幻影回忌 ーTrilogy of GHOSTー【ゴーストサーガ】

観劇者への挑戦状付、変格ホラーミステリ三部作。
至堂文斗
至堂文斗

31.繋がる線

公開日時: 2021年10月1日(金) 20:35
文字数:977

「行っちゃいました、ね」

「……みたいだな」


 まだ聞きたいことはあったが、時間切れというなら仕方ない。

 また一たび会えたことに、感謝するとしよう。


「みんな教会で殺された、か」

「……マコちゃんは、ミコちゃんの方が教会で殺されたから、何かがあると思って部屋を抜け出したんですね」

「多分な。そしてそれは正しいんだと思う」


 そう。きっと全ては教会を起点にしている。

 あの場所こそが元凶なのだ。


「教会に行ってみよう。そこが犯行現場だって言うんなら、きっと何かがあるはずなんだから」


 無言で頷くシグレの肩を、ポンと叩いて。

 俺たちはまた、教会への道を上っていく。

 顔を上げれば見えるのは、教会の屋根。チラリと見える女神像の顔。

 外壁はかなりの部分が崩落して、あの女神像もこの位置から眺められるようになっているのだ。

 自らの研究を誇示するかのように作られた、関節人形の女神像。

 それでも何故かあの女神像には、人知を超えた何かに射すくめられているような、奇妙な気持ちにもなってしまう。

 あの教会の中で、マコちゃんたちとマキバさんが殺された。

 何故三人は殺され、そしてあんな場所で見つかったのだろうか。

 誰が犯人足り得るんだろうか。

 ふと、足元を見やる。

 そこにもまた、薄らと血痕が散らばっていた。


 ――きっと、手掛かりは十分にある。


 幾つもの情報が点となり、それが結ばれていく。黒影館でも経験した感覚だ。

 だけど、どこかもっと深いところで。

 俺はこの感覚を知っているような気さえしたのだが。


「……血痕」


 線が、一本に繋がった。


「……はは……ははは」

「レ、レイジさん……!?」


 突然笑い出した俺を心配して、シグレが声をかけてくる。

 まあ当然の反応だ。こんな状況でいきなり笑ったら、ついに気が狂ったかと思われても仕方がない。

 でも、俺が辿り着いた答えは本当に、笑うしかないほどとんでもない真相だった。

 常識では及びもつかない、霊空間の奇蹟、いや悲劇なのだった……。


「は、犯人が分かったんですか……!?」

「ああ。とんでもない答えでも、そうに違いない」

「だ、誰なんです? みんなを殺した犯人って」


 シグレの問いに、俺は教会へ視線を移す。

 霊空間に支配された鏡ヶ原。その一帯を見下ろす女神像が、視線の先にいた。


「……信じられないかもしれないけれど、一人だけいる」


 そして、きっとそいつも。


「数奇な運命に縛られた魂魄の一つ……なんだろうな」

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