【完結】変身時間のディフェンスフォース

〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜
半袖高太郎
半袖高太郎

共闘、春嶺と刑

公開日時: 2021年5月19日(水) 00:13
文字数:2,288

 蘭華に合流や、刑やホリィの支援も考えたようだが変身前の白兵戦で春嶺に並ぶものは飛彩くらいだ。


 とはいえ変身後の能力はホリィ達の方が高いことを加味すれば、やはり他の面々が変身出来る時間を稼ぐしかないと再びユリラに向かって走り出す。


「蘭華、ユリアとかいうヴィランの位置を送って」


「春み——」


「誰かが、やるしかないの」


 その覚悟の言葉で停滞していた戦線が動き出す。

 熱太達は亀裂の破壊に向かい、飛彩も左腕、右足、左足の力を総動員する。


 通信を仲間同士でオープンにしたままの状況は弱音も高揚感も全て波及させる。


 常ならば冷静な刑も闘志に当てられたようだった。


「ホリィちゃん、今なら熱太くん達に合流できるはずだ」


「刑、さん?」


 離れた住居の屋根からスコープでユリラと春嶺が戦っていたところを見つめていた刑は、心の中で気持ちが昂るのを止められずにいた。


「女の子が死ぬ気で戦ってるのを放っておけないんでね……」


 半ば強引にホリィを熱太の進行ルートへと向かせ、刑はパルクールの要領でユリラへと距離を詰めていく。

 女性へのファンサービスが多かった昔を思い出した刑だが、今抱いている感情がそんな甘いものではないことは理解していた。


「熱太くんに毒されたかな」


 構えていた小銃をユリラ目掛けて連射する刑だが、春嶺がやられたことと同じように銃弾は不規則な軌道を描いて屋根へと刺さる。


「虫の方から来てくれるなんて」


 銃弾への返答は闇の波動弾だったが、屋根から路地へと飛び降りて複雑な道を駆け抜けていくことで容易に回避できた。


「春嶺くん、奴は一人では手に負えない。僕も加勢する」


「……非効率ではあるけど感謝するわ」


 今の攻防で蘭華の指示を聞かずともユリラの位置を把握した春嶺は跳弾を利用して遠隔射撃を開始する。

 背負っていたもう一丁の銃身の長い狙撃銃を使って行われる跳弾は、もはや放物ミサイルも同然だった。


「奴の意識が削がれるほどの攻撃をしていけば、指揮下におけなかった銃弾が当たるはずだ。僕が陽動を買う!」


「わかった……だから蘭華、ここは私たちに任せて隠雅飛彩のところに行って」


「でも……」


「あの男に死なれたら何もかも終わり。だから早く!」


「僕らにはお守りはいらないよ」


「……二人とも! 死んだら呪うからね!」


 再び装甲車の進路を変えた蘭華は飛彩の戦場へとトップスピードで向かい、住居も砂の城を壊すが如く突き崩しながら進んでいく。


「ははっ、面白い激励だね」


「でも負けられなくなった……ここで奴を仕留めよう」


「ああ」


 離れた位置から通信で繋がる刑と春嶺という異色のコンビが、戦場を闊歩するユリラとの一大決戦へと臨んだ。


「かくれんぼねぇ……」


 跳弾が持ち味であることは知られており、市街地戦という春嶺の土壌に乗るのは愚策だと感じたのか周囲の展開力のみ濃く染めていく。


「悪いけどフェイウォン様は蹂躙がお望みなの。ここで手駒を減らされ過ぎたら困っちゃうわ」


 髪をいじりながら話すユリラの言葉がだんだんと鮮明に聞こえたことで春嶺は見え過ぎる瞳を見開く。

 まるでおもちゃの建物を組み換えるが如く、住居区画が開かれていくではないか。


「なっ、まさか家まで……?」


「建物じゃないわ、地面まで私の指揮通りに動いてくれる」


 密集していた家屋は流されるように広げられ、ユリラを中心とした円形闘技場が完成する。

 無理やり押されたことで淵は歪なものの、路地裏は完全に封鎖されてしまった。


(隠れる隙間はまだある……でも奴の次の手はこの隙間すら埋めていくこと。想像以上に時間がなくなってきたか)


「あなた達のおかげで部隊の半数が消えて、侵攻ルートの七十五パーセントが消えた。でも世界展開を使ってる彼に一部の兵を残し、余った部隊を侵攻させればまだまだ平気」


 事実、飛彩が動けない今、城下のさらに奥にある部隊を止めることは出来ない。

 春嶺達が足止めされるということは、それだけ現世への人員増加に繋がるのだ。


「それに少数で乗り込んでくるっていうことは、貴方たちが人間の作戦の要でしょう? だったら尚更ここで潰すわ」


 見た目通りの参謀としての力量は高く、すでに蘭華の狙いを完全に看破していた。

 ヴィランとただの人間という覆せない差に苦しめられるも、盤面をひっくり返すには異世に向かった飛彩達の勝利は必須条件だ。


(悔しいけど奴の言う通り……ここで目が焼き切れても絶対に変身しないと!)


 そこで春嶺が思い出していたのはヒーローとしての能力は残りつつも、展開域を広げられないという制約。


 つまり能力自体は残っているわけで、この展開力に満ちた異世ならば自分の外側に直接能力を発動することができる、かもしれないのだ。


「苦原刑、無事か?」


「ああ。しかし出鱈目だな。奴の力は」


 連なる住居に押し出されるようにし形は外側から闘技場を眺めている。

 まだ中に入る余地はあるが、次の組み替えで押し潰される可能性を考えると下手に動くことはできない。


「しかし何らかの制約があるに違いない。私たちを指揮出来てないし……交互に攻撃、休む間はリロードと変身に集中」


「わかった。現世に援軍が送られる前に変身するぞ」


 そう何度か分からない誓いを立てた二人だったが、彼我の差は抗い難い。

 ユリラが手を払うだけで住居は薙ぎ倒れるように掃けていき、隠れていた刑と春嶺の姿を一直線に晒す。


「なっ!?」


「いきなりね……」


「ほらね。隠れたつもりになっても無駄なのよ」


 考えていた作戦を無効化されて隠れても無駄、そう分かった瞬間に二人は通信することもなく自身の役割を全うする。


 あえて特攻する刑、再び身を隠す春嶺という流れにユリラも攻撃の的に僅かな逡巡を見せた。

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