この世界に住まうすべての人間に基本的には一人に一つ特殊な能力が備わっている。
何故、このような能力を人間たちが持っているのか? 一体、いつからこのような能力を持ち始めたのか? それは現在でも解明されていない。
だが、過去の文献を遡って調べてみると、少なくとも千年以上前にはその存在が確認できる。それはつまり、帝国が建国される前から当時の人々はその特殊能力を持ち合わせていたということだ。
原初のころ、このような呼ばれかたではなかったらしく、別の呼び名で呼ばれていた。しかし、時代の流れと共に言葉が淘汰され、新しい言葉に変わっていくように呼び名も変わった。
人がそれぞれ異なった能力を持つことが、常となった時代。
故に、《 異常 》。異常な能力、転じて―――
《異常力》と。
この《異常力》には、いくつかの特徴がある。
1つ目。《異常力》には制約、代償、デメリット等、何かしらのマイナス面がある。
何故こんなものがあるのかも解明されていない。人は、世の中そんなうまい話はないということだろうか? などと言っているが、確かなことは不明である。
だが、中には一切のマイナス面を持たない《異常力》を持つ者もいる。しかし、これは極稀な例であり、大抵の人間に必ずと言っていいほど、デメリットがある。
デメリットがある者と無い者、その違い、今となっては知る由もない。
2つ目。《異常力》には個別の名前がある。レクスの『築き生く世界』というのは、レクスの《異常力》の名前である。
個人で名前が違う。この世に同じ人は一人としていないかの如く、差別化されている。それは《異常力》が発現したときに本能的、直感的に認知出来る。
例えば、同じ物を動かす能力だったとしても、レクスのように容量は少ないが何でも動かせる者。ある一つの物しか動かせないが容量が多く、一芸に特化した者もいる。
他にも、同じ『水を操る』能力だったとしても、自分の体内の水を使う者や、周りの水蒸気を凝縮してそれを操る者、そこにある液体そのものを操る者など、似た能力であっても、過程がことなるものもある。
3つ目、《異常力》を発動した際に、エネルギーが同時に発せられる。
これを《異気》と言う。
《異気》も個人によって異なり、その発動した《異常力》の規模によって大きさ、つまりエネルギー量が大きくなる。
戦闘になると《異気》の大きさによってある程度の実力が分かり、それに合わせた対応、戦略を練るなどのことができる。
そして最後に、《異常力》は成長する。
《異常力》が初めて発現するのは、個人差があるが、大抵16歳までには発現する。帝国軍の公募の入団条件が16歳以上なのもこれが理由である。(一部特例もある。例えば、16歳までに《異常力》が発現した場合など)。
話が逸れたが、発現した当初の能力と晩年の能力とでは、効果が大きく異なる。練度がということもあるが、日々使うことによって、デメリットが小さくなってきたり、容量が増えたりもする。
中には、数ヶ月で見間違えるほど成長する《異常力》もある。
だが、能力の性質自体は変わらない。水を操る能力なら、出せる水の量が多くなるといったように、水を何かに変えたり等、大幅な変化は望めない。そのままである。
総じて、この《異常力》。日々研究中で、この大陸、そしてこの世界でも非常に謎の多い存在のひとつである。
この能力が何なのか、今のこの時代に知るものはほとんどいない。
全てが明かされる時が来るのか、それはまだ誰にも分からない。
To be continued…
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