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「俺たちに力を貸して欲しい。共に戦ってくれないか、この国を変えるために」
初めて会った時と同じように目の前に手が差し出される。その手を掴むには知らないことが多すぎた。この国の現状、今の情勢を覆す方法、目の前のレクスだってそうだ今日会ったばかりの人物で先ほどの行いを思い出すと本当に信用していいのかもわからない。だが――
***
春の日差しが暖かいこの頃人々は動きも活発になってくる季節。とは言ったものの、時折顔を見せる花冷えにより、ここ何日かは肌寒い日が続いていた。そんな日の午後、あと少しで太陽が夕日になるという時間、一人の少年が地図をもって通りを歩いていた。
「えっと、ここだな」
地図を見ながら歩いていた少年は『第4軍団隊舎』と書かれた建物の前で足を止めた。ここは『ワールズ帝国』の帝都。この帝国の中で最も人口が多く栄えた都市。その帝国にある帝国軍の入団試験を終えて、無事入団を果たし、本日よりこの帝国軍第4軍団に配属された。
「スゥ~…ハァ〜。失礼しま……ってあれ?」
少年は大きく深呼吸をしてからその扉を開ける。挨拶をしようと言葉を発するが、人がいないことに気が付き困惑した。
「おかしいな?今日のはずなんだけど……」
不思議に思う少年。扉の先にはかなり広い部屋があり、電気が点いていて、机や椅子などが綺麗に並べられている。そんな光景が目に飛び込んで来た。そのように一見して優麗だと思えるような内装とは裏腹に、この部屋に人の気配はない。
(まさか日時を間違えた? 確かにこんな時間、変だなとは思ったけど……。いやでも、電気はついてるし)
などと思い、出直そうかと考えていると、
「おや? 君か今日配属になった新人は?」
隊舎の奥のほうから男の声が聞こえた。
(良かった、人がいた! 配属された新人とか言ってたしきっと軍の関係者だ)
少年は胸をなでおろす、日時は間違っていたわけではなっかた。そして挨拶をする。
「はい、本日より第4軍団に配属となりましたラスター・リアハイドと申します!」
ラスターと名乗った少年。年齢は16歳、身長は170センチほどで、まだあどけなさが残る優しそうな顔つき、そして明るい茶色の髪の毛をしている。
すると、奥から男性が出てくる。先ほどの声が男の声であったため、この人で間違いないとラスターは思った。そして奥から出て来た男はこう返した。
「俺は副団長兼団長のレクス・オルグイユだ。すまなかったな、奥のほうで書類の整理をしていてはじめは気づかなかった。これからよろしく頼む」
そう言って握手をするために手を差し出すレクス。年齢は20代後半。ラスター以上に長身の男で青い髪の色をしている。凛々しい表情と立ち振舞い。そして差し出された右の手首にはとても傷がついた金属製のブレスレットをしている。
(レクス団長か、それにしても団長が空席なのかな?副団長兼団長って言ってたし。それにほかの団員たちはどこにいるんだろう?)
便宜上、レクス団長と呼ぶようにしたラスター。今日1日で何度不思議に思うのかというほど疑問はつきない。
ただ、団長が副団長を兼任しているのならば、レクスは団長兼副団長と名乗るはずだと勝手に推理し納得した。
「はい! こちらこそよろしくお願いします」
しかし、他の団員たちはどこに居るのか。という疑問を残しながらラスターは握手を交わす。
レクスもその件に関して、説明をしなければならないと思っていたらしく、こう説明した。
「ああ、他の団員たちは任務中なんでな、知っての通り第4は人員が多く、統制をとりやすくするために少人数の班に分かれて活動している」
「なるほど、もともとの頭数が少ないから」
「そういうことだ。この1班は特に少なくてな。今年入団したものと、俺を合わせて全員で7人しかいない。今隊舎にいたのは俺ともう一人だけだ。まあ、だからといって不備は全くないがな」
ラスターもはじめは少ないと思っていたが、何もこの班だけで帝都を守護するわけではない、他の班もいる。それだけではなくこの帝都には全部で10ある軍団の全てが常駐している。その事を考えると、1つ穴があったとしても埋め合わせてすることは簡単であると思った。
「それと、今から任務に向かうところだ、ちょうどいい君も来い」
「はい、わかりました」
ラスターは承諾する。断る理由も意味もない、早く軍団の仕事内容を覚えるという点においても初日から団長直々に指導してもらえるというのは運がいいと思った。
「では、行こうか」
そう言ってラスターたちは任務を行うため移動を始めた。
To be continued…
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