「行っちゃいました、ね」
「……みたいだな」
まだ聞きたいことはあったが、時間切れというなら仕方ない。
また一たび会えたことに、感謝するとしよう。
「みんな教会で殺された、か」
「……マコちゃんは、ミコちゃんの方が教会で殺されたから、何かがあると思って部屋を抜け出したんですね」
「多分な。そしてそれは正しいんだと思う」
そう。きっと全ては教会を起点にしている。
あの場所こそが元凶なのだ。
「教会に行ってみよう。そこが犯行現場だって言うんなら、きっと何かがあるはずなんだから」
無言で頷くシグレの肩を、ポンと叩いて。
俺たちはまた、教会への道を上っていく。
顔を上げれば見えるのは、教会の屋根。チラリと見える女神像の顔。
外壁はかなりの部分が崩落して、あの女神像もこの位置から眺められるようになっているのだ。
自らの研究を誇示するかのように作られた、関節人形の女神像。
それでも何故かあの女神像には、人知を超えた何かに射すくめられているような、奇妙な気持ちにもなってしまう。
あの教会の中で、マコちゃんたちとマキバさんが殺された。
何故三人は殺され、そしてあんな場所で見つかったのだろうか。
誰が犯人足り得るんだろうか。
ふと、足元を見やる。
そこにもまた、薄らと血痕が散らばっていた。
――きっと、手掛かりは十分にある。
幾つもの情報が点となり、それが結ばれていく。黒影館でも経験した感覚だ。
だけど、どこかもっと深いところで。
俺はこの感覚を知っているような気さえしたのだが。
「……血痕」
線が、一本に繋がった。
「……はは……ははは」
「レ、レイジさん……!?」
突然笑い出した俺を心配して、シグレが声をかけてくる。
まあ当然の反応だ。こんな状況でいきなり笑ったら、ついに気が狂ったかと思われても仕方がない。
でも、俺が辿り着いた答えは本当に、笑うしかないほどとんでもない真相だった。
常識では及びもつかない、霊空間の奇蹟、いや悲劇なのだった……。
「は、犯人が分かったんですか……!?」
「ああ。とんでもない答えでも、そうに違いない」
「だ、誰なんです? みんなを殺した犯人って」
シグレの問いに、俺は教会へ視線を移す。
霊空間に支配された鏡ヶ原。その一帯を見下ろす女神像が、視線の先にいた。
「……信じられないかもしれないけれど、一人だけいる」
そして、きっとそいつも。
「数奇な運命に縛られた魂魄の一つ……なんだろうな」
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