、リード具合でいえばホリィの方が圧倒的に上の状況になっている。


「ぐぬぬぬぬ……」

 

 近未来的なモニターとデスクだけという殺風景な部屋にも関わらず、女子たちの可愛らしい雰囲気で華々しく感じられてしまう。


 中でも勝ち誇った様子の蘭華はカモフラージュのために支給されたヒーロー本部の制服に身を包み、楽しげに話を先導していた。


「くぅっ……カクリも! カクリも! 車で登下校じゃなかったら……」


「やめておきなさい。押し付ける胸がないなら、ね」



「蘭華さん! 言って良いことと悪いことがありますよ!」


「良いじゃない。自転車二人乗りしたんでしょ?」


 根に持つような視線を送る蘭華に対し、カクリは拳を握ってぐぬぬと声をくぐもらせる。


 メイも十分に休息が取れているようで美貌が一切欠けることもなく笑い合っていた。


「私は飛彩のこと隅々まで検査してるから二人より飛彩のこと知ってるよ?」


「メイさん……燃料投下しなくても……」


 危惧した春嶺の予感は的中し、鋭い視線をメイへと送る。


「そりゃもう裸になって検査しなくちゃいけないこともあるから……ね?」


「メイさん!?」


「こいつはマッドサイエンティストです! 全データをよこすのです!」


「あんたも何する気よ!」


 謎の対抗意識を見せてしまったメイの情報によりそれぞれの飛彩自慢は加速していく。


 最初こそ青春度が高いものばかりだったが、最終的には飴をもらったや消しゴムを拾ってくれたなどのしょうもないものになっていく。


「みんな、落ち着いてよ。隠雅飛彩が見てたらドン引きどころの騒ぎじゃないって」


 春嶺が宥めてやっとのことで白熱した議論は終結した。

 椅子に座っているにも関わらず、蘭華とカクリは息を荒くしている。


「そうね……春嶺の言う通りだわ」


「今日は護利隊側の奪還作戦の打ち合わせですもんね」


 蘭華のこととなると暴走しがちな春嶺が冷静になってしまうほど異様な空間だったのだろう。


 前髪の奥に潜む大きな瞳が怪訝な色を浮かべていると、飛彩と黒斗が騒ぎながら部屋の中へとドタドタと入ってくる。


「おい、黒斗! 作戦延期ってどういうことだよ!」


「え!?」


 話がややこしくなるくらいだったら飛彩に余計なことを語るべきでなはなかったと頭を抱えている。


 メイも知らなかった情報を伝えるために懐から取り出したタブレットの画面をすぐにプロジェクターへと接続した。


「全員集まっているな。このバカが何で騒いでるのか今から説明してやる」


「誰がバカだオイ!」


「飛彩さん、話が進まないので静かにしててください」


 いつの間にか飛彩の隣に忍び寄っていたカクリは注意するように見せかけて自分の隣へ飛彩を座らせる。


 見かねた蘭華もわざわざ席を移動して飛彩の隣へと座った。


「? 何でくっついて座ってんだ?」


「隠雅飛彩、そのままじっとしてて。話が進まないから」


「お、おぅ……」


 救援しに来てくれたとはいえ、飛彩は未だに表情が読めない春嶺に苦手意識というか人見知りを発揮していた。


 それゆえに黒斗の怒号よりも大人しくなった飛彩は、やけに擦り寄ってくる二人への疑問を心に格納して黒斗の説明を聞くために視線を飛ばす。


「さて、お前らが中心になって進んでいた侵略区域奪還作戦だが……延期になった」


 納得いかない様子の飛彩以外はヒーロー本部との折り合いがうまくいかない組織政治の事柄を想像した。


「この前の記者会見が原因ですか? やはり世論の支持は得られなかったとか……?」


「いーや、この前のはヒーローに身勝手な行動をさせないようにスポンサーたちが放った子飼いの記者たちよ。風評被害が出過ぎるような真似はしてないわ」


 純粋な疑問を浮かべるも、直接邪魔をした飛彩と蘭華はその可能性は低いと推察する。

 現に黒斗は何も言わず、本題へと移ろうとページをめくっていた。


「原因はこれだ」


 次々と表示される作戦に加わるはずだったメンバーたち。

 護利隊の面々はこのリストに表示されることはないが、一兵卒も含めて大量動員される予定だったのだ。



 そのような大掛かりな作戦が潰えた理由は、たった一人のヒーローの不加入によるものである。



「何で……ホリィが抜けてんだよ?」



 やっと声を放り出すことができた飛彩は、モニターで灰色になっているホリィの顔写真を見つめた。


 ミスタージーニアスやレスキューワールド、名だたるヒーローたちが投入されることが決まっていた本作戦に、ホーリーフォーチュンことホリィ・センテイアが撤退を表明したのである。

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